救済という一言は、多様な成分を含みます。
20年間放置され続けた氷河期世代の救済は現在、政府が打ち出している支援策で十分なのでしょうか? 検討してみると不十分どころか全く足りていないことがわかりました。
氷河期世代の現状を解説しつつ、本当に必要な救済措置とは何かについて考えます。
結論を言えば、救済に必要な成分は「尊厳の回復」「安定した雇用と生活」とそれらを実現する「JGP」です。
就職氷河期世代救済の現状は?
就職氷河期世代支援プログラムが発表されて1年近く経ちましたが、一向に氷河期世代が救済された! という話は聞こえてきません。
せいぜい地方公務員や国家公務員として採用された人が、数百人程度いるかどうかでしょう。
就職氷河期世代の救済は現在、どのような状況なのか解説します。
就職氷河期世代の特徴
まず氷河期世代の特徴について押さえておきましょう。
- 非正規雇用を続けている
- 年齢は40~50代が中心
- 低年収でスキルを磨く暇がない
- 尊厳を奪われ続けた
氷河期世代は1995~2005年に社会に出て、現在は40~50代。当時、雇用のミスマッチが発生して就職が困難を極め、非正規雇用に甘んじたらそのまま抜け出せなくなった人たちを指します。
非正規雇用であるため低年収であり、正規雇用と異なり仕事でスキルやキャリアアップも難しいのが現状です。
また氷河期世代はリーマンショックなどで雇い止めされ、景気の調整弁として使われ続けた世代です。加えて20年ほど放置されており、人としての尊厳を奪われ続けたと言えます。
就職氷河期世代支援プログラムの特徴
2019年末に就職氷河期世代支援が発表されました。放置し続けていた氷河期世代を、政府が救済し支援するとのことです。
しかし内容はお粗末でした。
既存の施設や行政サービスを紹介するだけ。新しい支援は「ゆきどけ荘」というサイトを政府が作ったことだけではないか? と疑ってしまうほどです。
厚生労働省でも確認しましたが、やはり既存のサービスを組み合わせて「氷河期世代支援」と銘打っているだけです。
参照 就職氷河期世代の方々への支援策等
他には氷河期世代の年代限定での募集を解禁したこと、公務員として政府や自治体が募集を始めたことくらい。
この公務員としての募集をすべて合わせても、おそらく数百人程度の人数です。
焼け石に水! ということわざが頭に浮かびますよね。
頭にくるのは「今までのサービスをパッケージにして、新しく銘打っておけばOK」という政府の態度です。
それで解決しなかったから現状があるんちゃうんかい! と思わず大阪弁になります。
コロナ禍で雇用の喪失
2019年末に氷河期世代救済が発表されてから、タイミングの悪いことにコロナ禍が訪れました。氷河期世代救済どころか第2の就職氷河期世代発生か?! と危惧されています。
企業は減収減益に見舞われ、来期の新卒採用を抑制ないし中止する企業も相次いでいます。それどころか賃金引き下げ、残業抑制、ボーナスが出ない、希望退職を募るなど惨憺たる有様です。
希望退職はどうやら40~50代中心に募っている模様。ちょうど氷河期世代と同じ年齢層です。
――この状況で果たして氷河期世代の救済など可能でしょうか? 絶対に不可能です。
この未曾有の危機に政府は3次補正予算を”たったの”15~20兆円程度で考えているのだそうです。現在の状況では到底、氷河期世代の救済などできそうにありません。
氷河期世代に本当に必要な支援を考える
氷河期世代の救済に必要なことは3つあります。
- 安定した雇用
- 尊厳の回復
- 他世代との不平等感に配慮した支援策
まず何より安定した雇用が必要です。氷河期世代は非正規雇用で不安定だったため、スキルアップもままなりませんでした。
同じ仕事を続けられないことも多く、続けられたとしても非正規だからと仕事を任せてもらえないことも。これではスキルアップどころではありません。
