現代貨幣理論(MMT)の租税貨幣論とは?驚くほどわかりやすく解説

 現代貨幣理論(MMT)は3つの理論が、根幹にあります。

  1. 信用貨幣論(信用創造)
  2. 機能的財政論
  3. 租税貨幣論

 以前に租税貨幣論とは?現代貨幣理論-MMTの簡単解説-通貨はどうして通貨なのかで、租税貨幣論の全体像を解説しました。
 本稿では租税貨幣論を解説したあとに、他の理論とのつながりを見ていきましょう。

 ……租税貨幣論って、MMTerの中でもあまり語られません。批判記事もあまり出ません(´・ω・`)
 でも結構重要な理論です。できるだけわかりやすく、書いてみます。

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租税貨幣論とは?

 租税貨幣論のもとは、貨幣国定説です。ゲオルグ・フリードリヒ・クナップという経済学者が、1905年に発表したものです。
 かの有名な、ジョン・メイナード・ケインズも支持した学説です。

 租税貨幣論とは? 「通貨はなぜ、通貨として広まったのか?」を説明する理論です。
 結論を言えば、徴税という国家権力の行使が「通貨を通貨として、定着させた」と説明するものです。

 貨幣と通貨の違いは、通貨が「法定流通貨幣」の略語であるといえば、理解しやすいでしょうか?
 国が定めた貨幣が、通貨として扱われます。

 では法律で最初に「円が通貨です」と定めただけで、人々は円を受け入れるでしょうか?
 明治政府は明治7年に新貨条例を制定しました。しかしその前に地租改正で金納(貨幣による納税)を制定しています。

 なぜ政府の徴税権が、通貨を通貨たらしめるのか。

  1. 国民は納税義務(負債)を負う=国家は徴税権を行使する
  2. 納税義務の解消には、通貨(円)で収めなければならない
  3. 上記の強制力によって、円が通貨として定着する

 これが租税貨幣論の概要です。

 現代貨幣理論(MMT)の権威であるL・ランダル・レイは、租税貨幣論を「十分条件だ」と説いてます。
 つまり「通貨を通貨たらしめる、1つの――一番説得力のある――要素が租税貨幣論だ」というわけ。

 慣習などによる「通貨への慣れ」も、租税貨幣論は否定はしません。
 実際に明治政府の新貨条例は、通貨を定着させるまでに22年の歳月がかかりました。しかし地租改正がなければ、もっとかかったのではないでしょうか?

信用創造と租税貨幣論からわかること

 信用創造とは「誰かが借金したら、預金(お金)が創造される」ということです。「誰かの負債=誰かの資産」ですから、逆にいえば「誰も負債を負わない=誰も資産がない」になります。

 では民間銀行に100万円、借りたとしましょう。

  1. 民間銀行は100万円の預金(銀行にとっての負債)と、100万円の債権が発生
  2. 借りた人は100万円の預金(借りた人の資産)と、100万円の借用書(負債)が発生

 では問題。借りた瞬間に、100万円を返済したらどうなるでしょう? 銀行も、借りた人も、負債と資産がゼロの状態に戻ります。
 つまり「(預金)通貨が消滅」したのです。あらビックリ。

 租税貨幣論では「納税義務(負債)を解消する」と述べました。
 とすれば徴税とは「通貨を消滅させる働きがある」ことが理解できます。

 通貨は「借り入れという、政府需要(国債発行)や民間の資金需要によって生まれ、徴税によって消滅する」性質が、明らかになります。

 よって機能的財政論は、信用貨幣論(信用創造)と租税貨幣論が土台構造と解釈できます。
※機能的財政論:インフレが行き過ぎれば緊縮財政、デフレでは積極財政という理論。

 つまり……通貨の量(=需要)をコントロールするのが、機能的財政論です。なぜコントロールできるか? 通貨が創出(需要増加)と消滅(需要減少)をする性質だからです。

スペンディングファーストへとつながる、租税貨幣論と信用貨幣論

 スペンディングファーストとは日本語で「(政府)支出が先」という意味です。

 租税貨幣論では「通貨を、通貨たらしめるのが税」と述べました。
 しかし一番最初のゼロの状態では、納税は不可能です。誰も通貨を持っていないのですから。

 通貨を民間に供給するためには、どうすればよいでしょう?

  1. 政府が需要し、民間に100万円の仕事を発注
  2. 統合政府(政府+日銀)内で、国債と通貨を交換する(信用創造)
  3. 通貨で100万円の支払いをする(政府支出)
  4. 100万円のうち、20万円を徴税する(通貨の消滅)
  5. 民間には、80万円の資産が残る

 上記が最も原初的であろう、単純化したモデルです。政府がまず支出し、負債を負わないと通貨が供給されず、納税も無理なのです。
 つまり「通貨が、通貨として通用しない」ことにもなります。

 上記の考察から、一般的なイメージである「税金が、政府支出の原資」は否定されることになります。つまり、スペンディングファースト(支出が先)なのです。

租税貨幣論とその他の現代貨幣理論(MMT)の関係性

 現代貨幣理論(MMT)は、かなり体系的な理論です。
 現代貨幣理論(MMT)の根本には、信用貨幣論や租税貨幣論があります。

 もっぱら、報道などで批判されるのは信用貨幣論や機能的財政論ですが……租税貨幣論も土台の1つなのです。

 租税貨幣論は「徴税という国家の主権の行使」が必要だと教えてくれます。
 EUは共通通貨のユーロにより、金融主権が制限されています。ゆえに、機能的財政論を実行できないのです。

