Job Guarantee Program(JGP)って何?
ベーシック・インカムのような労働なき所得再分配の限界 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズムにて、やすさんが以下のようにコメントされておられました。
job Guarantee Programを調べてみたんですが、
政府が賃金支払基金(これの元手に関わる議論がMMTのミソ)を作り、日本で言うならば地方自治体がその地域のニーズを鑑みて必要な業務をリストアップして、失業者を雇用してその業務を担わせる。
まぁ失業者対策ですよね。
仰られている
>現実の推移を見る限り、科学技術による自動化が進行するより前に、労働待遇が低下するという形で、雇用がキープされるというのが実情だと思われる。
と仰られていますが、
job Guarantee Programの効果の中には、
賃金低下を抑制する機能がある、なぜなら、人々は低賃金な職場では働かずをjob Guarantee Program頼るから、というものがあったと思います。
つまり、job Guarantee Programが民間企業が競合するような事態になると思いますが、それでもベーシックインカムのような所得分配よりもjob Guarantee Programのような労働としての所得分配の方が実現可能だと思われるのでしょうか。
やす2019-03-04 10:12:03
筆者の望月夜さんに対する質問だと思いますので、私が回答するのも違いますし、ならブログでこの「job Guarantee Program」を扱ってみよう、と思った次第です。
※本稿はやすさんの質問に、回答するものではありませんのでご注意ください。
Job Guarantee Programとは日本語で「雇用保障プログラム」と訳せると思います。1つ重要なのはJGP(雇用保障プログラム)は提案であり、どうやらアメリカでも現代貨幣理論とJGPは分けて語られる事が多いのだそうです。
JGP(雇用保障プログラムと以下表記、英語は苦手(笑))の概要は、上記で引用したやすさんのコメント内容そのまんまです。
ざっと私の理解で説明しますと、通貨は(統合)政府がいくらでも発行できる(万年筆マネー)のだから、予算がどうのこうの、財源がどうのこうのという議論は必要ありません。
雇用保障プログラムは最低賃金水準で失業者を雇用する、という発想だそうでして、これは政府や自治体が雇用するわけです。
一般的に語られるものとしては、「民間企業の供給がないか、足りない部分に労働者を割り振る」のだそうです。どのような分野に? ちょっと考えてみたのですが、ボランティアと呼ばれる分野などなら、可能なのでは? とも思えます。
雇用保障プログラム(job Guarantee Program)は社会にどう作用するのか?
いくつか羅列的に、思いつくものを書き出してみたいと思います。
- 失業率は常に最小になる――景気の悪いときには、雇用保障プログラムが働き、景気の良いときには雇用保障プログラムに頼らなくてすむ
- 雇用保険や失業保険業務も小さくなる――なぜなら失業期間がほどんどなくなるから
- 失業での精神的ショックが和らぐ――労働は社会との関わりという、社交的関係を持つ
- 1.との関係で、スタビライザー機能が働き、景気調整が可能かもしれない
- ブラック企業を駆逐できる――長時間労働&低賃金だったら、雇用保障プログラムに移るインセンティブが生まれる
それぞれの補足をしていきます。
1.は、雇用保障プログラムが「失業したら、政府が最低賃金水準でいくらでも雇う」ので、つまり「(民間企業の)失業率が高いと政府支出が増大し、失業率が低いと政府支出は減少する」ことになるはずです。
したがって4.の景気調整機能も果たすはずです。
2.は失業したら雇用保障プログラムに頼れるので、必然的に失業保険などの政府業務の縮小になるでしょう。あまり重要なポイントではないかも知れません。
3.がかなり重要と考えてまして、労働とは人間が社会と交わる大きな要素の1つです。失業してショックを受けるのは、所得がなくなるということもありますが、それ以上に「社会から評価されていない」という疎外感、ショックが大きいのではないか? と思います。
また労働が継続されることで、労働ノウハウが劣化することも避けられます。
5.のブラック企業の駆逐は、良いことなのではないでしょうか。政府が労働環境の手本を見せることで、それ以下の労働環境の企業は不利になります。
ベーシック・インカムと雇用保障プログラム(job Guarantee Program)の比較
ベーシック・インカムの論点については、ベーシックインカム議論のポイント-通貨・技術・労働の意味をご覧ください。
端的にベーシック・インカムの議論は3種類ある、ということだけこの場では提示します。
- 社会福祉(年金、雇用保険、健康保険etc)を一元化して、ベーシックインカムとして給付する議論(社会福祉の現金化と一元化タイプ)
- 負の所得税として、低所得層に現金を給付する議論(貧困層補助タイプ)
- 社会福祉とは別に、積極財政として給付する議論(積極財政タイプ)
この中で、雇用保障プログラムと比較できるのは2.と3.でしょう。3.の議論はベーシック・インカム議論において傍流であり、ほとんど議論されることはないので、主流の2.との比較をしてみます。
