「インフレを説明しなさい」と言われると混乱しませんか? 物価が上昇する方だったか下落する方だったか――と、こんがらがりますよね。
インフレとは物価が上昇し、貨幣が下落する現象です。インフレの起こる原因やインフレの種類、インフレ対策についてわかりやすく解説します。
くわえて、ハイパーインフレの原因や定義もお伝えします。
この記事を読めばインフレのことが丸わかり。
インフレとは
インフレとは物価が上昇する現象です。物価の上昇は貨幣の下落と同義です。例えば、昨日は100円でパンが2つ買えました。今日は100円でパンが1つしか買えませんでした。
パンが1つ50円から100円に値上がりしました。反対に、100円の価値がパン2つから1つに下落したとも考えられます。
「物価の上昇=貨幣の下落」です。
インフレは需要>供給の状態です。需要過多の場合、商品をほしい人がたくさんいるので物価は上がります。逆に、デフレは需要<供給の状態で物価が下落します。
デフレについては以下の記事をご覧ください。
簡単なインフレの種類
インフレには2種類あります。良いインフレと悪いインフレです。
良いインフレ
良いインフレは需要が増えることによって起こります。増えた需要をまかなうため、企業は投資をして生産性が向上します。
良いインフレでは増える投資や消費を供給が追いかけます。
良いインフレはディマンドプルインフレと呼ばれることもあります。
悪いインフレ
悪いインフレは輸入物の価格上昇などによるインフレで、コストプッシュインフレと呼ばれています。
石油や石炭、鉄鋼などの輸入原料が値上がりすると国内商品も値上がりします。需要によって値上がりしたわけではないので景気は悪くなります。インフレなのに景気が悪くなり、企業はコストカットに走ります。コストカットは人件費にまで及びます。
所得は下がり、物価は上がって家計を圧迫します。
景気後退とインフレが同時に進む状態はスタグフレーションです。悪いインフレとはスタグフレーションのことでもあります。
わかりやすいインフレの原因
インフレの原因は主に3種類に分かれます。「需要過多」「輸入物などのコストプッシュ」「供給力の下落」です。
需要が大きくなる
インフレは需要>供給なので、需要が大きくなるとインフレになります。需要が物価を引き上げる形のインフレは好景気に発展します。
需要増加には民間需要増加の以外に、政府支出による需要増加も含まれます。政府支出の拡大でも好景気は発生します。
輸入物の価格が上がる
輸入物の価格が上がるとインフレ要因となります。特に石油や石炭、天然ガス、鉄鋼などの資源が値上がりするとスタグフレーションを生じることもあります。
典型的な例は1970年代のオイルショックです。アメリカやイギリス、日本にスタグフレーションを招きました。
供給力が下がる
戦争や大災害などで生産設備が破壊されると供給力が下がります。
供給力が下がることでインフレが生じると、深刻な物資不足に陥ります。戦後日本のインフレも、焼け野原になり供給力が下がったことが原因でした。
ハイパーインフレとは
統計的に確認できるハイパーインフレは歴史上57件です。ハイパーインフレの定義とは、月間50%以上のインフレです。月間50%以上のインフレは年間で1万3000%になります。
この定義はアメリカの経済学者、フィリップ・ケーガンが提唱しました。一般的に使用されるハイパーインフレの定義はケーガンの定義です。
国際会計基準にもハイパーインフレの定義があります。国際会計基準では3年間で累積100%のインフレをハイパーインフレと定義しています。こちらの定義はあまり使用されません。
柴山桂太によればハイパーインフレが発生する原因は3つあります。
参照 【柴山桂太】ハイパーインフレの発生条件 | 表現者クライテリオン
- 戦争などによって生産設備が停止し、輸入なども不可能になった場合
- 革命などで旧体制が瓦解して新体制に移行した場合
- もともと何十年も高インフレだったところに、マクロ経済政策の失敗が重なった場合
戦後日本の高インフレは1.の戦争による生産設備の停止が原因でした。ベネズエラのハイパーインフレは3.が原因です。冷戦崩壊以降にハイパーインフレを起こした旧東側の国々は2.に分類されます。
誰でもわかるインフレ対策
インフレが行き過ぎると経済が不安定化し、インフレ対策が必要になります。インフレ対策には消極財政(緊縮財政)・規制緩和・自由貿易の3つが有効です。
消極財政(緊縮財政)
消極財政(緊縮財政)とは増税や政府支出のカットです。政府支出をカットすると政府による需要が減少します。インフレは需要>供給ですから、需要が減少することでインフレが解消に向かいます。
増税は民間需要を減少させて、同様にインフレ解消に向かいます。
消極財政(緊縮財政)によるインフレ対策は即効性に優れています。
規制緩和
規制緩和によって市場競争を促進するとインフレ対策になります。競争が促進されることで、各企業はコストカットによる競争力強化を目指します。
こうして供給力が伸び、インフレは解消に向かいます。
規制緩和の効果は5年~10年スパンで見る必要があります。すぐ効果が現れるわけではありません。
自由貿易
自由貿易もインフレ対策になります。自由貿易は国境の壁を越えた規制緩和に他ならないからです。
自由貿易をすると海外製品と国内製品の競争が生まれます。企業は競争に勝ち抜くためにコストカットなど企業努力をします。こうして供給能力が強化されます。
また、安い輸入製品を輸入することでデフレ圧力が生まれます。
反対に保護貿易をするとインフレ圧力が生まれ、デフレ対策になります。
インフレの経済への影響
適度なインフレは経済に好影響を及ぼします。インフレとは貨幣の下落ですので、企業や個人は貯蓄よりも消費や投資をします。
消費や投資で需要が増えますが、投資は同時に供給能力も向上させます。
こうして需要を供給が追いかける形で経済が回ります。
適度なインフレは資本主義の健全な状態です。
一方、需要が引き上げる形以外のインフレは経済に悪影響を及ぼします。悪いインフレやハイパーインフレは人々の生活に大きな影響があります。
家計を圧迫したり、経済を破壊したりします。
また、デフレも悪影響があります。物価が下落する以上の速度で所得が下落し、国民が貧困化していきます。
デフレとは資本主義の不健全な状態です。
適度なインフレを保つマクロ経済政策が政府に求められています。
まとめ
インフレとは物価の上昇=貨幣の下落する現象です。良いインフレと悪いインフレがあり、良いインフレは好景気、悪いインフレはスタグフレーションと呼ばれます。
インフレの原因はいくつかありますが、需要が引き上げるインフレが良いインフレです。輸入物の価格上昇や供給力の下落によるインフレは悪いインフレです。
ハイパーインフレは57件しか例がなく、よほどのことがない限り心配する必要はありません。戦争、革命、何十年も続く高インフレなどから発生することがほとんどです。
日本の場合はハイパーインフレより、デフレを心配する方が先でしょう。
日本ではインフレを悪者扱いする風潮もあります。しかし、健全なインフレは資本主義に必要不可欠です。