またもや大阪都構想が、2020年11月に住民投票になる予定です。前回の住民投票は2015年でした。もう5年近く前ですから、内容を忘れている人も多いハズ。
むちゃくちゃわかりやすく、簡単に解説します。
またメリットやデメリットも、本稿でお伝えいたします。……大阪都構想にメリットはほとんど存在しませんが(汗)
大阪都構想とは?基本構造を知れば全部丸わかり!
大阪都構想の基本構造は「大阪市を解体して、4つの特別区に再編する」です。様々なややこしいことがいわれていますが、基本的にはこれだけです。
では「大阪市を解体して、4つの特別区に再編」した結果として、どのようなことがいわれているのでしょう。
大阪都構想が実現しても大阪都にならない
大阪都構想は「大阪市を解体する。特別区に再編する」だけです。特別区に再編したら、大阪都を名乗れるわけでもありません。「大阪都」の名称は、全く別の話なのです。
大阪都構想が実現したら大阪が豊かになる?
会社の部署を再編したら、会社の売上は増加しますか? 営業部を解体して、4つの課に再編すれば成績は上がるでしょうか? 全く同じ質問が、大阪都構想にもいえます。
二重行政が解消してコストが安くなる?
社長と部長の判断が異なることもあります。では部長は無駄なので廃して、社長と社員だけになれば効率的になって、コストも下がるでしょうか?
上記の場合、部長の仕事を社長か社員がしなければなりません。仕事量は減らないのです。
大阪都構想でも同じことがいえます。大阪市を廃止したからといって、大阪市がやっていた仕事がなくなるわけではありません。
大阪都構想のメリット・デメリット
大阪都構想のメリットといわれるものは「広域行政の一元化」「二重行政の廃止」「左記2つによる財政効果」の3つです。
残念ながらすべて、絵に描いた餅との解釈が真実性が高いでしょう。
広域行政の一元化と大阪市整備の問題
- 大阪市の地権関係は非常に複雑で、大阪市都市開発局のノウハウが必要
- 都市開発局も大阪市の廃止に伴い、当然廃止されるのでノウハウも失われる
- 大阪市開発については、むしろ大阪都構想後に遅滞する可能性が高い
府市間連携がうまく取れるように調整すればいい話で、大阪市を解体するのは非合理的です。
二重行政の廃止と仕事量の問題
大阪市を解体し、一部の予算と権限は大阪府に持っていかれます。残りの予算と権限で、4つの特別区が大阪市の仕事を引き継ぎます。
「いままで一箇所でしていた仕事を、4つの場所で分けて行う」と、効率は上がるでしょうか? 下がるでしょうか? 当然下がります。
一部の試算では「二重行政の解消でコストが下がるどころか、むしろ上がるのではないか?」とすらいわれています。
ちなみに大阪都構想の財政効果試算に異論 「1兆円も減らない」:朝日新聞デジタルによれば、10年間で1.1兆円(年間1100億円)の財政効果すら「非常に怪しい」そうです。
大阪都構想のデメリット
大阪都構想のメリットは、ほとんどが机上の空論や絵に描いた餅でした。しかしデメリットは、現実的な問題として考えられます。
- 大阪都構想をしても、経済的に豊かになるどころか凋落が加速する
- 政令指定都市から特別区に再編する非合理性
- 一度大阪市を解体すると、ほぼ二度ともとには戻れない不可逆性
上記3つが大きなデメリット、ないしデメリットのもとです。
大阪都構想では豊かにならない
会社の部署を再編してお売上が上がらないように、大阪市を解体して特別区に再編しても、大阪のGDPは上がりません。つまり豊かになりません。
それどころか政令指定都市の大阪市という成長エンジンが失われ、経済的ダメージを長期に渡って受け続ける恐れすらあります。
政令指定都市から特別区に再編する非合理性
政令指定都市とは、地方自治体の中で権限がトップクラスの形態です。都道府県と同様の権限を有しています。
逆に特別区とは、地方自治体でもっとも権限の少ない形態です。専門家によっては「特別区は半人前の自治体」とすら断言します。
大阪市民は自治の権限を取り上げられ、また予算も取り上げられる。これが大阪都構想です。
大阪市を一度解体すると、二度と戻れない
大阪市を解体して、特別区に再編するのが大阪都構想です。そして特別区は、半人前の権限しかありません。また4つに分割された特別区が、一丸となって大阪市再興運動ができるとも限りません。
様々なハードルが存在するため、大阪市を一度解体すれば二度ともとに戻らない可能性は非常に高い。「やってみてダメだったら、戻せばいい」は通用しません。
大阪万博との兼ね合いは大丈夫なの?
大阪市を解体して再編する……。大阪都構想が実現すると、相当なマンパワーが必要です。ところが2025年に大阪万博も予定されています。こちらもマンパワーが必要です。
果たして大阪都構想と、大阪万博を同時に準備することは可能なのでしょうか?
大阪都構想をめぐる現在の情勢と2020年住民投票
大阪都構想はどうやら、2020年11月に住民投票となりそうです。2015年5月17日の住民投票で、大阪都構想は否決されました。その前にも1度、議会で否決されているのです。詳しくは以下の記事でどうぞ。
すでに大阪都構想は「大阪維新のアイデンティティを保つための政策」以外の意味はありません。その証拠に、大阪都構想が持ち上がってから10年以上になりますが、他の都道府県や政令指定都市で「二重行政の解消! 我々も都にしよう!」という動きはありませんでしょ?
この事実自体が、大阪都構想がいかにバカバカしい空っぽな政策か? を示しています。
今回、大阪の公明党が賛成に回ったのも、極めて政治的な判断です。大阪で強い大阪維新に、公明党の選挙区で候補を出されると負ける恐れがあるからです。
また2019年4月の大阪ダブル選で、大阪維新が圧勝したのも大きいでしょう。
大阪都構想は結局、大阪人が望んでいる
大阪都構想の内容は空っぽで、政策パフォーマンスとして派手なだけです。しかしそれを、大阪人自身が望んでいるフシがあります。そう捉えなければ、2019年4月のダブル選での大阪維新の圧勝は説明が付きません。
大阪は確かに、少しずつ凋落しています。しかし大阪都構想は、凋落を早めることはあっても遅くすることはありません。が……ジリ貧の状況で「パーッとド派手にいって、結末にたどり着きたい(結果が最悪であろうとも)」というのが人間の心理です。
さて2020年。どうなる? 大阪。