氷河期世代支援プログラムとパソナに僕ら氷河期世代が憤る本当の理由

 就職氷河期世代支援プログラムに、もはや中年となった就職氷河期世代は懐疑的です。長年に渡り景気の調整弁とされ続けた経験と不信感は、簡単に払拭できません。

 議論になっている就職氷河期世代支援プログラムを解説しつつ、就職氷河期世代の心象風景と実態に迫ります。筆者も同世代であるため、共有する部分が大きい。よってこの機会にしっかりと、書き残しておこうと思います。

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不意に打ち出された就職氷河期世代支援プログラム

 就職氷河期世代支援プログラムは、2019年6月21日に急遽として閣議決定されました。それ以前はそもそも、政治で就職氷河期世代の話題が出ませんでした。

そもそも就職氷河期世代とは?

 就職氷河期世代とは、1995年から2005年に社会に出た世代を指します。1991年のバブル崩壊から、企業には余裕がなくなり始めます。1997年のアジア通貨危機や大手金融機関の破綻、デフレへの突入で、企業は新卒に対しても即戦力を求める風潮が強くなります。

 雇用のミスマッチが生まれ、1995年から2005年の雇用状況は非常に厳しいものとなりました。フリーターや派遣労働、非正規雇用が増加しました。

 数字的な一例をあげます。中高卒者の求人かつ規模500人以上の企業の求人数は、1992年が34万人に対して2004年はわずか3万人でした。製造業の求人数でも同様で、1992年が70万人に対して2004年は8万人に激減しました。

 就職氷河期世代の無業者やフリーター数は当時、約10年間で270万人以上になりました。

就職氷河期世代支援プログラムの概要

  1. 当初は3年間で1300億円の予算と報じられていたが、どうやら3年間で650億円に半減したようだ
    就職氷河期世代の就労支援に1344億円 3年間で正規雇用30万人増 – 毎日新聞(2019.8.30)
    就職氷河期世代支援、3年で650億円超の財源確保 政府行動計画明記、新交付金で自治体支援-産経ニュース(2019.12.23)
  2. 新たな交付金を設置し、就職氷河期世代雇用に積極的な自治体を支援。国家公務員としても中途採用
  3. 就職氷河期世代の正規雇用を、3年間で30万人増やす
  4. 就職氷河期世代支援プログラムのTwitterアカウントを開設
  5. 全国のハローワークに就職氷河期世代専門の窓口を設置

パソナが就職氷河期世代正規雇用制度を発表! 面の皮が厚すぎる

  1. 人材派遣会社であり、派遣社員で稼いできた会社が善人ぶっているという批判
  2. 助成金目当ての事業に、助成金目当ての就職氷河期世代採用者を当てるという悪趣味さ

 竹中平蔵氏が会長のパソナが就職氷河期世代の支援を打ち出しました。パソナは人材派遣会社であり、ある意味で「就職氷河期世代を喰い物にしてきた企業」と言われて仕方ない面があります。当然ながら評価する声より、批判する声が溢れています。

 しかし他にも、就職氷河期世代が憤る理由があります。

 パソナは地方創生分野で、積極的に事業展開しています。その多くが、政府や地方自治体の助成金が出る事業です。そして今回の就職氷河期世代の採用者は、上記事業の人員となるようです。助成金目当てというわけ。

 就職氷河期世代ならずとも、腹が立つ話ではないでしょうか。

就職氷河期世代のしんどさを、相対的貧困率で数字化する

 ネット上では「就職氷河期世代は甘え、自己責任」という声もあります。しかし上述の通り、就職氷河期世代の求職活動はハードルが高かったのです。その影響は、現在にいたるまで続いています。なぜなら就職氷河期世代男性の相対的貧困率は、31.5%と非常に高い。

 相対的貧困率で話題になる、子どもの貧困率は約14%です。日本全体でも15~16%ですし、貧困率が高いといわれる高齢者で20%弱です。就職氷河期世代(男性)の貧困率の高さは突出しています。

常に景気の調整弁に使われてきた就職氷河期世代

 2006年から日本の労働市場は、景気が改善し売り手市場化しました。とくに新卒者の雇用は、就職氷河期世代に比べて著しく良好になりました。
 しかし2008年のリーマン・ショックで、日本の景気は2009年に大きく落ち込みます。派遣切りや、年越し派遣村が話題になったのもこの頃です。

 2006年以降にようやく一息ついた就職氷河期世代は、2009年に入るやまたも不遇をかこつことになります。

政府の就職氷河期世代支援プログラムは朗報なのか?

