世の中「生産性! 生産性!」と大合唱です。人手不足には生産性! 売上アップにも生産性! 人生を豊かに生きるために生産性!
上記のように書いてある記事は、生産性の本質を知らない人が書いています。
というより、日本の生産性の記事のほとんどは「生産性が何か知らずに書いている」ようです。なぜなら「生産性の本質を解説してないから」です。
生産性と生産力、ないし効率性の違いにフォーカスして解説することで、わかりやすくなります。
生産性とは?を理解している生産性の記事がない件
生産性の解説記事はたいてい「生産性とは?」の段階では、まともな文章です。端的には「生産性=アウトプット/インプットである」を、小難しく解説しています。
生産性には、労働者の視点から見た『労働生産性』と資本の視点から見た『資本生産性』があります。
『資本生産性』は、設備投資などの固定資産への投資の割合を見る数値です。
『労働生産性』は、労働者が生み出す売上や製品。ビジネスシーンで生産性と言う場合は、こちらの労働生産性を指すことが多いです。
(リンク切れ)HR大学 より
上記のような感じですね。
しかし「生産性の本質」を掴むには、もう少し踏み込んだ解説が必要になります。つまり「アウトプットとして評価される”価値”とは?」です。
上記を解説しない、ないし理解していないので間違った生産性の認識で話が進むのです。
生産性のほんとうの意味とは?
生産性=アウトプット/インプット
これが生産性を表す式です。労働生産性の場合、インプットに労働時間や人数など労働量を入れて計算します。ここまでは生産性のどの解説でも、解説しています。
ではもう1つの「アウトプット」は何でしょう? これを解説している記事を、見たことがありません。書いていても「生産された付加価値」程度です。
生産された付加価値はどのように決定されるか?
生産物の価値は「需要と供給のバランス」で決定されます。
- 多くの人が欲しがっているのに、供給量が少ないなら1つあたりの価値は上がる
- 多くの人が提供していて、需要が一定以上に増えないなら1つあたりの価値は下がる
ここが生産性の核心部分です。
まず第一に価値とは「価格のこと」です。
工場のライン作業は、誰にでも出来るので生産性は低いと思われがちです。しかし例えば何らかの感染症が大流行して、マスクが品不足になったらどうでしょう?
マスクの値段が上がり、マスク工場のライン作業の生産性は上がります。
重要な事実を書きます。
「生産性と作業の高度性や生産物の多少は、必ずしも一致しない」
※マスク工場のライン作業を、ディスっているわけではありません。
もっと端的に言いましょう。生産性とは「高い利益が出るモノやサービス」を売ることで上がります。クソみたいな情報商材でも、売れれば「生産性が高い」ことになります。
生産性と生産力、ないし効率性の違い
ここまでくれば生産性と生産力の違いも、一目瞭然でしょう。生産力とは「生活需要などを満たせる生産する能力」を指します。これは「生産したサービスやモノの付加価値」ではなく「生産したサービスやモノの量」で決まります。
とすると生産力があるとは「需要を満たしている状態」です。したがって大きく価格が上がることはない。よって生産性は一定程度で落ち着き、決して高くはなりません。
生産力が十分な状態で生産性を高めようとすると、コストカットしかありません。よって人件費が削られて、回り回って需要が落ち込みます。
いわゆるデフレといわれる状態です。
日本にありがちな生産性の誤解
極論すると生産性向上とは「高くモノを売る」「モノを作るコストを下げる」のいずれかで達成されます。
例えば生産するモノの品質向上は、必ずしも生産性のアップではありません。品質が向上しても、高く売れるかどうか? は別問題です。
日本でありがちな生産性の誤解とは、「品質を上げる=生産性を向上させること」だと思っている点です。「品質を上げたら売上に結びつく」なら正解ですが、「品質を上げても売上は上がらず、コストや労力がかかっただけ」なら、むしろ「生産性のダウン」になります。
なぜ日本の労働生産性は低いのか?
