なぜ若者は自民党を支持するのか? キーワードは「努力しても無駄」な宿命型社会 | ハフポスト、という記事を読みました。
非常に興味深く、かつ秀逸な記事です。
記事を解説しつつ、以下の点を明らかにしていきます。
- 日本の社会的な断絶
- 断絶による民主主義の凋落
- 社会的な断絶は、なぜ起こったのか?
若者の自民党支持のキーワードは「凋落」と「しがみつく」と「あきらめ」
冒頭の記事をまず、解説します。概略はこうです。
- 若者論はどこでも語られるが、実証的な若者論はなかった
- 「分断社会と若者の今(大阪大学)」で実証研究が進められている
- 大卒と非大卒で、それぞれ異なる認識共同体(文化)が形成される
- 若者の政治離れは、非大卒が顕著
- 自民党支持は、大卒が顕著
- 若者の政治意識はイデオロギーではなく、物質主義、新自由主義、宿命主義だ
多少、補足をします。
記事から引用します。
大卒は大卒同士で、非大卒はそこでかたまり、それぞれまったく違う文化のなかで生活をしている。いってしまえば、違う日本社会で生きている。
なぜ若者は自民党を支持するのか? キーワードは「努力しても無駄」な宿命型社会 | ハフポスト
3.の「それぞれ異なる認識共同体」が上記です。
6.の「物質主義、新自由主義、宿命主義」も、補足します。
物質主義とは記事によれば、経済を重視する主義だそうです。
記事では「豊かになれば、脱物質主義になると考えられていたが……」とありますが、「むしろ貧困化しているので、物質主義が台頭してきた」と私は考えます。
まとめると、若者は大卒と非大卒で違うコミュニティーや文化を形成し、断絶する。
非大卒は「生まれた家庭が……」とあきらめ、宿命主義(努力しても無駄)に陥り、政治にも興味を抱かなくなる。
政治に興味を抱くなら、経済重視の物質主義になる。なぜなら、生活が苦しいからです。
大卒は新自由主義を支持する。自分たちは持つ者であり、勝ち組の椅子にしがみつけるからです。したがって、自民党支持になる。
というような傾向が、実証研究からは浮かび上がってきたそうです。
日本の経済的、文化的凋落と格差社会
失われた20年は、日本から経済成長を奪いました。
名目賃金ですら、1997年に比べて50万円ほど下落しています。つまり貧困化してきたのです。
貧困化する中では、2つの階層が形成されます。
- 持つ者(勝ち組と、以降表記)
- 持たざる者(負け組 と、以降表記 )
こうして2種類の認識共同体が形成され、分断されます。
例えばグローバルなエリートが、スラム街の住人の意識を理解できるでしょうか? 無理に違いありません。
おそらく「貧しいのは自己責任」と、思うのではないでしょうか。
欧州で広まった反知性主義は「知的”権威”への懐疑」です。つまりエリートたちへの、低所得層の反発です。
※反知性主義は「知性はいらない」というものではありません。
経済の凋落と社会の断絶や格差は同時に、文化の凋落も招きます。
この場合の文化とは、習慣や習俗に支えられた常識や、クライテリオン(基準)を指します。
結果として橋下徹や、N国の立花隆のような人が支持を集めたりします。
環境論決定論と若者が見る日本社会
割れ窓理論はご存知でしょうか?
ニューヨークはかつて、治安が悪かった。そこで市長は警察を強化するのではなく、環境を改善した。
割れた窓をなおし、落書きを消した。
環境の改善によって、治安は劇的に改善した。
人間のアイデンティティや行動は、環境によって大きく左右されるのだ。
環境論決定論は地理学の学説ですが、おおよそ同じように捉えて結構です。
現在の日本社会は、若者(20代)にはどのように見えているのでしょう。
- 生まれた頃からデフレ
- 日本は経済成長しない=限られたパイの取り合い
- 政治が何をやっても、無駄
上記のような感じではないでしょうか?
高校生や大学生の人気の職業では、公務員が必ず上位に来ます。若者の安定志向は、本能的な日本へのあきらめがあるのでは? と感じます。
環境論決定論的に考えるのなら、若者には責任はないはずです。
このような日本社会を作ってきた、我々大人にこそ責任があるのではないでしょうか?
断絶する格差社会は民主主義すら凋落させる
勝ち組と負け組、上級国民と下級国民。2つの認識共同体ができつつある、ないし存在すると上述しました。
一億総中流という連帯から、負け組と勝ち組という断絶が起こりつつあります。
国民意識とは、民主主義において必要不可欠です。
しかし格差と断絶、新自由主義によって「政府は何もしてくれない」とすれば……はたして国民意識や連帯は保てるでしょうか? 果てしなく困難です。
「新自由主義は共同体や、民主主義すら破壊する」のです。
「最近の若者は論」の不真面目さ、無責任さ
よくメディアでは「若者の◯◯離れ」「若者の草食化」と言われます。「若者は外に打って出るべきだ!」「もっと若者は、起業などのチャレンジをするべき!」という論調も、目立ちます。
私はこれ、大嫌いです。
貧困化しているのに、消費を増加させるわけがない。雇用の不安定化は、ローンをためらわせるでしょう。
海外に打って出るのも、起業などのチャレンジも「安定した土台」がないと、単なる無謀です。
非正規雇用の増加は、正社員としての「ノウハウの蓄積期間」を毀損します。
そもそも論ですが……。上記のような「最近の若者は論」を言う人の大半は、日本国内で地位を固めてきた人でしょうに。
そのような記事を読んで「うんうん、そうだなぁ……最近の若者は――」と思うおっちゃん達も、大半は「日本国内で地位を固めてきた人」です。
という文句を、若者も口にしてはいかがでしょう?
