真説!資本主義とは何か?社会主義も資本主義の一種

 資本主義の対義語は社会主義や共産主義だと説明されます。資本主義と社会主義は対立概念として描かれ、信じられています。資本主義と社会主義は両立しないかのように語られます。

 けれども、社会主義は資本主義の一種です。一般的に信じられている「社会主義vs資本主義」という構図は成り立ちません。
 この衝撃の結論について、どうしてそうなるのか? 資本主義を定義するところから解説します。

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資本主義とは

 資本主義は一般的に「資本家が労働力を買って生産し、付加価値をつけて利潤を得る経済形態」「自由市場、自由な経済形態」などと説明されます。

 では、資本主義以前は資本家がおらず、労働力は購入されなかったのか? そんなことはありませんよね。商人も地主もある意味、資本家です。
 後者についても、もし自由市場が資本主義だとすると、織田信長の楽市楽座も資本主義に分類されてしまいます。

 従来の資本主義の定義はとても曖昧で抽象的です。まず、資本とは何かから定義していきましょう。

資本とは何か

 資本とは英語で「capital(キャピタル)」と書きます。元金、資金という意味です。資本は「事業をするのに必要な基金」と定義されます。
 要するに、事業のために使うお金が資本です。

 お金とは何でしょうか? 2019年、日本に上陸した現代貨幣理論(MMT)は貨幣を再定義しました。これまで貨幣は主流派経済学で定義されていませんでした。

 貨幣が再定義されれば資本も再定義されます。したがって、資本主義も再定義されます。

 現代貨幣理論(MMT)によれば貨幣=負債です。誰かがお金を借りると貨幣が創造されます。この現象を信用創造と呼びます。
 詳しくは以下の記事で紹介する書籍でどうぞ。

 貨幣=負債だとすると、資本主義とは負債主義とも言い換えられます。貨幣=負債なら、資本=負債が成り立つからです。

資本主義の歴史

 資本主義はイギリスの産業革命から始まりました。どうして産業革命はイギリスからだったのでしょうか。オランダやポルトガル、中国、フランスなどではなかったのでしょうか。
 答えは、イギリスが最初に中央銀行制度を成立させたからです。

 中央銀行制度を成立させたイギリスは、自国通貨建て国債を大量に発行できました。言い換えれば、大量の信用創造を起こして貨幣を流通させました。
 大量の貨幣は事業の資本となります。

 産業革命が起こったのは中央銀行制度の成立が原因でした。中央銀行制度によって、大量の貨幣=負債を発行できるようになり産業革命が起きたのです。

 産業革命当時、イギリスでは労働法が未整備でした。資本家は労働者を低賃金で長時間、働かせました。そんなことをすれば社会は疲弊します。
 疲弊した社会を見て、一部の人たちが提唱したのが共産主義や社会主義です。

 共産主義や社会主義は資本主義から生まれました。

資本主義の定義

 イギリスの産業革命からわかるとおり、資本主義には中央銀行制度が必要不可欠です。中央銀行制度こそが資本主義の要です。
 資本主義以前と以降で異なるのは、中央銀行制度があるかどうかです。

 資本主義の定義とは、中央銀行制度のある経済形態です。近代貨幣制度のある国家形態、と言い換えることもできます。
 もしくは、中央銀行制度によって負債を拡大することで経済成長し続ける経済形態です。

新自由主義とは

 新自由主義とは小さな政府を目指し、市場競争を重視する経済思想です。

 一般的な資本主義のイメージは新自由主義のことです。「自由な市場」「自由貿易」「富の偏在」「自由競争」などはすべて新自由主義の考え方です。

 マルクス的な資本主義観「資本家が労働者を使い――」というのも、新自由主義の完全自由市場や競争原理から発生します。
 マルクスが共産主義を提唱したとき、イギリスはレッセ・フェール(なすに任せよ)という古典的な経済自由主義でした。
 マルクスの見た資本主義とは、新自由主義に極めて近いものだったのです。

