ベーシックインカム議論のポイント-通貨・技術・労働の意味


ベーシックインカムとはなにか?

 ベーシックインカムという議論があります。一般的には国民が誰でも、政府から給付を受けられるというイメージで語られる議論ですが、3種類定義できることはあまり知られていません。

  1. 社会福祉(年金、雇用保険、健康保険etc)を一元化して、ベーシックインカムとして給付する議論(社会福祉の現金化と一元化タイプ)
  2. 負の所得税として、低所得層に現金を給付する議論(貧困層補助タイプ)
  3. 社会福祉とは別に、積極財政として給付する議論(積極財政タイプ)

 基本的にベーシックインカムの議論は1.と2.の議論を指し、3.の議論は日本ではあまりなされません。なぜか? ベーシックインカムという議論自体は、新自由主義経済学のフリードリヒ・リストに端を発しているからです。

 歴史としてはイギリスにおける貧困補助制度、スピーナムランド法が発端ともいわれますが、この頃のイギリスは極めて新自由主義的であり、やはり新自由主義に端を発した議論であろうと解釈できます。

社会福祉の一元化タイプの議論は論外

 もともとベーシックインカムは新自由主義から派生している、と指摘しました。なかでも「社会福祉の一元化としてのベーシックインカム」は最悪のベーシックインカムと言えるでしょう。

 今までは年金、雇用保険、健康保険etc……といったきめ細やかなニーズに答えることをやめ、予算の付替えで現金化して支払い、あとはどうなっても自己責任というのがこのタイプの特徴です。

 このタイプの根底にあるのは、新自由主義的な効率化であり、小さな政府です。現金で一元化すれば手間が省けて、効率化され、政府がより小さくなるじゃないか! という話です。しかも予算は付け替えなので、財政出動にもならないのです。

貧困層補助と積極財政のタイプは検討の価値があるか?

 貧困層補助の負の所得税タイプ、もしくは積極財政タイプは検討の価値があるのでしょうか? まずは議論の論点をまとめます。

  1. 景気の調整機能(スタビライザー)として働くか?
  2. 本当に技術(AIなど)が進むと、人間の労働は小さくなっていくのか?
  3. 労働の価値とはなにか?
  4. 現行制度(生活保護など)で対応はできないのか?
  5. 金さえあればより自由に生きられる、は本当か?

 それぞれに分けて論じていきましょう。

景気の調整機能(スタビライザー)として働くか?

 ベーシックインカムとは「半永久的に、その金額を支給する」と考えられますから、国民一律にいくらというタイプ、つまり積極財政タイプでは景気の調整弁は果たせないと考えられます。

 逆に貧困層補助タイプであれば、一定の景気の調整弁を担うことが可能でしょう。私は制度として税制や給付金制度などを設計する場合、景気の調整弁としての機能は埋め込んでおくべきだと考えます。これをビルトイン・スタビライザーなどと言うようです。

本当に技術(AIなど)が進むと、人間の労働は小さくなっていくのか?

 かつてケインズは「将来には生産能力が上がり、人はもっと少ない労働時間になっているだろう」と主張しましたが、残念ながら現在のところそうなっていません。

 マスメディアや有識者たちはAIを取り上げて、「人間の労働需要はどんどん減っていく」と説きますが、私はこれに懐疑的です。かつてWEB2.0という言葉が流行りましたが、私からいわせれば昔からある技術にハード(PCやスマホ)が耐えられるようになっただけです。

 AIも同様なのではないか? といいますか、プログラムは基本的にインプット、処理、アウトプットで成り立ちます。将棋、チェスなどの”決められたルール”ではディープ・ラーニングは力を発揮しますが、複雑な人間社会の労働についていけるAIが開発されるかどうか? そこまでのことが出来るのかどうか? については「無理くね?」と思っています。

 「労働の少ない未来が来るのだから、それに備えてベーシックインカム!」という議論がありますが、それはそうなってからでいいんじゃないでしょうか? 少なくとも、まだ見ぬ未来に夢を見て、現行制度を変えようという議論には賛成できません。

労働の価値とはなにか?

 労働とは一般的には、何かの財やサービスを生産することと定義されます。確かにこの定義は正しいのですが、多くの人が労働や活動を通して、社会を関わりを持つという意味を無視するべきではありません。

 よく定年退職した途端に、気力がなくなりボケたという話を聞きますが、これは社会との関わりが少なくなってしまったからではないか? と思います。

 社会と関わるのは人間の本能的にして、本質的な欲求かと思います。労働の価値とは生産以外に、社会と関わるという人間的な意味もあるのです。

現行制度(生活保護など)で対応はできないのか?

 貧困層補助的なタイプは、現行制度では対応できないのでしょうか? 確かに負の所得税という制度はありませんが、消費税の廃止や低所得層への税率の軽減などは無理なのでしょうか。

 負の所得税議論では一般的に、低所得層や貧困層に3~8万円/月を給付する、という議論が一般的かと思います。

 例えば年収200万円の例を上げれば、所得税率が10%、消費税率が8%です。ざっとした計算ですが、おおよそ納税で30万円ほどが必要になるはずです。その他にも健康保険の軽減なども含めれば数万円/月の負担軽減は可能ではないか? と思います。

 給付よりまず、税制について議論するのが筋の良い議論のように思えます。

金さえあればより自由に生きられる、は本当か?

