【一目瞭然】ベーシックインカムのデメリットを箇条書きで解説

 ベーシックインカムのデメリットを検索したところ、あまり内容のある記事がありませんでした。メリットについては、多くの記事が力説しています。

 議論を確かなものにするためにも、ベーシックインカムのデメリットや問題点について解説します。先に箇条書きしておくと、以下がデメリットと問題点です。

  1. インフレ制約と潜在供給力
  2. ビルトインスタビライザーがない
  3. 労働者の所得は上がるか、下がるか
  4. そもそも何のために導入するのか
  5. 累進制なき給付は正しいか?
  6. 他の社会保障制度で代替できないのか
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種類と概要

 まずさっと、ベーシックインカムの種類について復習しましょう。基本的に3つの種類があり、複合型も存在します。

ユニバーサルベーシックインカム

 赤ちゃんから老人まで国民全員に一律給付するベーシックインカムを、ユニバーサルベーシックインカムと言います。UBIと略されることもあります。

 給付額は8万円から10万前後で、議論されることが多いです。

 ユニバーサルベーシックインカムは後述する社会保障一元化と、積極財政の2種類に分かれます。

社会保障一元化

 元々のベーシックインカムは、社会保障の一元化として議論が始まりました。日本なら120兆円ある社会保障費を、ベーシックインカムに一元化して効率化するという議論です。

 社会保障のニーズに合わせて給付するのではなく、一律8万円などの定額で給付できるので行政の効率化が実現されます。
 社会保障の代替として、ユニバーサルベーシックインカムを採用する議論です。

 社会保障一元化ではないユニバーサルベーシックインカム議論は、社会保障とは別個にユニバーサルベーシックインカムを実現しようとする議論です。

負の所得税

 負の所得税とは、低所得者から所得税を徴税するのではなく、逆に給付すると言う議論です。所得制限付きベーシックインカムと表現すれば、わかりやすいでしょう。

 所得によって、給付される金額が変動するのが特徴です。
 筆者はベーシックインカムを実現するなら、負の所得税型が良いだろうと考えます。

ミクロでデメリットはない

 本稿では社会保障一元化としてのベーシックインカムは、議論からはずします。明らかにデメリットが大きく、メリットが少ないからです。

 社会保障とは別にユニバーサルベーシックインカムを実現しようとする議論が、現在は主流です。特に断りがない場合は、このベーシックインカムを前提とします。

 ミクロの視点、つまり個人や企業の視点でベーシックインカムには、デメリットは存在しません。なぜなら「現在の所得とは別に、追加で給付が無条件で受けられる」のですから、当然です。

マクロ的デメリットと問題点

 以下はベーシックインカムの、マクロ視点でのデメリットや問題点です。

インフレ制約と潜在供給力

 ベーシックインカムの給付額を8万円とすると、年間に120兆円ほどの政府支出拡大になります。

 現在の日本のGDPは550兆円ほどです。果たして120兆円もの政府支出拡大に、供給能力が耐えられるでしょうか?

 潜在成長率、つまり潜在的な供給能力は測定できません。具体的な数字は、予測や見込みでしかありません。
 120兆円の政府支出拡大は、20%以上の高インフレになる危険性を秘めています。

 仮に120兆円の政府支出拡大で、10%程度の穏当なインフレ率に収まったとします。それでも積極財政派が唱える、他の政策がすべて実現できなくなるというデメリットが存在します。

 国土強靱化や防災・減災対策への予算増額、公共事業の増加などは実現不可能でしょう。

 ベーシックインカムの一番の問題点は、インフレ制約と供給能力の問題に尽きます。

ビルトインスタビライザーがない

 ベーシックインカムはその性質上、ビルトインスタビライザーが働きません。ビルトインスタビライザーとは、税制に組み込まれた景気調整弁のことです。

 例えば不景気で赤字なら、法人税を徴税されずに済みます。税が軽くなるわけです。
 逆に好景気で黒字なら、法人税が発生します。税が重くなるわけです。
 これがビルトインスタビライザーです。所得税も、同様の機能がありますよ。

 ベーシックインカムは一律給付ですから、ビルトインスタビライザーは働きません。インフレが行き過ぎても、自動的に調整されないのです。

労働者の所得は上がる? 下がる?