さらに氷河期世代は使い捨てにされてきました。使い捨てにされ続けながら尊厳を保ち続けるほど難しいことはありません。
安定した雇用と「社会から必要とされている」と感じられる「社会への信頼感」が必要です。
また氷河期世代に向けられる自己責任論の緩和のため、政府が過ちを認めるべきだと思います。氷河期世代は自己責任ではなく、政府の責任だったと認めてもらいたい。
それでこそ大胆な氷河期救済も可能になるというものです。
一方で他の世代への配慮も必要です。他世代が不平等と感じるような支援はつつしむべきでしょう。
このように氷河期世代に必要な救済措置、支援を考えるとJGPが最適解ではないか? と思えます。
就職氷河期世代救済にJGPこそ必要
JGPとはJob Guarantee Programの略で、日本語では雇用保障プログラムと呼ばれます。最低雇用保障と呼んでも差し支えないでしょう。
内容は簡単で政府が雇用を保障するというもの。最低賃金ですが雇用が保障されるので、景気が悪いときに利用し、景気のいいときには他企業への就職が可能です。
最低賃金の引き上げと併せて行うことで、氷河期世代への救済のみならず非自発的失業者全体の救済になるのではないでしょうか。
他にも最終的な雇用を政府が保証しているため、ブラック企業は姿を消します。ブラックな環境で働くくらいならJGPに頼ればいいのです。
氷河期世代への救済として筆者はJGPを強く推薦します。
JGPについて詳しく知るには以下の記事をどうぞ。
まとめ
本当に氷河期世代を救済するためにはどうしたらいいのか? 一度失ったものは二度と取り戻すことはできない、というのは大原則です。
すなわち氷河期世代が失ってきた時間、機会は二度と取り戻すことはできません。
もし20年前に正規雇用に就けていたら――今頃は温かい家庭を築けていたかもしれません。しかし失った時間はもう戻らないのです。
現在はコロナ禍で非常に厳しい状況です。だからこそ政府はさらなる積極的な支援やサポートをするべきではないでしょうか。
サイト主の提唱するような施策を実行するとして、一番のネックは財源よりも嫉妬だと思う。
それも「同世代の成功者からの嫉妬」が一番酷くなるのではないか。
生活保護叩きを最も熱心にするのも、最貧困層のすぐ上くらいの所得の人たちだという説もあるし、
救済を受ける集団に最も属性が近い人たちの嫉妬は無視できないように思う。
「何でアイツらは優遇されて自分は対象外なんだ」というような。実際は救済を受けたとて、
サイト主の言うとおり「失ってきた時間、機会」は二度と取り戻せないのではあるが、
嫉妬を感じている他者にはそれは響かないであろう。
個人的な観測では、氷河期世代を救おうという言説に冷水を浴びせるようなことをいうのは、
意外に「氷河期世代だけど何とか上手くやった人」(困難な就活を乗り越えて正社員をずっと
やってきた人など)が多いように感じている。
こういう人には他世代の正社員などより一人あたりの業務量が多かったと感じている人も多く、
強固な自己責任論者が目立つ。
つまり、苦境にあえぐロスジェネの当事者を「結局は自分の能力がなかっただけ」「社会に甘えるな」
と突き放す人が結構多いのである。
もちろんサイト主のように当事者意識を持って救済を唱える人も少なくはないと思うが、
「氷河期世代」と一言で括ろうとしてもその内実は一枚岩ではないと感じる場面が少なくないと
いうのも事実である。
生活保護叩きをする人たちの存在が、「受給は恥ずべきこと」という社会イメージ払拭の障害に
なっているように、救済の実行に対する同世代・他世代の嫉妬の感情を如何に抑え制御するか
という方法論なしに、ロスジェネの「尊厳」回復は困難を極めるものと推察する。
無論やらないよりはやった方が遙かに良いことは論を俟たないが、個人的にも良い案が浮かばず
思案に暮れるばかりである。
そうですね、だから途中で書いたように「他世代と不平等にならない」ことが必要です。
んでJGPとなります。