 先程、労働の価値のところで書きましたが、お金があっても社会的な労働や活動ができなければ、自由ではあっても豊かな人生とは言えないと思います。

 私は自営業者ですので、「お金なんて必要ない!」と申し上げるわけではありません。すごく重要です。しかし「お金のみで幸せになれるか?」と聞かれると、それはそれで疑問がわきます。

 自由も人生を豊かにする、1つの要素にしか過ぎませんし、お金もそうではないでしょうか? むしろ仮に、ベーシックインカムで国民全員が、最低限度の生活が出来るとすると、原子論的個人を生み出してしまうのでは? と思います。

 国家の方向性としては、労働環境を整える、労働機会が与えられる国家が健全ではないか? と思っております。

ベーシックインカムのまとめ

 ベーシックインカムの種類は、おおよそ下記の3種類に大別される。

  1. 社会福祉(年金、雇用保険、健康保険etc)を一元化して、ベーシックインカムとして給付する議論(社会福祉の現金化と一元化タイプ)
  2. 負の所得税として、低所得層に現金を給付する議論(貧困層補助タイプ)
  3. 社会福祉とは別に、積極財政として給付する議論(積極財政タイプ)

 ベーシックインカム議論では、以下のような論点が存在する。

  1. 景気の調整機能(スタビライザー)として働くか?
  2. 本当に技術(AIなど)が進むと、人間の労働は小さくなっていくのか?
  3. 労働の価値とはなにか?
  4. 現行制度(生活保護など)で対応はできないのか?
  5. 金さえあればより自由に生きられる、は本当か?

 私は過去に「安全保障型ベーシックインカム(ケインズ的ベーシックインカム議論-社会保障と安全保障-)」という記事を書いたことがあります。これはアメリカのフードスタンプを衣食住に適用させ、その範囲を国産に限るというものです。住居、服、食べ物に対して配給券を、申し込んできた低所得層や中間層に支給するというもの。

 ……まあ、これはもはや「ベーシックインカム」ではなく、配給制度と言ったほうが良いかも知れませんが(笑)

 ベーシックインカム議論のポイントと論点を解説差し上げました。参考になりましたら幸いです。

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阿吽

スレチになってしまい大変恐縮です。

それに、本当に、余計なことかとは存じます。

しかし、これを書いておきたい気持ちがあります。

大変、申し訳ありません。

失礼を承知で、それでもこれを書いておきたいのです。

すみません。

.
 ヤンさん、もう、進撃の管理人、辞めちゃったらどうです・・?

.
.

阿吽

>うーん……そもそも別に管理人という地位にこだわりがあるわけでもないのですが、進撃の庶民の運動の価値と、それを支えることは必要だと思うのです。
>私的な感情と、公としての公徳では公徳を取らないといけないみたいでして(笑)

 そこまで言われるのなら・・、わかりました。

私は、私の思いではなく、ヤンさんの進撃への思いを尊重致します。

ヤンさん、申し訳ありませんでした。


 でしたら、あの人物をヤンさんの判断でアク禁にすべきです。

ヤンさんが、もし、進撃を思われるのなら・・、あの人物は、アク禁に処すべき人物です。

もちろん、これはMMT論争の正否だとかは一切合切関係がありません。

そのうえで、言っているのです。

影法師さんや、みぬささんの判断等も、関係がありません。

ほかの人が判断をしないのなら、進撃を守るためには、ヤンさんが判断をするしかないのです。

進撃を、ヤンさんが思われるのなら・・、あれは、アク禁に処すべき人物です。

「そうは(ジータ氏をアク禁に処すべきとは)思わない」・・という人物がいるのなら、その人物は進撃を去れば良いと思います。

そいつは、わたしが思うに・・、人間を見る目が無い、人間ですので・・。


それがもっとも、進撃のために(つまりは、ヤンさんの進撃を尊重する気持ちのために)なる行動かと、私個人は思います。

進撃の為ということをヤンさんが思われるのなら・・、あの人物は、アク禁にすべきです。


もちろん、判断はヤンさんがすることです。

私としては、どちらでも、本当にかまいません。

なぜなら、私は、ヤンさんの記事が好きだから、ヤンさんの記事を読んでいるのです。

あとは、ヤンさんの記事が、一番現状、知的な刺激を、私が個人的に受けているからです。

それは、どちらの結果でも、変わらないことです。

ただ、アク禁に処すことをせず、これ以降もヤンさんが、ジータ氏によって嫌な思いをしているのを見ていなければならないのは・・、これは、心苦しいことですが・・・。

(ちなみに、リブログとかもジータ氏によってされるかもしれませんが・・、アク禁に処す場合は、それも相手などはしてはいけません。即刻、リブログも外すべきかと個人的には思います。)
(アク禁にする判断をもしされるのなら、それは、徹底的にすべきです)

阿吽

私としては、今回のヤンさんの判断を尊重させて頂きます。

もろもろ、もうしわけ、ありません。

もうしわけありませんでした。


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