5分でわかる!政府が取れるインフレ対策とインフレの種類

 もしハイパーインフレになってしまったら! そんな心配をする必要はほとんどありません。インフレは政府の対策によって、ある程度コントロールできるからです。

 インフレとは何かを簡単に解説し、その後に政府によるインフレ対策について紹介します。また、インフレの種類についてもお伝えします。

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インフレとは

 インフレとは物価が上昇し、相対的に貨幣価値が下落する現象です。インフレは需要>供給の状態から発生します。

 極端なたとえですが「昨日は100円でパンが2つ買えた。今日は100円でパンが1つしか買えなかった」という状態がインフレです。
 上記ではパンの価格が1つ50円から100円に値上がりしました。反対に、100円の価値がパン2つ分から1つ分に下がった捉えられます。
 これが貨幣価値が下がるという現象です。

 資本主義においてマイルドなインフレは健全です。デフレは不健全な状態であり、早急な解消が必要です。

インフレの種類

 インフレにはいくつか種類があります。ざっとそれぞれ紹介していきます。「悪いインフレ」「良いインフレ」の2種類に大別して考えましょう。

スタグフレーション

 スタグフレーションとは景気後退とインフレが同時に起こることです。不景気とインフレの同時発生と考えてください。

 失業率も物価も同時に上昇します。庶民にとって踏んだり蹴ったりの状態です。

 原因は主にコストプッシュインフレです。1970年代のスタグフレーションはオイルショックで引き起こされました。石油の供給が少なくなり価格が高騰し、スタグフレーションが発生しました。

 スタグフレーションは悪いインフレです。

ディスインフレ

 ディスインフレーションはインフレから抜け出した状態で、なおかつデフレでもない状態です。インフレ率が非常に低く、需要と供給が釣り合った状態を指します。
 バブル崩壊後の日本は、しばらくディスインフレだったと言われています。

 ディスインフレは良い、悪いどちらのインフレにも分類されません。

ハイパーインフレ

 ハイパーインフレには2つの定義があります。

 1つはアメリカの経済学者、フィリップ・ケーガンの定義です。月に50%のインフレがハイパーインフレと定義されました。年率にすると1万3000%です。
 ケーガンのハイパーインフレの定義が一般的です。

 2つめは国際会計基準の定義です。3年で100%のインフレがハイパーインフレと定義されました。年率になおすと平均26%です。
 国際会計基準の定義は「ハイパー」とまではいかない印象です。

 ハイパーインフレが発生すると人々は、使用する貨幣を外貨に切り替えます。外貨にはほとんどドルが使用されます。
 外貨に対して物価は安定的なことが多いです。

 ハイパーインフレはもちろん、悪いインフレです。

ディマンドプルインフレ

 ディマンドとは日本語で需要のことです。ディマンドプルインフレとは「需要が引き上げるインフレ」と訳せます。
 需要拡大で発生するインフレがディマンドプルインフレです。
 需要拡大=景気拡大を伴うため、良いインフレです。

コストプッシュインフレ

 コストプッシュインフレはコストに押し上げられるインフレです。石油など資源価格の高騰で発生します。
 スタグフレーションの主因がコストプッシュインフレです。

 コストプッシュインフレは悪いインフレです。

政府に取れるインフレ対策

 政府が取れるインフレ対策はいくつもあります。インフレ対策が必要なのは、インフレが過剰になりそうなときです。
 インフレとは需要>供給の状態です。インフレ対策とは「需要を減らす」か「供給を強化する」ことで成し遂げられます

増税や政府支出の削減

 増税や政府支出の削減による消極財政(緊縮財政)はインフレに有効です。増税することで可処分所得を減少させ、需要を減らすことができます。

 政府支出の削減も同じ効果があります。
 政府の支出=政府の消費です。誰かの消費は誰かの所得です。したがって、政府の支出を減らすと誰かの所得が減少し、需要に回せるお金が少なくなります。
 また、政府支出そのものも需要ですので、ダイレクトに需要を減少させます。

規制緩和などによる競争促進

 規制緩和は競争を促進する手段として有効です。競争が促進されると供給力が強化されます。

 規制緩和の理屈はこうです。
 たとえば、タクシー業界に自家用車も参入できるように規制緩和します。多くの人が参入し競争が激化した結果、低価格競争が引き起こされます。

 より安い値段で供給できるようになり、インフレ(物価上昇)が解消されます。

ビルトインスタビライザーの強化

 ビルトインスタビライザーとは「景気の自動調整機能」と訳されます。

 法人税は景気が悪く、赤字のときには徴税されません。景気が良くなり、黒字になると発生します。このように、税制には自動調整機能が内在しています。これをビルトインスタビライザーと呼びます。

 ビルトインスタビライザーを強化することでインフレ時にはインフレ対策に、デフレ時にはデフレ対策になります

 ビルトインスタビライザーが一切働かない税制として、消費税が有名です。消費税は自動調整機能がない欠陥税制です。

短期金利の引き上げ

 インフレ対策として日銀が行うのは短期金利の引き上げなど、金融引き締めです。短期金利を引き上げると資金需要を減らせます。資金需要とは、これから投資に向かう資金の需要です。
 投資に向けられる資金が減ることで需要が減少し、インフレを抑制できます。

インフレは資本主義の正常な状態

 インフレには良いインフレと悪いインフレがあります。良いインフレは資本主義の正常な状態です。それ以外の悪いインフレやデフレは異常な状態です。

 資本主義とは需要と供給の追いかけっこで成り立っています。大きな需要に対して企業は設備投資して供給を強化します。設備投資は投資された瞬間には需要を、設備が完成してからは供給を伸ばします。
 政府のインフラ投資も同じ働きをします。

 こうして需要を供給が追いかけ、資本主義は正常に機能します。
 逆に、デフレやスタグフレーションは異常な状態です。日本は失われた20年で、十数年以上も異常な状態に陥っていました。

 デフレを脱却し、インフレ対策が必要となる状態にしなければなりません。

まとめ

 インフレとは物価の上昇、貨幣価値の下落する現象のことです。インフレにはいくつもの種類があり、良いインフレと悪いインフレに大別されます。良いインフレは資本主義の正常な状態です。

 良いインフレも行き過ぎるはダメです。行き過ぎる前にインフレ対策が必要となります。インフレ対策には消極財政(緊縮財政)、規制緩和、ビルトインスタビライザー、金融引き締めなどがあります。

 資本主義として正常な状態であるインフレを、上手くコントロールすることが必要です。

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