最近、あまり使われなくなってきた「失われた20年」という言葉。失われた20年は今も続いているのか、それとももう終わったのかすら定かではありません。
失われた30年になってから、あまりフォーカスされなくなりました。くわえて、安倍政権で経済成長したとのイメージも手伝っているのでしょう。
しかし、未だに日本は失われた20年――ないし30年を抜け出していません。事実関係や、失われた20年の何が問題でどうすれば解決するのかお伝えします。
失われた20年とは
日本の長期経済停滞を指して失われた20年と呼びます。失われた20年はいつから、どのように始まったのか見ていきましょう。
時期
失われた20年の始まりは1991年のバブル崩壊です。バブル崩壊から経済停滞が始まり、最初は失われた10年と呼ばれました。2000年半ばからは失われた20年と呼ばれ始め、今では失われた30年と呼ばれることもあります。
原因
失われた20年が始まった直接の原因は、1991年のバブル崩壊です。バブル崩壊の影響で不良債権処理に追われ、日本経済は長期停滞のトンネルをくぐることとなりました。
じつは、日本経済は失われたと言いつつも、1997年までは徐々に成長していました。
1997年に消費増税がなされ、1998年に日本はデフレに突入します。本格的な長期経済停滞は1998年から始まりました。
2021年現在まで日本はデフレないしディスインフレの状態です。ディスインフレとはぎりぎりデフレではない状態のことです。
未だに日本はデフレから抜け出せず、失われた20年は30年になりました。
大きな事件
失われた20年の間の大きな事件についても振り返っておきましょう。
- 1997年の消費増税
- 2000年代初頭の小泉構造改革
- 2008年のリーマンショック
- 2011年の東日本大震災
- 2020年のコロナ禍
もっとも大きなインパクトは1997年の消費増税です。日本が本格的にデフレに突入した事件でした。
2000年代初頭の小泉構造改革は格差拡大を進めました。
2000年代中盤には世界経済の好調でやや持ち直しますが、2008年のリーマンショックで崩れ去ります。
追い打ちをかけるように2011年、東日本大震災によってさらなるダメージを受けます。
2012年末に安倍政権が誕生します。リーマンショックから自律的回復と世界経済の好調によって日本経済も持ち直します。一連の経済政策、状況はアベノミクスと称されました。
しかし、1997年の名目GDPが534兆円、2020年の名目GDPは526兆円です。日本は全くデフレや長期経済停滞から抜け出せていません。
すでに失われた20年は30年を迎えました。このままでは、失われた40年となり半世紀となるでしょう。
失われた20年の構造的要因
失われた20年の構造的な要因はデフレに尽きます。
デフレとは需要<供給の状態です。需要不足の状態をデフレと呼びます。
デフレでは積極財政・雇用などの規制の強化・保護貿易が求められます。需要を手厚く保護し、政府支出によって需要創出を行う必要があります。
しかし、日本は消極財政・規制緩和・自由貿易を推し進めてきました。すべてデフレ圧力を増加させ、デフレを深刻化させる政策ばかりです。
当然、デフレを抜け出せるはずがありません。
1998年から四半世紀近く、日本はデフレに苦しんでいます。上記のように政策を間違い続けたからです。
失われた20年は何が問題か
経済停滞はさまざまな問題を引き起こします。その問題の一端を紹介します。
国力と安全保障が低下する
国力とは相対的なものです。上記の図の通り日本だけが経済成長していません。世界の先進国は21世紀に入ってから最低でも1.5倍程度のGDPを達成しました。
日本だけは約1.0倍です。
国力の差がつけば安全保障も覚束なくなります。例えば、中国のGDPは2020年で16兆ドルを達成しました。日本のGDPはドル換算で4.9兆ドルです。
中国に対して日本の安全保障は脅かされる事態になっています。
国民が貧困化している
国力の相対的な下落は国民の貧困化と同義です。くわえて、デフレは国民の所得を下落させます。
上記は労働者の平均所得です。1997年(平成9年)をピークにどんどん下落しています。2015年の平均所得はピーク時に比べて40万円ほど下がっています。
デフレは物価下落以上の速度で国民の所得を下落させます。
生産性が向上しない
生産性とは需要の多少で決まります。生産性は「生産性=付加価値/労働量」で測られます。分子の付加価値は需要によって決定されます。
例えば、全く需要のない製品をいくら作っても付加価値ゼロです。逆に、コロナ禍のマスクのように需要があれば値段も高騰し、付加価値が急増します。
デフレとは需要<供給の状態です。需要が少ないのに生産性が上がるわけがありません。日本の労働生産性が低いのはデフレが原因です。
所得下落で少子高齢化がより進む
所得の下落は将来への不安を呼びます。多くの国民が節約志向になり、お金のかかることを避けようとします。
若者の○○離れと言われますが、これらも節約志向に陥るからです。お金のかかるデートや結婚、子育ても避けられるようになり、より少子化や晩婚化が進行します。
失われた20年の解決方法
失われた20年の解決法は存在します。失われた20年と反対の経済政策をすればいいだけです。労働者保護などの規制強化や、政府支出による需要創出を行う積極財政を行えばデフレは脱却できます。期間は数年間もあれば十分でしょう。
このような解決法を示すと必ず、「日本は積極財政をしてきた」という反論があります。この反論は嘘です。日本は1998年のデフレ突入から2度しか積極財政をしていません。小沢内閣と麻生内閣です。
小渕内閣、麻生内閣ともに世論に支持されませんでした。どちらも短期に終わっています。
日本の世論が消極財政や規制緩和、各種改革を支持し続けてきました。世論こそがデフレを深刻化させてきたのです。
失われた20年で難しいのは「解決法を提示すること」ではなく「解決法の実行」です。安倍内閣も消極財政でしたが、支持率はおおよそ過半以上でした。
世論は消極財政を支持しているのです。
失われた20年を解決するためには、世論を変えなければなりません。
まとめ
失われた20年は1991年のバブル崩壊から始まりました。本格的に始まったのは1997年の消費増税後、1998年のデフレ突入からです。
日本はデフレ脱却と銘打って規制緩和・構造改革・消極財政を実行しました。これらの政策は当たり前ですがデフレを深刻化させ長引かせました。
日本の経済政策は間違い続けたのです。
今も日本の経済政策は間違い続けています。間違い続ける限り、失われた20年は30年、40年、半世紀と延びていくでしょう。
積極財政の世論が、失われた20年を終わらせるためには必要です。