昨日、8月28日に安倍総理が辞任の意向を表明しました。Twitter上ではハッシュタグ「#安倍やめた」がトレンドに。
憲政史上最長記録を更新した安倍政権は、突如として終焉を迎えることになりました。
この機会に辞任への経緯をさっと解説し、加えて安倍政権の総括と評価をしたいと思います。今後、日本がどのようになっていくのか。拙いながら予測したいと思います。
安倍総理辞任の経緯
辞任の経緯については、報道の方が詳しいでしょう。ざっと要点にだけ、触れておきたいと思います。
今年のコロナ禍と同時に、安倍総理の迷走が始まったように思えます。中国に向けて春節のメッセージで、歓迎の意を表明しました。水際作戦にも、なかなか移行しませんでした。
加えてコロナ禍第二波が危惧されるなか、GoToキャンペーンを強行したりと迷走が目立ちました。
去年の暮れ、就職氷河期世代支援プログラムの時点から、やる気があまりなかったのではないか? モチベーションが低かったのでは? と筆者は感じます。
今までポンポンと打ち出していたスローガン――一億総活躍や働き方改革――が、急にトーンダウン、スケールダウンしたからです。
それはさておき。
コロナ禍に伴い政権支持率は、低迷し始めました。支持率30%を割り込んだのは第二次安倍政権以降、初めてではないでしょうか。
報道によれば潰瘍性大腸炎の再発、持病の悪化が辞意表明の大きな理由だとのこと。しかしコロナ禍は火中の栗。次は誰が火に手を突っ込むのか、気になるところです。
安倍総理の任期中の政策と評価
第二次安倍政権は、2012年12月26日から始まりました。人によっては戦後最悪の内閣、と評価する向きもあります。
政策などについて、総括しておきたいと思います。
経済政策
まずは経済政策。安倍政権の政策の中で、有識者などからはもっとも評価の高い分野でした。しかし分析してみると2010年から続く民間の自律回復と、海外経済の好調に引っ張られた形です。
安倍政権が実施した政策で、明確に景気拡大に寄与した政策はありません。逆に景気拡大を妨げた政策はあります。
アベノミクスの評価と迷走
アベノミクスは安倍政権の、最大の経済政策です。
- 第一の矢 大胆な金融政策
- 第二の矢 機動的な財政政策
- 第三の矢 民間投資を喚起する成長戦略
2013年当初、上記3本を柱としたアベノミクスが発表されます。しかし多くの有識者が評価するとおり、第二の矢は尻すぼみに終わりました。
異次元の金融緩和と、規制緩和や構造改革がアベノミクスとして実施されました。
つまり「消極財政(緊縮財政)+構造改革」という、従来型、新自由主義型の経済政策です。故にアベノミクスは、実際に何が失業率低下や景気拡大に寄与したのかを明言する有識者がいません。
失業率低下、景気拡大は自律回復と海外経済に引っ張られたおかげであり、アベノミクスの成果ではなかったと筆者は分析しています。
アベノミクスの総括について、詳しくは以下の記事をどうぞ。
働き方改革
働き方改革は働き方を改めることで、仕事の生産性を上げることを目的としました。しかし紆余曲折の後、長時間労働是正に目的がすり替わった印象もあります。
働き方改革のもっぱらの評価は、残業規制がどのような影響かをもたらしたかで語られます。性急だったのではないか、との意見もあります。
詳しくは以下の記事をどうぞ。
二度にわたる消費増税
安倍政権の経済政策の中で、もっとも最悪だったのが消費増税です。一度目は2014年4月に、二度目は2019年10月に実施されました。
消費増税のGDPへのダメージは、リーマンショック級です。日本経済は安倍政権下で、二度にわたるセルフ経済制裁を実行しました。
驚くことなかれ。二度も消費増税を実施した安倍政権を、日本国民はコロナ禍が始まるまで支持し続けています。
内閣支持率推移グラフ|世論調査|報道ステーション|テレビ朝日によれば、去年12月までは過半数近い支持を得ていました。
消費増税の影響については、以下の記事でどうぞ。
安倍政権の経済政策は全般的に、消極財政(緊縮財政)+構造改革や規制緩和です。したがって景気拡大し続けた理由は、海外などの外的要因に求められます。
消費増税さえなければ、日本はもっと景気拡大していたでしょう。
「安倍総理でなくても、この期間は景気拡大した」が、筆者が分析から導き出した評価です。
外交政策
安倍総理は「外交の安倍」と呼ばれていました。では外交で、大きな成果は上がったのでしょうか。
結論から言えば、外交成果はほとんどありません。むしろ後退してしまった案件すらあります。