1つ最重要なのは、ベーシック・インカム議論とはもともとを、新自由主義に端を発しているということです。つまり1.が議論の最有力であり、2.は近年出てきた議論なのだと存じます。
負の所得税とは例えば「年収200万円以下なら、給付が月々いくら」というような議論です。この議論の難しいところは、企業に労働者所得を下げるインセンティブが与えられるところです。
「所得が低くても政府から給付があるのだから、所得を抑えるほうが得」なのです。
このインセンティブは、大量の貧困層を生み出しかねません。これは積極財政タイプの3.にしても同様です。政府支出が増えるぶん、企業が給料を減らすということが懸念されます。
雇用保障プログラムの場合、政府が労働者を最低賃金水準で雇うので、政府に民間企業が労働環境として競合する、という利点があります。(政府は民間企業と競合しません。一方的に、民間企業が政府と競合するだけです)
ここがベーシック・インカムと雇用保障プログラムの、最大の違いでしょう。
ちなみに雇用保障プログラムで、現在の大阪府の最低賃金で年収を出してみました。年間休日120日(平均)、年間労働日245日、一日8時間労働ということで、時給が最低賃金の936円だった場合です。おおよそ183万円が年収になるようです。月収で15万円強です。
なんとか、人間1人が食いつないでいくには足りそうです。余裕がある、とは言えませんが。
個人的な雇用保障プログラム(job Guarantee Program)への感想
現在、私は自営業です。大して景気はよくありません(笑)先日、15周年を迎えました。我ながらびっくりしております。
そんな零細自営業の私ですが、仮に雇用保障プログラムがあったら、かなり安心できるのは間違いありません。自営業なんて、いつ失業してもおかしくありませんから。
ベーシック・インカムは積極財政タイプにしろ、貧困層補助タイプにしろ、おおよそ数万円~10万円ほどの額で議論されます。
仮に私の例(大阪市、39歳独身)で生活保護+ベーシック・インカムとすると、生活保護12万円弱+ベーシック・インカムとなり、BI額が10万円では計22万円で「多すぎる(国民感情的に)」でしょうし、貧困層補助タイプとしては数万円が、既存の社会保障制度との組み合わせでは限界でしょう。
もっとも、どのように制度設計するのか? によって、議論が変わってくる点はご注意ください。
このように比較していくと、雇用保障プログラムはなかなか有力な政策提案ではないか? と思います。
最後に実現性について、政治学的にお話します。
基本的に現在の日本は緊縮財政・全体主義ですので、そもそも積極財政はまだしも、ベーシック・インカムや雇用保障プログラムが実現する可能性は、現在の環境では「殆どない」が現実です。積極財政にすら20年以上も舵を切れないでいるのに、実現すると思うほうがどうにかしてます。
しかしあくまでこれは「現在は」の話です。経路が転換されるかも知れませんし、その経路の転換は、こういった議論が広まるからこそ可能になるのかも知れません。
現段階ではあくまで1つの「政策提案」であり、それはベーシック・インカムも同様でしょう。
現段階としては、雇用保障プログラム(job Guarantee Program)やベーシック・インカムといった議論を通して、国債や通貨や国家経済といったマクロなものへの理解が広まることが、大切なのかも知れません。
負の所得税とベーシックインカムは話が別じゃあ無いですかね?jgpは仕事あぶれた方を最低賃金で働けと言うものみたいですが仕事を用意するのと管理に多大な税金を使いそう下手すると雇用保険ずっと払ってくににメリットが無いって事にはなりませんか?
負の所得税は、ベーシックインカム議論の1つですよ。紛れもなく。
あと、せめてコメントを読ませたいと思うのなら、改行や句読点を使用してください。読みにくいです。
社会保障一本化についての話ですが年金問題と生活保護の将来的な話を組み込まず考えるのはベーシックインカムを現実に考えるのは無理があるかと高齢者社会になった時に現状の年金を払い続けるのは無理があり現状の年金額でも暮らして行くのが無理な事を考えて頂き生活出来ない人今増えてる未婚子供なしの方が行き着く先は生活保護かその他は自殺、犯罪、浮浪者、まぁ他にもあるかとは思いますが、ベーシックは所得などは不問で国民全員に払われる制度なので子供にも一定額(親が子供を養える)貰えるので少子化が軽減される可能性があります、一本化のメリットに手続きを減らす事もあるので公務員その他下請け等を減らすことにも繋がります、財源も年金、生活保護、厚生年金、子供手当て、書ききれない程ありそこで払われるお金と公務員、下請け、その他手続きのお金と増税で賄いぎりぎり生活出来る程度(老人がホームに入れる)位は必要かと
えと……名無しさんの考え方は「税金から政府支出される」ですよね。
私は現代貨幣理論(MMT)の前提から「政府支出は、税金に制約されない」です。
※当ブログでMMTで検索して、お読みください。
したがって「公務員や政府をスリム化しなくてOK」です。
年金、生活保護、健康保険などのニーズのある社会保障は、むしろ予算制約はインフレ率のみですので、拡充したほうが良いと考えてます。
逆にBIで公務員削減=需要減=デフレ圧力を、今の日本でやるのは大反対です(笑)
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