朝、ニュースを眺めていました。恐れていたコロナ禍第二波が、訪れる兆しを見せています。5月2日から2ヶ月ぶりに、全国でコロナ新規感染者が200人を超えました。
コロナ渦中での財政・金融政策はジレンマに陥ります。財政政策で経済を活性化させれば、コロナも活性化します。逆に緊急事態宣言で経済を止めれば、経済が止まって人死にが出ます。
そんな深刻な状況で、労働市場も深刻さを増しています。第二の就職氷河期が訪れそうです。
まず就職氷河期とは何か
まず就職氷河期とは何かについて、解説します。
就職氷河期とは1995年から2005年に、新卒で社会に出た人たちを言います。2020年現在の年齢は30代から40代後半くらいでしょう。
1991年にバブルが崩壊し、日本経済は急成長を止めました。加えてアジア通貨危機、大手国内金融機関の破綻、産業構造の転換が発生し、さらに1998年からデフレに突入します。
この時代は急激に、新卒採用が絞られた時期でした。
数字的な一例をあげます。中高卒者の求人かつ規模500人以上の企業の求人数は、1992年が34万人に対して2004年はわずか3万人でした。製造業の求人数でも同様で、1992年が70万人に対して2004年は8万人に激減しました。
氷河期世代支援プログラムとパソナに僕ら氷河期世代が憤る本当の理由 – 高橋聡オフィシャルブログ バッカス
就職氷河期に入り、非正規雇用は増加していきます。上記のグラフで1995年を境に、非正規雇用の割合が増えていく様子がうかがえます。
非正規雇用の問題は、なかなか正規雇用に転換できないことです。非正規雇用ではスキルが身につかず、キャリアも積み重ねられません。
年齢を追うごとに非正規雇用は、どんどんと正規雇用への転換が難しくなります。
加えて労働市場では、1995年を境に正規雇用のパイが縮小しています。
労働市場の非正規化は、生涯未婚率の上昇や少子化の一因ともなっています。これらの失われた20年と呼ばれる現象や就職氷河期は、消極財政(緊縮財政)が原因でした。
コロナ禍が及ぼした労働市場への深刻な影響
2020年4月の完全失業率は2.6%となり、前月比で0.1%の増加にとどまりました。この数字だけを見れば、コロナ禍で失業者があまり増えていないような印象を受けます。
しかしその裏で、休業者が激増しています。通常、休業者は150万人から200万人ほどで推移しています。しかし4月の労働力統計で、休業者が420万人増加して597万人になりました。
日本の就業者数は約6700万人ですから、420万人の休業者増加がいかに大きなインパクトか理解できます。5月の数字は4月より増えることはあっても、減ることはありません。
そして現在、コロナ禍の第二波の兆しがあります。したがって休業者数は、さらに激増する可能性があります。
休業者に含まれない正規雇用、非正規雇用も、コロナ禍で多大な影響を受けています。非正規の50%、フリーランスの65% コロナ禍の仕事への影響、JILPT調査によれば、正規雇用の42%、非正規雇用の50%がコロナ禍で影響を受けたそうです。
収入面に限っても正規雇用で21%、非正規雇用で30%が「影響を受けた」と回答しています。
今後、休業者が従業者に転換できるかどうか? 注視しなければなりません。
第二就職氷河期が訪れる可能性は高い
第二の就職氷河期が訪れる可能性は、非常に高いと筆者は判断しています。
コロナ解雇、非正規が54% 全体で2万5千人に迫る、厚労省(共同通信)によればコロナ禍で、非正規雇用の雇い止めが2万5千人に達しました。また生活保護 4月の申請 25%増 コロナによる雇用情勢悪化が影響か | NHKニュースによれば、生活保護の申請は前年比25%増です。
労働市場だけでなく、統計的な経済予測からも情勢を参照します。
世界経済は2020年、マイナス4.9%成長と見込まれています。日本に限ればマイナス5.8%成長と見込まれており、これはリーマンショック以上の景気悪化です。
参照 新型コロナ:世界経済、2年で損失1300兆円 20年はマイナス4.9%:日本経済新聞
コロナへのワクチン開発は1年から1年半が見込まれていますが、この期間はあくまで予測にしか過ぎません。したがって世界経済に及ぼすコロナの影響は、2020年だけとは限りません。この悲観的予測は、日本にも当てはまります。
経団連は「第二の就職氷河期を作らないように、雇用を最優先」と発表しました。この発表も上述の数字の前では、全くの当てになりません。
参照 第二の就職氷河期作らず 雇用最優先、経団連が緊急提言―新型コロナ:時事ドットコム
これらの数字から理解できるとおり、新卒採用は今後、絞られる可能性が高いでしょう。すなわち第二の就職氷河期の到来です。
コロナ禍第二波がやってきた
冒頭で紹介したとおり、5月2日から2ヶ月ぶりに、コロナ新規感染者が200人台を突破しました。なお緊急事態宣言は5月6日までだったので、その基準で言えばすでに緊急事態宣言水準の状態です。
余談ですが給付金の支給の遅れ、申請のややこしい補助金など「緊急事態宣言で自粛要請中に、政府は何もしてくれなかった」との印象は強いです。
すでに緊急事態宣言水準の新規感染者ですが、同じ緊急事態宣言で自粛要請を出しても、民間が従うでしょうか。
企業や自営業、国民への支援が十分でない以上、従いたくても従えない人が続出するはずです。第二波の方がやばいかもしれない! ですね。
このような可能性もあるため、コロナ禍第二波はいよいよ深刻です。第二の就職氷河期が訪れる可能性は、非常に高いと言わざるを得ません。
就職氷河期支援はどこに行った?
2019年に政府は、就職氷河期世代支援を行う! と発表しました。20年ほど放置していて、急に方針転換です。ややびっくりしました。
2019年の時点で、就職氷河期世代支援は規模が不十分と指摘されていました。コロナ禍で第二の就職氷河期が訪れるとすれば、さらなる規模の支援が必要になるはずです。
しかし現在のところ、就職氷河期世代支援が増額されたという話は聞きません。どうも消極財政(緊縮財政)で、後手後手に回っている印象です。
第二の就職氷河期世代が生まれた後の日本
「人類は衰退しました」じゃなかった。「日本は衰退しました」と言われる日も、遠くはありません。根拠はいくつかあります。
- 外需依存の経済構造へ変化しつつある
- 経済が厳しくなればなるほど、消極財政(緊縮財政)から抜け出せなくなる
- 就職氷河期を反省しても、第二の就職氷河期を防げなかった
- したがって失われた20年を反省したとしても、失われた20年の延長を防げる保証はない
- なお失われた20年と消極財政(緊縮財政)を反省していないので、より失われた20年が延長される可能性は高い
第二の就職氷河期を生み出さないため、ないし自分たちの仕事確保のためにも「いい加減に消極財政(緊縮財政)をやめて! もっと積極財政を!」と、あなたも声を上げてください。
なお緊縮財政ではなく、消極財政という言葉を筆者が使いたい理由は以下。