 租税貨幣論は、現代貨幣理論(MMT)を国家と主権へ結びつける、重要な靭帯じんたいなのです。

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5 年 前

1. 信用創造についての間違い
>あなたが銀行から1000万円借りたときに、信用創造(貨幣創造)が起きたのです。なにせ、数字を書き込むだけで、1000万円が生まれたのですから。

・信用創造を預金通貨の創造というのなら、顧客が預金したときに発生します。
・民銀が手持ちのMBを貸し出したときはまだ預金通貨は増えていません。したがってその時は信用創造は起こっていないことになります。
・万年筆マネー論は間違いです。
・望月夜さんにもそのことを指摘しましたが、その時、言い訳に終始していたと理解しました。

>このとき、銀行は全口座の預金残高が1円であろうと、1000万円をあなたに貸出できます。
>大切なのは、あなたに返済能力(稼ぎ)があるかどうか? だけなのです。

・民銀は、マネタリーベース(MB)を1円も持たずして顧客に貸し出すことはできません。
・貸し出す額のMBを用意しておかなくて、顧客が預金でなく、現金を要求したときは貸し出しが実行できませんよね。
・教科書で教える信用創造機能ではそういうことはなくスムーズに現金も貸し出せます。もちろん預金としても貸し出せます。

Reply to  高橋 聡
5 年 前

>イングランド銀行や、日銀の黒田総裁(西田昌司議員の国会質疑時)ですら「預金から貸しているわけではない。貸付のときに、貨幣が創造されている」との見解ですよ?

・その通りで、民銀が貸付時に現金貨幣が創造されます。

・但し預金通貨はその時点では発行されていませんよ。
・貸付された現金貨幣を預金したとき初めて預金通貨は生まれます。
・勿論、貸付時に、預金でもいいと顧客がいう場合は、現金貨幣発行を省いてはいますが、省いているだけで、“現金貨幣貸し出し→預金通貨増加”の意味を含んでいます。つまり、預金で借り入れでいい場合でもMBの準備は欠かせないのです。

>私は理論家でも、学者でもなく「ブロガー」ですしね(笑)
 書く人であって、議論する人じゃありませんし。

・そういう考え方は、民主主義社会を破壊していく考え方じゃないですか?
・それとも見下す為に言った言葉ですか?

・尚、ブローがーであり、書くためだけであっても誤認がないかの確認は必要かと思います。

Reply to  高橋 聡
5 年 前

> ……貸付が「現金貨幣で貸し付ける」という時点で、かなりおかしなことに。世の中の大半は「預金通貨」です。
 
・昭和初期とか、昭和30年頃とか、
・現金決済が基本だった昔は巨額のお金を現金貨幣として借りる方は、わんさかおられたわけです。
・その時は信用創造はなかったと思われますか?

>どこに1億円の借金を「現金で借ります」なんて人がいますか。

・現金で貸し出すが基本なので、預金でいいといっても建前は現金で借りたお金を借りた本人はそれを手にせずすぐ銀行に預けたことにして処理してくれということです。

・ところで、教科書通りの信用創造の説明で何が問題と思われておられるのですか?
・こちらの方が現代貨幣システムでの運用ではよほど現実的ですよ。

・MMTの信用創造機能では決済に困ることも発生すると思いますよ。
・昭和初期の台湾銀行倒産は現金不足で余儀なくされたことをご存じないのですか?

Reply to  高橋 聡
5 年 前

>1つの記事にGokaiさんは5時間かけたことがあります? 書くだけで。普通でも2~3時間、かかります。
 たった3000文字なのに!

・かけたというよりそれぐらいは普通にかかる時間です。
・~~やはり見下しておられたわけですね。

Reply to  高橋 聡
5 年 前

>日銀が発行している紙幣も、たった100兆円程度。
 現金ベースで考えるほうが、どうにかしてますでしょ。

・それが旧来からの信用創造に疑義を感じているということですかね?

>ブロガーですから。

・“ブロガーだと歌舞伎のように見えを切る”意味がなぜだか分かりません。

・私のほうは、国際収支論に裏打ちされた“真打の国債無限大発行可能論”を不完全貨幣論のMMTで貶めてほしくないだけです。
・間違った理論の流布は、日本国民を不幸に導きます。
・議論しないということはそういうことです。
・“罵り合い”をもとめているわけではないのです。

・“何が本当に正しいのかに意見集約していく”ことが、民主主義の基本ではないのですか?
・そうでないのなら、各個人が勝手にやることが民主主義と言うシステムであるなら、日本社会の民主主義は崩壊するしかありませんね。

・間違いかもしれぬ理論を見切り発車で広めることに腐心するよりも、
・正しいかどうかの議論ぐらいはしておくべきでしょう。

>これを「逃げ回った!」と喧伝したいならどうぞ。

・高橋さま貴方に対し、いままではそういう敵対的なスタンスは控えてきましたが、これからは是々非々で参りたいと思います。