 だから、資本主義=新自由主義という勘違いが起きたのです。

社会主義とは

 イギリスで資本主義が発生した後、社会主義は提唱されました。共産主義で有名なカール・マルクスは当初、社会主義と共産主義を混同して使用していました。
 当時、厳密な違いはなかったのです。

 社会主義とは新自由主義の弊害を修正しようとする運動です。格差や富の偏在、市場原理による弱肉強食などの是正を求める運動が社会主義です。
 つまり、行き過ぎた自由競争の是正が社会主義です。

 社会主義のもっとも極端なものが共産主義です。共産主義では私有財産を認めません。私有財産とは民間の資本、生産設備などのことです。
 完全な自由競争の否定が共産主義です。

 修正資本主義や公益資本主義も社会主義の一種です。
 社会主義とは新自由主義へのアンチテーゼ、反発と言えます。

資本主義と社会主義の関係性

 資本主義とは中央銀行制度のある経済形態です。中央銀行制度がありましたので、旧ソ連も厳密には資本主義に分類されます。

 社会主義とは新自由主義へのアンチテーゼです。新自由主義とは自由競争であり、自由競争の完全拒否が共産主義です。資本主義かどうかではなく、自由競争への肯定・否定の度合いが各経済主義を規定しています。

 資本主義とは近代貨幣制度を持つ近代国家すべてを包摂します。資本主義の一種として新自由主義、社会主義、共産主義などが存在します。

 共産主義と新自由主義の違いは、資本を国家が持つか民間が持つかの違いです。言い換えれば統制経済か自由経済かの違いが、共産主義と新自由主義の違いです。
 社会主義はその中間になります。

資本主義のバリエーション-新自由主義・社会主義・共産主義

資本主義のバリエーション-新自由主義・社会主義・共産主義

 わかりやすく図にしてみました。

 余談ですが、上記の図に縦軸を入れるなら「進歩主義」「保守主義」でしょうか。新自由主義や共産主義は進歩主義、社会主義は進歩主義から保守主義までカバーします。
 保守主義と共産主義が両立しないように、保守主義と新自由主義も両立しないのです。

資本主義と民主主義

 最後に資本主義と民主主義の関係性も解説します。

 一般的なイメージでは資本主義=新自由主義でした。したがって、資本主義には自由が必要だと思われていました。
 本稿で解説したように、資本主義の要諦は中央銀行制度です。資本主義に自由は必ずしも必要ではありません

 東西冷戦は資本主義(民主主義)vs共産主義(専制主義)の戦いとして描かれます。だから、資本主義=民主主義とイメージされました。
 しかし、本当は自由経済(民主主義)vs統制経済(専制主義)の戦いだったのです。

 自由経済をイメージする言葉として資本主義が使用され、資本主義=民主主義と考えられてきました。要するに、自由経済=民主主義と考えられたのです。

 近年、一党独裁体制である中国の台頭がめざましいです。中国は自由経済+専制主義を採用しています。必ずしも自由経済は民主主義を必要としないと証明されました。

 資本主義と民主主義の間には何の関係もなかったのです。
 資本主義だから民主主義になると考えるのは二重の意味で間違いです。1つは、資本主義ではなく自由経済だということ。もう1つは、自由経済は必ずしも民主主義を必要としないこと。

 つまり、資本主義と民主主義の間に因果関係は存在しません。

まとめ

 政治や経済を勉強し始めた頃、資本主義や社会主義がうまく整理できずモヤモヤとしていました。資本主義とは何か? その定義すらまとまりませんでした。

 現在はようやく資本主義や社会主義、共産主義、新自由主義などの関係性がしっかりとまとまり、今回の記事となりました。

 資本主義とは中央銀行制度がある国家形態であり、社会主義とは新自由主義へのアンチテーゼです。資本主義の中で自由経済が新自由主義、統制経済が共産主義です。
 こういった位置づけを理解しておくと、思考がより整理しやすくなります。

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