1997年をピークに日本の平均年収は、数十万円ほど減少していると知っていますか? 非正規雇用者は1990年に20%でしたが、現在では就業者の40%を占めると知っていますか?
日本は、どんどん貧困化しています。
貧困化の原因は、新自由主義です。
日本に新自由主義がどのように導入され、どのような政策で、どのような影響を与えてきたのか? 誰でもわかるように、わかりやすく解説していきます。
新自由主義が日本に導入された歴史
まず日本に新自由主義が導入された歴史と、時代背景を参照します。
歴史
新自由主義が台頭するきっかけになったのは、1970年代のオイルショックです。オイルショックによってアメリカやイギリスは、スタグフレーションに陥りました。
スタグフレーションとはインフレでありながら、失業率が上昇する経済状況です。インフレ+不景気がスタグフレーションです。
このスタグフレーションを当時の、ケインズ経済学は解決できないと批判されました。実際は石油を中東に依存しており、原因は外的要因です。どのような経済学でも、解決できる問題ではありませんでした。
それはさておき……ケインズ経済学の権威失墜とともに、新自由主義経済学が台頭しました。
1980年代には新自由主義が、世界的に導入され始めます。
1991年にソ連崩壊と冷戦の終結、そして奇しくも日本のバブル崩壊が起きました。日本はバブル崩壊で自信喪失を味わって、日本式経営や政治を投げ捨てます。
グローバルスタンダードという言葉が流行り始めたのも、この頃です。
加えてソ連崩壊と冷戦終結は、楽観主義を世界にもたらしました。これからはグローバリズムの時代だ! との空気が支配的になりました。
もちろん日本の、この空気に倣います。
こうして1990年代に日本は、世界的に評価された日本式経営を投げ出し、グローバルスタンダードや新自由主義の導入を躍起に推し進めます。
政策
新自由主義の政策は、以下のようなものが次々と実行されました。
- 省庁再編などの行政改革
- 小選挙区制
- 消費増税
- 郵政民営化
- 非正規雇用の増加
- 各種構造改革
- 規制緩和
- プライマリーバランス目標
- 水道事業民営化
- 種子法改正
- 公共事業削減
- TPPやRCEPなど自由貿易協定と関税の低減
特に有名なのは2000年代初頭から行われた小泉郵政改革や、一連の構造改革でしょう。加えて2012年からの安倍政権も、次々と新自由主義政策を実行しました。
水道事業民営化やTPP、消費増税などは安倍政権下で実施されました。
これらの政策の特徴は、大きく2つに分類されます。
- 効率化
- 財政赤字の削減
例えば省庁再編、小選挙区制、規制緩和などは効率化に分類できます。消費増税や公共事業削減、民営化などは財政赤字の削減に、およそ分類されます。
効率化には人件費の削減、労働コストの低下も含まれます。効率化しても豊かにならないことは多々ある、と付言しておきます。
日本で新自由主義が受け入れられた理由
1990年代まで、日本式経営は世界的に評価されていました。日本式経営とは年功序列や終身雇用を特徴として、社員を家族のように扱う経営方針です。
ところがバブル崩壊をきっかけとして、グローバルスタンダードを日本企業は重視し始めます。加えて四半期決算の導入などさまざまな改革で、企業は短期主義に陥ります。
短期主義とは、長期的な投資より明日の利益という主義です。
少なくとも日本企業は、新自由主義を進んで受け入れました。どうして180度転換して、新自由主義を受け入れたのでしょうか?
