映画「二百三高地」を先日、再視聴しました。1度目の視聴では、感想が書けませんでした。映画の内容自体は、複雑ではありません。しかし感想が書きづらい映画です。
なぜだろうか、と考えてみました。ストーリーは起承転結もハッキリしており、モヤモヤ感が残る系ではありませんが、視聴し終わったあとに「感動した」「スカッとした」「面白かった」などの感想が出づらい映画です。
本で言えば読後に「うーん……」と考えさせられるような……そんな映画です。あらすじや映画の基本情報をざっと解説し、感想や見所を紹介します。
映画「二百三高地」の基本情報
映画「二百三高地」は1980年に上映された、日本の邦画です。日本の映画史に残る名作、と言えましょう。尺はかなり長く185分。普通の映画の1.5倍です。
途中にさだまさしの劇中歌が休憩になっており、2部構成です。
主人公の第三軍を率いる将軍、乃木希典は仲代達矢が演じます。主要登場人物である小賀武志を演じるのはあおい輝彦。当時のそうそうたる面々が、出演しています。
映画「二百三高地」のあらすじ
あらすじを全て書くと長いので、端折っていきます。
日露戦争勃発前、日本は開戦派と非戦派が対立していました。世間でも対立が目立ち、開戦派と非戦派のデモがぶつかります。そんな中、松尾佐知は開戦派に暴力を振るわれそうになったところを、小賀武志に救われます。
日露戦争はあえなく開戦。ロシア正教の教会で小賀武志は、ロシア人神父に「私はロシアを敬愛しています」とロシア語で表明。そんな折に松尾佐知と再開し、愛を深めました。
小賀武志は日露戦争に徴兵され、小隊長として正体を引いて参戦。旅順攻囲戦が始まります。旅順攻囲戦は凄惨に次ぐ凄惨で、ロシア要塞の機関銃の前に日本軍はバタバタと倒れていきます。
中隊長に昇進した小賀武志の部下たちも、それはもうバタバタと倒れていきます。
小賀武志は次第にロシアを憎むようになります。ロシア人捕虜の尋問で通訳を務め、逆上して捕虜を撃ち殺そうとします。乃木希典将軍の前に引き出され、「兵には国家も司令官もない、焦熱地獄に焼かれてゆく苦痛があるだけ」と強く訴えます。
一方で乃木希典将軍も、旅順攻囲戦で息子2人を失いします。そんな乃木家に対して世間は戦が下手だと非難し、妻である静子がこもる家には投石すらされます。
延々と地獄のような戦闘が続いた後、児玉源太郎が非情に決断を下して二百三高地を陥落させ、日露戦争は終結。日本中が戦に勝ったと湧き上がります。
明治天皇や後続居並ぶ中で復命書を読む乃木希典将軍は、失った部下、兵士への想いから復命中に落涙します。
映画「二百三高地」への感想とレビュー
筆者が抱く映画「二百三高地」の印象は、複雑です。普通、映画を見たあとには「爽快感」「ドキドキ」「感動」「かわいそう」「心が震える」など感情の動きがあります。
しかし映画「二百三高地」の視聴後は、そのどれにも当てはまりません。
なぜだろうか? と考えてみると、ある種の当事者意識なのかもしれません。自分に関係のない物語だから、様々な感想を気軽に抱くことができます。しかし当事者意識が出てしまうと、複雑な感情を抱かざるを得ないのです。
映画「二百三高地」がなぜ、視聴者に対して当事者意識に訴えかけるものがあるのか? 理由は対比にあると思われます。
日露戦争が始まり、2部構成の第2部が始まる場面は印象的です。男の子たちが竹ずつなどを鉄砲に見立てて、戦争ごっこをしているシーンから始まります。その男の子たちが堤防を駆け下りていくと、戦死者の葬儀の列に出くわします。
このシーンでは「凄惨な実際の戦闘と戦死者」が「無邪気な男の子たちの戦争ごっこ」と対比されていました。
乃木希典は、日露戦争中に「戦下手」と非難されていたようです。映画「二百三高地」でも日露戦争中、乃木家に投石されるシーンがあります。妻静子はうつろな表情で仏壇を見つめながら、じっとそれに耐えます。
一方で日露戦争終了後、乃木希典将軍は名将、軍神とあがめられます。この世間の手のひら返しも、さらっと対比され描き出されます。
他にもロシアを敬愛していた小賀武志は、ロシアを憎むようになりました。
とにかく対比が秀逸で、そこのメッセージがあるのだろうと感じました。この対比から何を読み取るかは、視聴者によって異なるでしょう。
まとめ
映画「二百三高地」の感想やレビューを眺めていますと、何かしらのメッセージを映画から読み取っています。しかしそのメッセージは、視聴者によって異なります。
映画「二百三高地」そのものに、「これがメッセージだ」という強烈な決めつけはありません。右でも左でもなく現実、という印象です。
余談ですが1980年の映画なので、演出が現代に比べて古いのは留意しておきましょう。また戦闘シーンも、CGを見慣れた若い人には馴染まないかもしれません。
それでも1980年の映画として、最高峰の技術を集めた映像を見ることができます。
日本の映画史を語る上でも、避けて通れない作品だと思います。