北朝鮮の拉致問題は、1mmたりとも前進していません。かけ声だけ挙げて、放置していたと言われてもしょうがない状態です。
北方領土問題は明確に後退しました。北方領土におけるロシアの実質支配を、強める結果にしかなりませんでした。
イラン外交でもトランプからはしごを外され、ハメネイ師からダメ出しを食らいました。
安倍外交の本質とは、対米従属と戦後レジームの強化でした。北朝鮮問題にしても、アメリカに頼った虎の威を借る狐状態でした。
当人であるアメリカは北朝鮮と、シャンシャンと手打ちです。
戦後レジーム(戦後体制)とは、戦勝国による世界秩序そのものです。日本にとっての戦後レジームの脱却とは、すなわち対米従属からの脱却に他なりません。
しかし安倍政権はむしろ、対米従属を強化しました。戦後レジームの強化です。
詳しくは以下の記事でどうぞ。
憲法改正や保守政策
安倍総理は保守政治家と言われています。日本の保守界隈は安倍総理に対して、強い期待を抱いていました。
「安倍総理は憲法改正を成し遂げようとしている!」
「安倍総理は保守だ! ただ現実路線として、今はこうするしかないんだ!」
「安倍総理は財務省と戦っている!」
憲法改正はかけ声だけで、1mmも前進しませんでした。憲法改正議論すら、盛り上がっていたとは言いがたい。
加えて経済政策は新自由主義的で、保守が本来守るべきものである共同体を破壊していきました。
農協改革などは、その最たるものの一つです。
安倍政権において実行された保守的な政策を、筆者は寡聞にして知りません。エセ保守だったのではないか? との、疑義の声も上がっています。
総体的な安倍政権の評価は?
安倍政権の特徴として、国民の支持率が常に50%前後あったことが挙げられます。モリカケ問題や公文書改ざんなど、一時的なスキャンダルで下がってもすぐに回復しました。
通常なら政権が吹っ飛ぶほどのスキャンダルが、一時的なダメージにしかならなかった。この事実は、スキャンダル以上に国民を引きつける何かがあったことを意味します。
第一に新自由主義的な経済政策です。国民は本質的に、新自由主義を支持しています。20年以上も新自由主義的な政策が続いているのが、その証拠です。
第二に日本の凋落という現実です。凋落や衰退は、誰しも見たくはありません。次々とスローガンやかけ声を発表する安倍政権は、何かをしている気にさせてくれました。
国民の現実否認、現実逃避のお手伝いを政権がしてくれました。
この二つのポイントが、国民世論が安倍施政権を支持した理由だと思います。
安倍政権はこうした、国民の潜在的な願望や需要を読み取ることに長けていました。
安倍総理の辞任は何をもたらすか
ここからは安倍総理の辞任が、日本に何をもたらすのかについて考えてみます。
そのためにはまず、2010年代の日本がどのようなものだったのか? 時代背景を読み解く必要があります。
2010年代の日本は中国にGDPを追い抜かれ、一人あたりのGDPではシンガポールに抜き去られました。世界第二位の経済大国ニッポンは、どこにも存在しなくなりました。
戦後から日本の精神構造を支えてきたのは、経済的繁栄です。「戦争で負けても、経済では勝ってるんだぜ!」というわけ。
しかし1991年のバブル崩壊で陰りが差し、2000年代は戸惑い、2010年代には現実を突きつけられました。
突きつけられた現実に耐えきれず、現実否認・現実逃避をしたのが2010年代でしょう。
安倍政権が支持され続けたのは、現実を否認して「強い日本!」という妄想を肯定してくれたからです。構造的には日本すごい番組、ホルホル番組と一緒です。
では安倍総理が辞任したから、日本人は現実を直視できるのでしょうか? そんなわけはありません。むしろ安倍総理の辞任によって、さらなる現実否認が加速するのではないか? と筆者は感じています。
このねじれた構造を理解したい人は、佐藤建志氏の著書がおすすめです。
反安倍は安倍総理を元凶としてきたが……
ここからは反安倍、安倍支持者に分けて考えてみます。
反安倍勢力は日本が悪くなるのを、安倍政権が元凶だとしてきました。なかには安倍政権が独裁的で、だから民主主義を取り戻さねば! という、妄想めいたものまでありました。
安倍政権を元凶としたのが、すでに現実否認です。なぜなら安倍政権や自民党の政治家を、投票で選んでいるのは国民だからです。
したがって現在の日本が悪くなっているのは、明らかに国民が”それ”を支持しているからです。
よって安倍総理が辞任しても、反安倍勢力が考えるような明るい未来は開けません。むしろ安倍総理の辞任で、さらなる最悪の扉を開いたのかもしれません。