 ベーシックインカム議論でもっとも白熱するのは、労働者の所得がベーシックインカムで上がるか、下がるかです。

 先に結論を書けば、少なくとも中・短期的には上がります

  1. 政府支出拡大で、需要が増える=企業利益も増えるので所得上昇圧力
  2. 月に10万円なら、働かない人も出てくる。労働市場は労働者不足になり売り手市場化
  3. 需要増加+労働者減少(供給能力減少)傾向なら労働所得は上昇

 ただし雇用の流動性の拡大や、非正規雇用の増加も予測されます。長期的には労働市場の構造変化で、所得が下落する可能性もあります。

そもそも何のために導入するのか

 シンギュラリティでAIが人間の仕事を奪う、だからベーシックインカムだというのが議論の初端です。
 AIの発達がベーシックインカム導入の、大義名分や理由付けでした。

 総務省|平成28年版 情報通信白書|人工知能(AI)導入で想定される雇用への影響では、有識者27名中、16名が「AIの導入で、新しい市場が”創出”され、”雇用機会が増大”する」と答えています。
 逆に「多くの仕事が奪われ、失業率が上昇する」としたのは、27名中、わずか3名でした。

 AIに仕事を奪われるという言説は、非常に疑わしい話です。総務省のヒアリングでも、仕事が奪われると予測した専門家は1割です。
 むしろ、雇用は増大するとすら考えられています。

 こうなると、なぜベーシックインカム導入なのか? 大義名分が不明です。貧困層に手を差し伸べるなら、既存の社会保障の拡充で事足ります。

 ベーシックインカムは何のために導入するのか? ベーシックインカムを主張する人たちも、あまり意識していないのではないでしょうか。

累進制なき給付は正しいか?

 ベーシックインカム導入の大義名分は不明です。その上でベーシックインカムという、累進性なき給付は正しいのでしょうか?

 論理的にはビルトインスタビライザーが働きません。加えて高所得層に給付しても、貯蓄されるだけの可能性も高い。

 コロナ禍での10万円給付は、喫緊かつ効率的な給付のためと理由付けできました。ベーシックインカムでは、どのように理由付けして一律給付なのか不明です。

他の社会保障制度で代替できないのか

 貧困層救済にベーシックインカムの目的があるなら、他の社会保障制度で代替はできないのでしょうか。筆者には十分に、代替可能だと思えます。

 加えて他の社会保障制度との兼ね合いは、どうなるのでしょうか。例えば生活保護は、生活保護費+ベーシックインカムとなるのでしょうか?
 それともベーシックインカムは所得として計算され、生活保護費はその分、減額されるのでしょうか。

まとめ

 ベーシックインカムのデメリットや問題点を提示しましたが、筆者はベーシックインカムに否定的ではありません
 例えば生活保護は持ち家では受けられませんが、ベーシックインカムなら持ち家+貧困にも対応できます。

 ――有り体に言えば生活保護要件を、もう少し緩和したら対応できる話ですが。

 個人的には月に8万円給付されるなら、とても素敵だと思います。適当にクラウドソーシングなどで10万円ほど稼げば、余裕を持って人間一人くらいは生活していけるからです。
 加えて少子化対策にもなるでしょう
 なぜなら子供が生まれたら、その日から給付が始まるのですから!

 ベーシックインカムでもっとも大きなデメリットは、インフレ制約と供給能力だと筆者は考えます。

 あなたもメリット・デメリットの両方を検討して、ベーシックインカムを考えてみてください。

 以下の著作がAmazonで、気になりました。

原題の直訳は
「ただでお金を配りましょう」という
まさにベーシックインカムを提案するタイトルです。

私自身、ベーシックインカムに対する興味で
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29歳のオランダの歴史家による著作

これまでに著作が20ヵ国で出版されるなど
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データは詳細ながらも、トピックが明瞭で
喩えも分かりやすいです。

Amazonでの口コミ

 以下の著作でも一緒ですが、やはり主流は「AIに仕事が奪われるので、ベーシックインカムしましょう」です。

総務省「AIは仕事をむしろ生み出すので、ベーシックインカムいらんやん……」

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