就職氷河期やロスジェネという言葉はメジャーです。多くの人が聞いたことがあるでしょう。しかし実際に就職氷河期がいつからいつまでなのか、知っているのは少数です。
今回の記事では就職氷河期の時期と原因について解説します。就職氷河期は過去に二度ありました。1991年~2020年の間、じつに19年間が就職氷河期でした。
この恐るべき事実も含めてお伝えします。
就職氷河期とは
まず就職氷河期の定義をしておきます。就職氷河期とは有効求人倍率が1を切る時期です。
有効求人倍率とは、1人あたり何件の求人があるかを表した数値です。例えば100人に対して求人が200件あるなら、有効求人倍率は2となります。
有効求人倍率=有効求人数/有効求職者数
有効求人倍率が1を切ると、どれだけ最適化しても求職者にあまりが出ます。この状態を就職氷河期と呼びます。
第一就職氷河期(1993年~2005年)
第一就職氷河期は1993年~2005年の13年間です。1993年から有効求人倍率は1を割り込み、特に1998年には0.5と最悪の状況になりました。
2002年に始まった世界同時好景気の影響が日本にも及び、2004年から回復が始まります。2005年を境に第一の就職氷河期は終わりを告げます。
一般的に就職氷河期と呼ばれるのは、1993年~2005年のことです。
1992年(平成4年) | 1.08 |
1993年(平成5年) | 0.76 |
1994年(平成6年) | 0.64 |
1995年(平成7年) | 0.63 |
1996年(平成8年) | 0.70 |
1997年(平成9年) | 0.72 |
1998年(平成10年) | 0.53 |
1999年(平成11年) | 0.48 |
2000年(平成12年) | 0.59 |
2001年(平成13年) | 0.59 |
2002年(平成14年) | 0.54 |
2003年(平成15年) | 0.64 |
2004年(平成16年) | 0.83 |
2005年(平成17年) | 0.95 |
2006年(平成18年) | 1.06 |
原因
第一就職氷河期の原因はバブルの崩壊ですが、これほど長引いた要因は複数あります。まず、バブル崩壊後に適切な財政・金融政策が打てませんでした。
政治的な混乱が原因です。
次に1997年の消費増税です。このときの消費増税が原因で日本はデフレ化し、そのため1997年に0.7あった有効求人倍率が次の年には0.5にまで下がりました。
第一就職氷河期が長引いたのは政治的な混乱と失策が原因です
問題
就職氷河期の最中、1999年と2003年に日本は労働者派遣法を緩和しました。
非正規雇用を派遣できる業種を緩和し、企業に非正規雇用派遣のインセンティブを与えました。労働者派遣法改正に伴い非正規雇用は増加の一途をたどり、現在では労働者の4割が非正規雇用です。
1997年をピークに日本の労働者の平均所得は数十万円以上、下落しました。デフレと労働者派遣法改正が大きな原因です。
ただでさえ正規雇用に滑り込めなかった第一氷河期世代は、こうして所得の下落も味わいます。
その結果、未婚や晩婚の増加、少子化の加速などの構造的な問題を日本は抱えます。
第二就職氷河期(2008年~2013年)
第二就職氷河期は2008年~2013年の6年間です。第一就職氷河期がようやく終わったわずか2年後に、再び就職氷河期が労働者を襲いました。
インターバル(?)が2年ですので、有識者の中には「1993年~2013年までが就職氷河期」と考える人もいます。こう考えると日本は20年間以上も就職氷河期です。
2007年(平成19年) | 1.04 |
2008年(平成20年) | 0.88 |
2009年(平成21年) | 0.47 |
2010年(平成22年) | 0.52 |
2011年(平成23年) | 0.65 |
2012年(平成24年) | 0.80 |
2013年(平成25年) | 0.93 |
2014年(平成26年) | 1.09 |
原因
第2就職氷河期の原因はリーマンショックです。リーマンショックとはアメリカ発の金融危機で、原因はサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)でした。
元々ハイリスクなサブプライムローンは金融工学により、ローリスクな金融商品として世界中に出回りました。
結果、ハイリスクなものがそのリスク通り崩壊しました。
リーマンショックの後の日本の政治的混乱も、第二就職氷河期とは無関係ではありません。自民党の金権政治に怒った国民が政権交代を支持し、民主党政権がリーマンショックのただ中に誕生しました。
2009年8月末のことです。
こうした政治的混乱も財政・金融政策の一貫性を失わせました。
――第一、第二就職氷河期どちらも肝心なときに政治的混乱が起きました。その結果はより悪くなっているのは言わずもがな。
問題
第二就職氷河期ではリーマンショックによる不景気で、非正規雇用の雇い止めが横行しました。雇い止めされた非正規雇用は行き場を失い、年越し派遣村と呼ばれる現象も起きました。
2008年の暮れ、雇い止めされた生活困窮者のためにNPOが、日比谷公園に設置した避難所が年越し派遣村です。
このときの様子はテレビでも放送され大きな社会問題になりました。
第三氷河期がコロナ禍で訪れる?!
コロナ禍で失業した人は8万人に上ります。各企業も求人を絞っており、第三の就職氷河期が囁かれています。
労働政策研究・研修機構(JILPT)によれば2020年10月の有効求人倍率はギリギリ1です。コロナが囁かれ始めた1月から徐々に低下し、緊急事態宣言で大きく下落しました。
さらにコロナのショックが重なれば就職氷河期入りするでしょう。そうなる前に回復することを祈念します。
就職氷河期支援プログラムとその実態
日本の就職氷河期は1993年~2013年まで20年以上続いたと言って過言ではありません。22歳の新卒が40歳を超えるまで有効求人倍率が1を切り続けたと考えると、すさまじいものがあります。
そんな就職氷河期世代に2019年、ようやく政府は支援を打ち出しました。就職氷河期世代支援プログラムです。
しかし、調べてみるとその実態はお寒いものでした。従来の無職・失業者支援を就職氷河期世代支援と銘打っただけです。
ゆきどけ荘と命名されたサイトに支援内容が掲載されています。その多くは「詳しくはこちら」と、これまでの支援へリンクするだけのものです。
政府や地方自治体が就職氷河期世代を採用する動きもあります。しかし、その規模は焼け石に水です。
加えて、政府や地方自治体が率先したからと民間企業がその動きに合わせるわけではありません。現在のところ、民間企業で就職氷河期世代を雇用する動きは広まっていません。
まとめ
1991年から2020年の30年間で就職氷河期ではなかった期間は11年だけです。じつは就職氷河期であった期間の方が長いのです。
「就職氷河期がいつからいつまで」と数えるとより、就職氷河期ではない期間がいつからいつまでと数えた方が早いのが日本の現状です。
このように考えると日本の現状は相当深刻です。