シェイクスピアは言いました。「これが最悪だ」などと言えるうちは、まだ最悪ではない。安倍総理は確かに、戦後最悪の総理だったかもしれない。ならばそれは、まだ最悪ではないのです。
安倍支持者は支持するべき総理を失った
安倍信者……もとい安倍支持者はこれからどうするのでしょう。支持者の人たちは「安倍総理の代わりはいない!」と言っていました。ならば安倍総理の辞任は、彼らにとって絶望のはずです。
なにせ、代わりがいないのですから。
と考えるのが常識的ですが、さにあらず。なぜなら安倍支持者は、現実否認極まった人たちである可能性が高いのです。
現実否認・現実逃避のコツは「都合の悪いことはスルーする、忘れる、翻す」です。
したがって「安倍総理の代わりはいない! などと言ったことはない!」ことになるはず。
現実を直視できなければ、物事が良い方向に進むこともありません。安倍支持者から考察しても、これからさらなる最悪が訪れるのではないか? と、筆者は考えます。
なお安倍支持者は去年まで、50%近くいました。この事実も、忘れてはいけないでしょう。
まとめと歴代総理の平均在任期間
長期政権後は、比較的短期政権が続きやすい傾向にあります。安倍政権の後はコロナ禍で、火中の栗を拾うようなものです。さらにその傾向は、強くなると思われます。
では短期政権とは、どれくらいの在任期間でしょうか。短期政権を知るためには、歴代内閣の平均在任期間を知る必要があります。……しかし、ググってもどこにもありません。
しょうがないので、自分でまとめました。
歴代総理の在任期間と、平均在任期間-Googleスプレッドシート
戦前も含めて、歴代の平均在任期間(第四次安倍内閣を除く)を算出しました。総理一人あたりの平均在任期間は、775日です。
したがって2年未満なら、短期政権と言って良いでしょう。
ポスト安倍にだれが浮上するのか。今後、どのようになっていくのか。予想は予想でしかありませんが、少なくとも楽観的な予想は許されない状況です。
安倍総理の辞意表明に伴い、総括をしました。何かの参考になれば幸いです。
>では安倍総理が辞任したから、日本人は現実を直視できるのでしょうか? そんなわけはありません。むしろ安倍総理の辞任によって、さらなる現実否認が加速するのではないか? と筆者は感じています。
その意見は至極正しいと言えます。残念ながら。自分から言わせれば、8年近く続いた第二次安倍政権は、国内経済・国民生活・対外的立場・社会構造等あらゆる方面にわたって大ダメージを与え、例えれば、日本を”焼野原”状態にさせた最低最悪のクズ政権です。
と同時にそれよりも大問題なのは、思考停止と現実逃避を加速させてこんなクズ政権を8年間も野放しにしてきた、日本の有権者、特に政権支持者達の目覆うばかりの知的・精神的劣化。おまけに、こうした自分たちの愚かさについては1mmたりとも自覚していない。自覚がなければ、今後、ろくでもない第二第三の”安倍政権状態”が出てきても何の不思議もない。
そう考えると、日本国民というのは、自滅の道をひたすら突っ走っているにもかかわらず。そのことに全く気付かないし気づこうともしない愚民の群れというほかはありません。こんなどうしようもない民族はとっとと滅びてしまえ!と言いたい気分になります。
気持ちはわかるんですが、滅びられると色々困ります(笑)
はてさて、安倍政権後にはどのような展開が待ち受けているか……冷笑しながら眺めるのもまた一興でしょう。
まあ、この界隈の人ですと、安倍総理が辞任しても、ああそうですか、ついにやめるんか・・ぐらいの感想しかわいてこないでしょうね・・。
ただネット右翼のアイドル、安倍ちゃんがやめたことでネット右翼が売国政策(増税や移民拡大)に声を上げるようになればいいなあとは思いますが・・・・・・・、これもまた結局は、楽観がすぎるのかもしれませんが・・・・σ(~_~;)
ただ、安定的な長期政権による穏やかな終末期医療モードから、政局が不安定になる波の乱高下の強い時期が来そうで・・、なんともなあ・・と、その不安定モードを超えた先は、小泉ジュニア(令和の近衛文麿になるか?)とかによる安定的な安楽死モードに入るのか、もしくはモルヒネも効かない末期症状で激痛にのたうちまわるのか・・・・・。
先の見通しは暗いですが、与野党にちらばる財政拡大派勢力が唯一の希望ですかね・・。
あまり強い感想は湧いてこないですよね。
末期症状は仕方ないとしても、できればモルヒネありにしてほしいものです。苦しいのは嫌いです(笑)