リンク先の記事をざっと読んでみましたが、その中で筆者は、
「加えて、安倍政権は若者の支持を得やすい急進的な改革派ではない。だから、若者の自民党支持はますます不思議な現象なのだ。」
と書いています。
安倍政権が急進的な改革派ではない?安倍政権は、一々例を挙げるまでもなく、今までそれこそ数えきれないほどの極悪政策(緊縮・構造改革・グローバル化政策)のオンパレードによって国家社会の解体を推し進めてきたわけで、それこそ最低最悪の意味での急進改革派です。言うまでもなく、現在の自民党は、バブル崩壊期以前の(保守的な国民政党としての)自民党とは全く似ても似つかぬろくでもない政党へと堕落した。それとも、この「失われた20年」の改革バカ路線をいわば”既定路線”とみなし、安倍政権はその延長線上にあるから、急進改革派ではないと主張しているのか?全く意味不明です。
>よくメディアでは「若者の◯◯離れ」「若者の草食化」と言われます。「若者は外に打って出るべきだ!」「もっと若者は、起業などのチャレンジをするべき!」という論調も、目立ちます。
問題の本質が全く分かっていないアホなメディアや評論家によるテンプレ戯言ですね。逆にこいつらがアホだから、若者の政治意識も未熟なのです。何しろ、以下の記事が示すように、安倍政権の支持率が最も高い層は20代~30代の男性です。いわゆる若年男性層。
https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2018121100002.html?page=1
こうした現象に対して、上記のテンプレ戯言を繰り返す連中は批判するどころか、おそらく肯定的でしょう。いまだに多くの国民が改革幻想から抜け切れず、特にいわゆる勝ち組(ないし知的エリート層、上級国民)連中は、私利私欲のためもあるのか、国を滅ぼす現政権を圧倒的に支持しているからです。若年層を正しく啓蒙できる人間はいないのか?
私もそこは、引っかかりましたよ~。
「いや、安倍政権は急進的な革新政権じゃん!」と(笑)
現在当ブログは5万PV/月で、案外25歳~34歳の読者も多いようです。
多分、進撃の庶民も同じような感じではないでしょうか?
※まだ先月の分析が終わってないので……
我々にできることは、ネット上でPV上昇や拡散をしていくことだけかも知れません。
はじめまして、いつも興味深く読ませていただいております。春点と申します。
最近の若者論、確かに諦めや無責任さという側面はありそうですね。
実にご慧眼でいらっしゃいます。
その上で一点別の視点の提示を許していただけるのであれば、
自民党支持者の若者の中には、
立憲をはじめとした野党全体に対して、
「公約実現能力が無い」という諦めがあり、
それを期待するよりは
与党自民党を変えていく方が「よりマシ」と考えるものが
一応は存在している、という点を挙げさせて頂きたいです。
それらの若者は、無思慮ではありません。
消極的ながらも自分の頭で考えて決断しています。
そういった若者達に、高橋様であればどのようなアドバイスをなさいますか?
この党であれば安心して政権を任せられる、という野党は、
現状として存在しないように、
若者ならぬ私にも感じられますので、
安部政権を否定した先の世界をどう夢見、どう語るべきなのか、
一例をお示し頂けたなら幸いです。
はじめまして。いつもお読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m
大変興味深い、論点の提出かと思います。そして非常に悩ましい質問だとも思います(汗)
たまに、若い人に政治の質問をされます。私は事実と思われることと、その解釈についてのみ話します。
判断については、ほとんど口出ししません。もちろん、支持政党もです。
質問は経済系が多いです。あとはトランプ大統領(当時だけ)とかでしょうか。
経済系の質問では消費税や、地方が多めでした。
いつも「日本に財政問題は存在しない」ことを、解説している気がします(笑)
判断は、情報がないと不可能です。
若い人には「論理性のある、正しい情報を選んでほしい」ですね。
仮に「財政問題は、存在しない」と知れば、多くの人が積極財政を支持するかも知れません。
世論が動けば、自民党を含めた政治家も変わるはずです。
若い人たちが「どんな国や将来を夢見たいか?」、真剣に考えてほしいと伝えると思います。
私は「みんなが、そこそこ豊かに暮らせる国」がいいですね~。
あと、自営業ですから景気が良くなってほしい! です(切実)
P.S
私は別に、反自民ではなかったりします。2009年までは、自民党支持でした。麻生政権の積極財政を、支持していました。
2012年も、自民党に入れました。後にこの判断は、後悔しました(汗)
あまりビシッとした回答ではありませんが、ご容赦ください。
丁寧な御回答、誠に痛み入ります。
確かに2012は自民党を勝たせ過ぎたのかも知れません。
さりとて離散集合の野党にも入れにくい選挙であったと思い返しております。
ハズレの中からよりマシなハズレを選ぶというのが、
残念ながら今の日本の政治のレベルであり、
ひいては主権者である国民のレベルなのでしょう。
日本に財政問題は存在しない、という点も全く同感です。
このしなくてもいい消費増税については、
野田政権時のG20において財務省の暗躍で
国際公約にしてしまったものと認識しております。
それが確かであれば、実質的に回避できませんよね。
景気の腰折れは何とか防ぎたい所なのですが、
政府の対策も場当たりの後手後手という印象です。
政治にしても経済にしても、ひとりひとりが関心を持って
もっと若者が夢を追える国にしていかねばなりませんね。
長々ととりとめのないコメントをしてしまいました。
高橋様の事業の御繁栄をお祈り申し上げます。
またお邪魔させていただきますね。
>またお邪魔させていただきますね。
是非どうぞ。
できるだけ良い記事を書けるように、頑張ってまいります。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。