バブル崩壊による自信喪失が、理由の一つと考えられます。もう一つの理由は、冷戦の終結です。
冷戦の終結は楽観主義をもたらし、これからは国際協調の時代だという空気を作り出しました。新自由主義≒グローバリズム(地球主義)ですから、国際協調の時代には新自由主義こそふさわしいと受け入れられたのではないでしょうか。
新自由主義が日本にもたらしたもの
新自由主義は日本に、大きな爪痕をもたらしました。
新自由主義を受け入れた結果、終身雇用と年功序列は崩壊しました。雇用の不安定化と非正規雇用の増加、そして格差拡大をもたらします。
加えて財政赤字の削減と効率化が政治目標となったため、政府支出は過少になりました。1998年の消費増税とともに、日本はデフレ化します。
いわゆる失われた20年が始まります。
効率化と財政赤字削減の名目で、公共サービスの民営化や社会保障の縮小が次々と行われました。例えば国民健康保険は以前、医療費1割負担でした。現在では3割負担に変更されています。
失われた20年は国民の平均所得を、数十万円ほど押し下げました。GDPは、21世紀に入ってからほぼ横ばいです。
他の先進国は少なくとも、1.5倍程度の成長をしています。
さらに深刻なことに、小選挙区制の導入で政治家の小粒化が進みました。1980年代以前の政治家と比べて、現在の政治家はビジョンがないと評されます。
田中角栄が見直されたのも、大きなビジョンがある政治家だったからです。
現在の政治家は「改革!」と連呼するだけです。
日本が抜け出せない新自由主義のジレンマ
新自由主義は日本を貧しくして、破壊的な爪痕を残し続けています。
なぜ日本は新自由主義から抜け出せないのか?
「効率化と生産性の向上」「財政赤字の削減」などの文言は、一般の人が見ると「さも良いこと」のような印象を受けます。
「大阪都構想で行政コストを減らします!」
「小選挙区制で政治と金の問題を解決します!」
「世界的な不景気だからこそ、海外に打って出る!」
「国民は改革の痛みに耐えて!」
上記の文言は全部、新自由主義的なものばかりです。
日本は新自由主義で起こった問題を、新自由主義で解決しようとしています。
これを身近に例えると「トラブルばかり起こす新入社員に、トラブルの処理を任せる」「ギャンブルで負った借金を、ギャンブルで返済しようとする」みたいな話です。
いかに破滅的でバカバカしいことになっているか? ご理解いただけるのではないでしょうか。
20年以上も新自由主義的改革を推し進め、状況が良くならないのは「改革が足りないから」なんだそうです。
日本は、このまま新自由主義から抜け出せないのか? 二度あることは三度ある。ならば20年続いたことは、30年続くかもしれません。
日本国民次第、と申し上げておきます。
まとめ
新自由主義はイデオロギーとして、じつは根っこが共産主義と一緒です。そう言ったらあなたは、びっくりするでしょうか。
新自由主義の根底には、機械論哲学があります。共産主義の根底には、唯物論があります。じつはこの機械論哲学と唯物論は、ほとんど一緒の考え方です。
共産主義はかつて大失敗し、破滅的な結末を迎えました。根っこが同じ新自由主義が、そうならない保証はありません。
新自由主義についてさらに興味のある方は、以下の記事をどうぞ。
>日本国民次第、と申し上げておきます。
と言いたいところですが、日本の近代史を振り返ってみても、従来の国家体制なり社会制度の変革が、国民自身による主体的な意志をもって成し遂げられた例は皆無であり、すべてが外圧によるものであったことを考えると、全くといってよいほど期待できません。
例えば、明治維新による近代国家の体制も欧米列強による外圧が一番の原因だし、いわゆる戦後民主主義体制も言うまでもなく対米戦争での壊滅的敗北の結果であり、また、バブル崩壊後のネオリベラリズム&グローバリズム礼賛の政治改革・社会制度も米ソ冷戦の終結が最大の原因です。
また、20年以上にわたって続いてきた数多の新自由主義的政策や社会的風潮が日本国家の衰退と没落をもたらしてきた事実は、今やまともな頭の持ち主ならば誰でも気づくことですが、いまだに変化の兆しは見られない。変化をもたらすとすれば、今回のコロナ禍の影響により、日本以外の世界の主要国が自国ファーストのナショナリズム政策に180°舵を切り、グローバリズム路線と決別したときです。
いずれにしても、昔も今も日本国民は社会の同調圧力にひたすら従うことしかできず、国家の運命を自ら切り開くだけの主体的な意志も行動力も欠如した精神的成熟度最低の民族だということです。
残念ながら、おっしゃっていることって事実なんですよね。
したがって二度あることは三度ある、20年続くことは30年続くだろうというわけですよね~。