就職氷河期世代の恨み言は、就職氷河期を5W1Hにすれば理解しやすくなるのでは? と思い立ったのが、今回の記事の発端です。
就職氷河期世代とはどのような人たちなのか? どのような境遇なのか? を、さらっと簡単に理解したい人向けの記事です。
5W1Hをさらっと復習
最初に5W1Hを、さらっと復習しておきましょう。5W1Hとは
- Who(だれが・人物)
- When(いつ・時間)
- Where(どこで・場所・空間)
- What(なにを・物事・対象)
- Why(なぜ・理由)
- How(どのように・手段)
を明確化することで、情報の要旨が伝わりやすくなったり整理されたりする技術です。筆者は5W1Hを「だれがいつどこで」ではなく、「人物・時間・場所・対象・理由・手段」といった単語に置き換える方が理解しやすいです。
就職氷河期世代はなぜ、あれほど恨み骨髄に徹するのか? 5W1Hで就職氷河期の恨み言を整理すると、わかりやすくなります。
就職氷河期世代の恨み言5W1H
誰が
「就職氷河期世代」がもちろん、主語になります。
いつ
1990年代前半から2005年あたりが、就職氷河期世代と呼ばれます。詳しくは以下の記事を参照してほしいのですが、就職氷河期世代の時代は正規雇用が急激に減少した時代でもありました。
他にも生業と言われる家業の減少や、比較的正規雇用に就きやすい製造業の雇用が減少が起こりました。
しかし当時はまだ、世の中にも余裕がありました。就職氷河期世代も「努力すればきっと、ちゃんと将来は就職できる。次のチャンスがきっとある」と考えていました。
けれども1995年の最初期組は、次のチャンスが2005年以降でした。10年以上もチャンスが来ず、すでに2005年から恨み言をはきたかったはず。
一方で2000年代初頭の最後期組は、20005年以降のチャンスが来るものの2008年のリーマンショックで、またも非正規雇用に転落する人が続出しました。
- 1995年から非正規雇用で、正規雇用に就けなかった古参就職氷河期世代
- 2005年から非正規雇用で、正規雇用に就けなかった新規就職氷河期世代
- 2008年に非正規に落ちた、就職氷河期世代
恨み言が「いつ」始まったかのポイントは、上記3つでしょう。
どこで
もちろん日本です。
なにを
安定した正規雇用を、との表現になります。
なぜ
就職氷河期世代の時代、急激に雇用のミスマッチが起きたり、雇用がしぼんだりしました。
数字的な一例をあげます。中高卒者の求人かつ規模500人以上の企業の求人数は、1992年が34万人に対して2004年はわずか3万人でした。製造業の求人数でも同様で、1992年が70万人に対して2004年は8万人に激減しました。
詳細は上記の記事を参照ください。
なぜは「雇用が急激にミスマッチを起こしたり、しぼんだりした」
どのように
逃した、就けなかったとなります。
5W1Hで就職氷河期世代を表現すると
「就職氷河期世代が」(誰が)
「1995年から2000年代初頭に」(いつ)
「日本で」(どこで)
「安定した正規雇用を」(なにを)
「雇用の縮小やミスマッチが起こったために」(なぜ)
「逃したので、非正規雇用に甘んじるしかなかった」(どのように)
なお就職氷河期以外で正規雇用に就くチャンスが多かったら、就職氷河期世代の恨み言も少なかったでしょう。けれども現実は、多くの就職氷河期世代が非正規雇用を継続せざるを得ませんでした。
理由は単純で、簡単なことです。
- 非正規雇用は年収が低く、時間に余裕がない
- 非正規雇用はキャリアになりにくい
- 非正規雇用はスキルが育ちにくい
最初から正規雇用で継続するより、非正規雇用から正規雇用にあがることの方が何倍も労力が必要です。
そしてその労力を同世代の多くがかけたために、市場競争が激しくなり、求められるレベルも高くなる悪循環も発生したことでしょう。
報道などでも指摘されることですが、多くの就職氷河期世代に漂うのは「諦観」です。なぜなら2000年代初頭の若者だった時代は終わり、2020年の現在、就職氷河期世代は中年になってしまいました。
20年も非正規雇用で正規雇用に上がれず、政府からも放置されていたら、恨み言のひとつも言いたくなるでしょう。
就職氷河期世代はなにを恨めばよいのか?
就職氷河期世代は、なにを恨めばよいのでしょうか? 時代の不運と、諦めなければならないのでしょうか。
世間は就職氷河期世代に「甘え」「自分を恨め」と言う
「甘えだ」「恨むなら努力しなかった自分を恨め」との声も、ネット上では多く見られました。いわゆる自己責任論です。
基本的に就職氷河期の親世代も、就職氷河期に対して無理解です。体験していないので、理解が難しいのでしょう。
就職氷河期世代で素直に、世間の声に従った人たちの中には、心が折れてしまった人も多数います。
けれど世間に恨み言を吐いても、自分たちの境遇は解決しないと就職氷河期世代は知っています。
就職氷河期世代を使い捨てにする企業
就職氷河期世代は結果的に、使い捨てされ続けた世代です。2005年以降に正規雇用を勝ち取った就職氷河期世代も、2008年のリーマンショックでまたも非正規雇用に転落する人が続出しました。
マクロで見れば、景気の調整弁にされたのです。
では企業に恨み言を吐けばよいのでしょうか。恨み言を吐いても、チャンスがさらに狭まるだけだと、就職氷河期世代は身にしみています。
救済の手を差し伸べなかった政府
結局のところ、責任の帰結は政府にあります。就職氷河期世代を20年以上も放置したのは政府です。日本全体を貧困化させ、就職氷河期世代のチャンスを潰してきたのも政府です。
明らかに就職氷河期世代は、日本の経済政策失敗の被害者でした。就職氷河期が本当に恨み言を吐き、恨み辛みを述べるべきは政府です。
けれども困ったことに、就職氷河期世代は時間もお金も余裕がありません。非正規雇用だからです。
就職氷河期の恨み言まとめ
本稿はなんとなく「5W1Hにすれば、就職氷河期への理解も広まるのでは?」との思いつきから、書き始めました。実験的な試み、進歩的アイディア、革新的原稿……になるはずが(笑)
なかなか、うまくまとまりませんでした(汗)
就職氷河期世代の苦難を、箇条書きにすると以下になります。
- 新卒で就職先がない! 100件応募して、1件も採用されない!
- しょうがないから非正規雇用で……。仕事はしないと……。
- 非正規雇用でキャリアがない、スキルも育ってない!
- 正規雇用に上がれない!
- ようやく正規雇用に就けたと思ったら、リーマンショックで失職
- 気がついたらすでに40歳ですが何か?
- どうしようもないんですが何か?
政府は2019年、就職氷河期世代支援プログラムを実施すると発表しました。
新型コロナで就職氷河期支援プログラムが、どうなったのかすらわかりませんけどね。ようやく少しでも救済されると思ったら、これですよ。
就職氷河期世代がいくら大人しくても、恨み言のひとつやふたつは出るってものです。
就職氷河期世代の苦難を「不運」として、片付けるのは簡単でしょう。けれど本当は、日本政府が犯した経済失策の被害者であり、日本や世間から放置され続けた世代です。