ルサンチマンの意味を中学生でもわかるように解説

 ルサンチマンの記事はどれも難解で、いまいち理解できない人も多いでしょう。ルサンチマンという概念自体は複雑なものではありません。しかし、言葉にしようとすると途端に難しくなります。

 厳密に伝えようとすればするほど難解な言葉になります。

 ならば、ルサンチマンの意味が中学生でもわかるように、簡単な言葉で大まかに伝えよう。これが今回の記事のコンセプトです。

 難しい言葉を使わず簡単にわかりやすく、ルサンチマンの意味を解説します。

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ルサンチマンの意味

 ルサンチマンはキルケゴール(キェルケゴール)によって提唱されました。キルケゴールは19世紀のデンマークの哲学者、思想家です。
 実存主義の先駆け、創始者と言われています。

 実存主義とはわかりやすく言えば「人間が生まれることに意味などないけど、どう生きるかはその人次第ですよ」という哲学。

 キルケゴールはルサンチマンについて「妬みが定着すると水平化の現象となる」と言いました。水平化とは「相手の足を引っ張ること」「自分と同じ位置にまで引き下げること」です。
 要するに「ルサンチマンとは、相手を妬んで足を引っ張ることだ」と言いました

 ルサンチマン=嫉妬です。

 ルサンチマンの意味を再定義したのはニーチェです。ニーチェとは19世紀のドイツの哲学者で、キルケゴールと同じく実存主義者です。

 ニーチェによればルサンチマンが発生するのは「行動によって反応することが禁じられている」ため「想像上の復讐によってその埋め合わせをつける」ようになるからです。
 つまり「強い人に逆らえないので、頭の中で道徳的マウントを取るぞ!」がルサンチマンです。

 たとえば、お金持ちにAさんは嫉妬します。しかし、お金持ちを害する方法、復讐する方法はありません。ブスッとってしまったら殺人罪に問われます。
 自分の不利益にならず復讐する方法がないのです。

 そこで、Aさんは「お金持ちが豊かなのは、何か悪いこと、ズルいことをしているからに違いない」と考えます。「それに比べて俺は、貧乏だが正直に生きている。なんて偉いんだ」と。
 こうして、想像上で金持ちに対して道徳的マウントを取り、自分を正当化するのがルサンチマンです。

 ニーチェは恐れ知らずにも、キリスト教もルサンチマンだと言いました。
 キリスト教は当初、ローマ人に虐げられていました。ローマ人(強者)に対するキリスト教(弱者)という構図から、強者=悪、弱者=善という価値観をキリスト教は創り出しました。
 だから、ニーチェはキリスト教がルサンチマンだと言ったのです。

 ルサンチマンの意味は――筆者なりの解釈では「弱者が強者に対して嫉妬し、道徳的マウントを取ること」です。

 貧者は金持ちに対して「私たちは清貧で善だ。それに比べて金持ちは貪欲で醜く卑しい」とルサンチマンを抱くのが、わかりやすい一例です。

ルサンチマンの語源

 ルサンチマンの語源について簡単に述べます。ルサンチマンとはフランス語で、もともとは「ressentiment」でした。「ressentiment」は「恨み、怨恨」などの他に「感じ取ること、感謝の念」などの意味もありました。
 現在のルサンチマンとはやや異なる意味合いです。

 この「ressentiment」の借用語として、ルサンチマンが提唱されました。

 ルサンチマンを最初に唱えたのはキルケゴールです。その後、ニーチェによって再定義され、マックス・シェーラーによって広まりました。
 マックス・シェーラーは19世紀から20世紀のドイツの哲学者です。「道徳の構造におけるルサンチマン」という著作でルサンチマンが一般的になりました。

ルサンチマンの類語

 ルサンチマンの類語はネガティブなものばかりです。怨恨、憎悪、嫉み、妬み、憎しみ、怨念、怨嗟などが類語と言われています。

 その類語も相手に対する恨み、嫉妬が根底あります。さらに、共通して自分を正当化しているという前提条件があります。
 たとえば、相手を憎悪したり怨恨を持ったりするには「自分の方が正しいのに」と思うことが必要です。自分が正しいからこそ、間違っている相手に怨恨や憎悪、憎しみを向けられます。

ルサンチマンの使用例

 ルサンチマンの使用例をいくつか述べます。

  1. 強者に対して弱者がルサンチマンを持つことは多い
  2. 自分がルサンチマンを抱いていると感じ、ルサンチマンをなんとか克服しようとする
  3. 兄より優れた弟など存在しない! と、優れた弟にルサンチマンを抱く
  4. Windowsユーザーに対してMacユーザーがルサンチマンを抱くことがある

※筆者の主観も入っています。

ルサンチマンの意味を学べる本

 ルサンチマンについてニーチェやキルケゴールを読むのは骨が折れます。解説書や、ニーチェがルサンチマンを考察したドストエフスキーの小説などが学習にはおすすめです。

 地下室の記録(地下室の手記)はドストエフスキーの小説です。小説だけに気軽に読むことができるとのこと。ニーチェも地下室の手記からルサンチマンを学びました。

ニーチェが「道徳上の奴隷一揆」と呼んだルサンチマンとは何か? それは道徳的に「復讐」を行う装置である。人気哲学者が、通俗的ニーチェ解釈を覆し、その真の価値を明らかにする!

道徳は今、われわれの眼であり光である。だからそれを見ることはできない……。ニーチェが「道徳上の奴隷一揆」と呼ぶ「ルサンチマン」とは何か? 話題の哲学者が初めてニーチェの真価に迫る哲学入門。

ルサンチマンを解消するには

 ルサンチマンを解消するには、ルサンチマンを認識することが大切です。1960年代にルサンチマンを論じたルネ・ジラールによれば、ルサンチマンとは「誰もが抱く嫉妬心」に過ぎません。
 誰もが抱く以上、ルサンチマンを完全に解消することはできません

 完全に解消しようとすれば禅宗で座禅を組んだり、仏教で悟りを開いたりする必要があるかも。半分は冗談です。

 それはさておき。

 ルサンチマンを認識すると、ルサンチマンを自制できます。嫉妬を嫉妬だと認識すれば自制できるのと一緒です。

 また、過度な理想や正義はルサンチマンの原動力となります。理想を抱くからこそ嫉妬し、現実を認められず、自己正当化というルサンチマンに陥るのです。
 自分と他人を比較せず「万事塞翁が馬」「禍福はあざなえる縄のごとし」「なんとかなるさ」の精神で日々、生きていくことがルサンチマンの解消につながります。

まとめ

 ルサンチマンは「強者に対して弱者が嫉妬し、道徳的マウントを取ること」です。
 やれWindowsは大衆迎合でMacはクリエイティブだとか、やれ金持ちは貪欲で卑しく貧者こそ清貧だとかです。

 キルケゴールがルサンチマンを提唱し、ニーチェが再定義しました。マックス・シェーラーによってルサンチマンは一般的な言葉になりました。

 ルサンチマンは誰でも持ちうる心理状態です。ルサンチマンを完全に解消することは無理です。まずはルサンチマンの意味を知り、自分がルサンチマンを抱いているかどうか認識することが必要です。

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