2019年から日本でも、MMTが話題になりました。MMT批判も含めて、たくさんの議論が未だに交わされています。
MMTとは何か? 難しい解説はたくさんあります。しかし本稿では、MMT初級者が簡単にMMTを理解するための5つのポイントについて、わかりやすく解説します。
MMTとは
MMTとはModern Monetary Theory(モダン・マネタリー・セオリー)の略語です。日本語では現代貨幣理論と訳されます。
海外では多くの学者が研究しています。第一人者と言われるのは、L・ランダル・レイやステファニー・ケルトン、ビル・ミッチェル、ウォーレン・モズラーなどです。
ウォーレン・モズラーは経済学者ではなく、MMTの伝道者的立ち位置です。モズラーの記事は、非常にユニークでわかりやすいです。
「命取りに無邪気な嘘 1/7」という記事は、MMTを簡単に理解するのに役立ちます。
閑話休題。
MMTはケインズ経済学の流れをくむ、ポストケインズ派経済学に分類されます。主流派経済学である新古典派経済学とは、理論構造が大きく異なるため対立します。
MMTを簡単に理解する5つのポイント
MMTは小さな理論ではなく、大きな理論体系です。詳細に知ろうと思えば、膨大な量の知識が必要です。
そこでMMTの理解に必要な、5つのポイントについてわかりやすく解説します。
この5つを押さえておけば、MMTの全体像が見えてきます。
①自国通貨建て国債なら、財政赤字は問題ない
MMTの一番の特徴は、自国通貨建て国債なら財政赤字は問題ではないとする点です。
自国通貨建て国債とは、日本なら円で発行されている国債です。国債とは、国の借用証書です。借りているお金が円かドルかで、国債の性質が変わります。
ドルは日本が発行できません。ですから従来の借金と同じで、財政赤字は問題になります。
円は日本が発行できます。よって円で借りているなら、財政赤字は問題ではありません。
なぜなら返済が必要なときに、円を発行すればいいからです。
②信用創造でゼロからお金が生まれる
信用創造とは、お金が生まれるメカニズムのことです。
主流派経済学では、お金は又貸しによって生まれるとされていました。しかしMMTは、お金はゼロから生まれると解明しました。
もっと簡単に言えば「誰かがお金を借りた瞬間に、お金が生まれる」のです。
詳しくは以下でどうぞ。
③クラウディングアウトは起こらない
クラウディングアウトとは、主流派経済学用語です。
簡単に言えば、政府が財政赤字を増加させると、民間が借りるお金がなくなってしまう! とする理論です。
100万円がプールされているとします。政府がここから99万円を借りて使ってしまうと、残りは1万円しかありません。銀行は貸したくないので、利息を高くします。
利息が高くなって民間はお金が借りられず、投資ができなくなります。この現象をクラウディングアウトと言います。
MMTでは信用創造でゼロからお金が生まれる、と解明しました。政府が99万円を借りるからこそ、お金が生まれます。
民間がさらに99万円を借りると、合計で198万円のお金が生まれます。
したがって「政府が借りたから民間が借りられなくなった」というクラウディングアウトは、MMTでは起こりません。
だから①のように、政府の財政赤字をMMTは問題にしません。
④政府の財政赤字を縛るのはインフレ制約だけ
ではMMTなら、無税国家が可能でしょうか。MMTでも、無税国家は無理です。
MMTでは、過剰なインフレはダメです。
政府の財政赤字は、インフレが行き過ぎると止めなければなりません。
これをインフレ制約と言います。
無税国家や極端な財政赤字は、需要を増大させます。需要>>>供給の状態になり、インフレが行き過ぎます。
だから無税国家は、MMTでも実現しません。
⑤政府の赤字は民間の黒字
MMTの最重要ポイントは「政府の赤字は民間の黒字」です。
誰かの借金は、誰かの資産です。貸す人がいないのに、借りることはできません。借りる人がいないのに、貸すこともできません。
とすると誰かの赤字は、誰かの黒字です。あなたがお金を使えば、誰かの所得になります。
政府が借金してお金を使うと、民間の黒字と資産になります。
当たり前で簡単なことですが、意識的に議論されてこなかったポイントです。
まとめ
①自国通貨建て国債なら、財政赤字は問題ない
②信用創造でゼロからお金が生まれる
③クラウディングアウトは起こらない
④政府の財政赤字を縛るのはインフレ制約だけ
⑤政府の赤字は民間の黒字
上記の5つが、MMTを簡単に理解するためのポイントです。もっと深く知りたいなら、さらに知識を深めていきましょう。