コロナ禍で日本でも、テレワークの導入が進んでいます。4月上旬の調査によれば、テレワーク導入率は27%と、コロナ禍で2倍に増加しました。
参照 4月上旬のテレワーク実施率は27% 緊急事態宣言前から2倍に 都内では49%が実施 – ITmedia NEWS
一方でテレワークをすることで、生産性が下がった! という調査も見受けられます。
総務省のデータと、コロナ禍後の民間の調査データを引用しつつ「コロナ禍でテレワークを実施したら、なぜ生産性が下がったのか?」を読み解きます。
そもそも生産性とは?
生産性について、おさらいをしておきましょう。
生産性とは「生産性=アウトプット/インプット」で計算されます。インプットには労働を含む投入コスト、アウトプットには付加価値が入ります。付加価値とは、有り体に言えば粗利です。
したがって生産性とは粗利が増加するか、投入コストが低下するかでしか向上しません。詳しくは下記を参照してください。
総務省が出したテレワークの生産性調査データ
総務省は総務省|平成30年版 情報通信白書|テレワークによる働きやすい職場の実現で、テレワークの生産性に関するデータを公表しています。
重要なポイントだけ箇条書きにします。
- テレワーク導入目的で最も多いのが、通勤時間の短縮(交通費削減)で54.1%。2位が労働生産性の向上で50.1%。
- 労働生産性が実際の向上したかどうかでは、8割の企業が向上したと回答している
- テレワーク利用者が感じているメリットの1位は、通勤時間の短縮で71.5%。自由に使える時間の増加が68.1%
先ほど生産性の解説で「生産性は粗利の増加か、コストの削減でしか向上しない」と言いました。導入目的1位の通勤時間の短縮は、イコールで労働生産性の向上です。
なぜなら企業側からすれば、通勤手当が削減できるからです。
8割の企業が「労働生産性が向上した」と、回答するはずです。
なお「在宅環境だから、時間あたりの仕事量が増えた」なんてことは、あまりないでしょう。もしそうなら、どれだけオフィスの環境が悪かったんだ! という話です(笑)
総務省による調査データで理解できることは、テレワークの生産性向上とは通勤時間と手当の削減が主だということです。
コロナ禍で導入されたテレワークの生産性調査データ
一方、コロナ禍でテレワーク導入を進めた企業を調査した記事では、生産性が低下したとのデータが多いです。
テレワークで一般社員の4割強が「チームの生産性が低下」–Uniposが調査 – CNET Japanでは、約45%が生産性が低下したと答えています。
テレワークで生産性は下がったのか?3000人が明かした本音 | 日経クロステック(xTECH)では6割以上が生産性が下がったとのことです。
コロナ禍で導入したテレワークが低生産性な理由
コロナ禍で導入されたテレワークはなぜ、ことごとく生産性低下のデータしか出てこないのでしょうか?
総務省とコロナ禍以降のテレワークの前提条件
総務省のデータでは企業が主体的に、テレワーク導入を進めた事例ばかりです。従って当然、準備ができてからテレワークを導入しています。
総務省のテレワークの前提条件は、しっかり準備ができていることです。
しかしコロナ禍でテレワークを導入した企業のほとんどは、準備不足だったはずです。円滑な業務をおなう準備がなままテレワークに移行すれば、生産性が下がるのは自明です。
コロナ禍という環境
コロナ禍という環境も、コロナ禍以降のテレワークの生産性が低い要因に挙げられるかもしれません。
自粛要請や緊急事態宣言など、ストレスのかかる社会環境が生産性を低下させた可能性は否めません。またテレワークも半ば強制的であり、反発を生んだ可能性があります。
……そもそも論ですが、コロナ禍で売り上げ減に陥っているので、生産性が上がるはずがありません。と言うと、身も蓋もないですね(笑)
つまりコロナ禍と平時では、テレワークの生産性が比較困難です。
まとめ
テレワークそのものは企業にとって、生産性向上を果たすことのできる手段です。通勤時間削減に伴い、通勤手当も削減できます。よって生産性が上がるのは自明です。
今回のコロナ禍は、テレワーク導入にもしっかりとした準備が必要だと示唆しています。テレワーク環境を企業がしっかりと整えれば、業務も円滑に行うことが可能でしょう。
なおテレワークが、日本全体の生産性向上になるかどうかは別の話です。企業や個人にとっての生産性向上が、国家全体の生産性低下につながるという結果だってあり得ます。
いわゆる合成の誤謬です。
この考察については、またの機会に譲ります。