 就職氷河期世代支援プログラムは「やらないよりは、やった方がマシ」という程度のものでしょう。

 まず「3年で30万人の正規雇用」という目標は、100万人以上いるであろう就職氷河期世代の非正規雇用に対して少なすぎます。
 就職氷河期世代を雇用する地方自治体を支援するとのことですが、宝塚の就職氷河期世代の職員採用はどうだったでしょうか? 1635人が応募し、採用枠はわずか4名。

 さらに現状、地方自治体の3分の1が非正規公務員で運営されています。政府が支援するといっても、採用人数は高々しれています。

 国家公務員でも中途採用するそうですが、ハードルが高いのではないでしょうか。今さらまた勉強? という声も上がっています。
 政府が正規雇用拡大を目指す業種についても「業務がきつめで求人が集まりにくいものばかり」の印象を受けます。観光業、自動車整備業、建設業、造船・舶用工業、船員等などと公式な資料に記されています。

カネも時間もスキルもない就職氷河期世代の体力年齢と悲鳴

 非正規雇用ではスキルが磨けません。キャリアも正規雇用に比べて、難しいでしょう。給与額は言わずもがな。

 稼げるスキルは磨けず、非正規雇用なので給与も上がらず貯蓄も少ない。仕事のコスパが悪く、時間もない。ついでに30代、40代中盤に差し掛かり、体力も若い頃に比べて衰えます。

 「どないしろっちゅうねん!」が、就職氷河期世代の正直な気持ちではないでしょうか。

 2000年代初頭に若者だった就職氷河期世代は、いまや立派な中年です。「頑張っていれば、いつか安定した雇用が得られる」と信じ続けてきました。しかし現実は評価されず、使い捨てのような働き方を強いられてきた人も少なくありません。

 もはや就職氷河期世代の心象風景は、諦観が支配しています。怒ることすら、億劫でしょう。意欲はとうに擦り切れ、失われています。
 社会に見捨てられ続けた世代、失われた20年を体現した世代。それが就職氷河期世代です。

 いままで見捨てられ続けたにもかかわらず、急に「就職氷河期世代支援プログラム!」などと言って良い顔をされる。複雑な感情が湧き上がるのも、無理のないことです。

 僕ら就職氷河期世代が憤る本当の理由。「いまさら、どうないしろっちゅうねん! 遅いわ!」です。取り返しがつかないという認識が、憤りの本質です。

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黄昏のタロ
9 月 前

お邪魔いたしますです。

> 就職氷河期世代ならずとも、腹が立つ話ではないでしょうか。

 たまたま、奇跡の経済教室【戦略編】でレント・シーキング活動の辺りを読んでたです。
 T氏批判は「批判するにしては盛りすぎ。それこそ、ルサンチマンで盛るのだろう」って思ってたです。まかり通る訳がないとも。
 読んでみると現実なんですね。T氏は論法に癖があって胡散臭くて嫌いでしたが、感じた通りだったんですね。根も葉もなくても悪く言われる人なのだって、おいらはT氏に対して無関心で無知でした。(S社のSさんも同じ感じで嫌いです。Y!mobileを使ってて言うのもなんですけど)

 レント・シーキングは永遠に続く訳が無いです。やりすぎれば必ず天罰が下るだろうって思ってるです。

Muse
9 月 前

>就職氷河期世代支援プログラムは「やらないよりは、やった方がマシ」という程度のものでしょう。
>稼げるスキルは磨けず、非正規雇用なので給与も上がらず貯蓄も少ない。仕事のコスパが悪く、時間もない。ついでに30代、40代中盤に差し掛かり、体力も若い頃に比べて衰えます。

今頃こんな事をやり出しても、まさしく「焼け石に水」。なぜなら、仰る通り、新卒で正規雇用に就けなかったことによる「スキル不足、経験不足」といういかんともし難い現実は変えようがないからです。今回の支援で首尾よく「狭き門」を突破して就職できた人たちも、老後(65歳?それとも70歳?)を迎えるまでに果たしてどんな茨の道が待ち受けているか?

そういう意味で、一生を棒に振ってしまったといえる多くのロスジェネ世代の犠牲を含め、過去20年以上も経済成長ゼロ状態のまま、衰退途上国化した全責任は、改革と称する「致命的な政治的失策」を繰り返してきた歴代政権(それから野党)にあります。

こうした悲劇を繰り返さないためには、この歴然たる事実をすべての国民が気づき、過去20年以上も続いた歴代政権の悪行(緊縮財政・構造改革・グローバル化)を断罪するような世論が沸き上がるべきなのですが。。。

3 月 前

自分もこの世代なので痛いほど解ります。