報道や記事では「日本の労働生産性が低い! 生産性を向上させなければ!」と書かれます。書いている本人たちも、どうしたら生産性が向上するのか? 理解してないのではないでしょうか(笑)
日本の生産性が低くなるのは、じつは「当たり前」なんです。そして日本の生産性を、劇的に向上させる方法だって存在します。
日本の生産性が低い理由はデフレだから
生産性=アウトプット/インプットです。そしてアウトプットの付加価値は、価格のことです。価格の平均はインフレなら上がり、デフレなら下がります。
なぜなら
インフレ=需要>供給
デフレ=需要<供給
だからです。
日本は1998年から、ずっとデフレないしデフレギリギリです。価格の上限はありませんが、コストの下限は存在します。したがってコストダウンだけでは、生産性の向上には限界があります。
デフレなのに、生産性が全体的に向上するはずがないのです。むしろ低下するばかりでしょう。
ではデフレは誰の責任でしょうか? 経済学の常識では、デフレは政府の責任です。
日本の生産性を向上させたいなら、政府に「デフレをなんとかしろ!」とまずは求めるべきなのです。
日本が簡単に生産性向上する方法
日本の生産性が低いのはデフレだから、と上述しました。逆に言えばデフレさえ脱すれば、生産性は否が応でも向上します。日本人の個々人が、なんの努力をしなくてもです。
デフレ脱却に必要なのは、政府主導の積極財政と国土への投資です。つまり政府による需要創出です。ちなみに海外の先進国は、日本のような極端な緊縮財政はしてません。よって日本より、生産性が向上しているのです。
断言しますが、デフレを脱却せずに生産性だけが向上するなんてことは「ありえない」のです。理由は「物価下落以上の速度で、需要が下落するから」です。
そしてデフレ脱却は、積極財政以外ではほぼ可能性がありません。
よって積極財政をしない日本は、延々と「生産性が低い! 問題だ!」といい続けることになるでしょう。
まとめ 生産性と生産力の違い
マクロ視点で生産性の向上とは、インフレになれば結果的に起きる現象です。逆に言えば、インフレ以外の環境で、生産性の向上は起きません。
例えばA企業が劇的な生産性向上を成し遂げたとすると、その裏でB企業が割を食うというのがデフレです。トータルで見るとゼロかマイナスになるわけです。いわゆるシェア争い、パイの奪い合いが発生します。
生産力とは、我々の需要を満たす生産能力のことです。生産性云々に関わらず、生産力が減少すると大変だと直感できます。
例えば明日から、飲料用水道水の生産力が半減したらどうなりますか? と想像してみてください。
生産性と生産力では、どちらが大切でしょう。筆者は「生産力です」と断言します。そして「生産性を向上させても、必ずしも生産力が向上するわけではない」のです。
「生産性向上!」ばかり唱える記事、報道、政府、政治家等々。本当に大切な生産力を蔑ろにして、本当に日本は大丈夫なの? と心配になります。
彼らがことさら生産性を取り上げるのは、生産性の本質的な意味を「知らないから」かもしれません。
今回の記事は、先日の「格差と貧困の違い」と同様、ほとんどすべての国民?が誤解していると思われる点について述べた注目すべき記事だと思います。
本稿の主張の核心は
>生産物の価値は「需要と供給のバランス」で決定されます。
>生産性とは「高い利益が出るモノやサービス」を売ることで上がります。クソみたいな情報商材でも、売れれば「生産性が高い」ことになります。
>生産力とは「生活需要などを満たせる生産する能力」を指します。これは「生産したサービスやモノの付加価値」ではなく「生産したサービスやモノの量」で決まります。
であり、政界や財界をはじめ大手メディア、学者等の指導層はもちろんのこと、すべての国民が知るべきは以下の事。
>デフレなのに、生産性が全体的に向上するはずがないのです。デフレは誰の責任でしょうか? 経済学の常識では、デフレは政府の責任です。
>デフレ脱却に必要なのは、政府主導の積極財政と国土への投資です。つまり政府による需要創出です。
ところが、例えば先日の東洋経済のネット記事の論者のように、「180°完璧に的外れな言説」を流布するような視野狭窄&思考停止に陥り続けているインテリ愚民どもが後を絶たず、しかも大多数を占めている。もちろん、日経新聞を筆頭とする大手メディアの論調もこんな有様なので、一般国民の認識も変わりようはずもない。藤井さんや中野さん、三橋さんのようなごく少数の真っ当な論者の主張が世間一般に受け入れられる日はいつになるのか。。。
生産性って言葉とイメージが独り歩きしていて、誰も本質を掴んでないとかある意味でホラーな状況ですよね(笑)
しかしホラーな人たちは、自分たちがまさかホラーとは思っていないという。