新聞やテレビでは「国の借金1100兆円! 国民1人当たり900万円!」と報道されます。国の借金が大問題かのように報道され、国民の1人としても「大変だ!」と思ってしまいますよね。
しかし、国の借金は本当にダメなことなのでしょうか? 国の借金の仕組みや正体、増えても全く問題がないという事実を解説します。
専門用語をほぼ使わず、できるだけわかりやすく説明していきます。
国の借金とは
国の借金が問題になったのは1995年、村山内閣の頃でした。武村正義大蔵大臣が財政危機宣言を出しました。
当時のGDPは512兆円、国の借金と言われる国債発行残高は225兆円でした。
それから25年以上が経ちました。2021年現在、国債発行残高は901兆円にまで膨れ上がっています。しかし、一向に財政危機が起きる予兆はありません。
国の借金とは一般的に国債・借入金・政府短期証券の3つを合わせた数字です。その中で主なものは国債です。
また、国の借金という言い方は正しくありません。正しくは「日本政府の借金」です。便宜上、本稿では国の借金とこのまま使用します。
国債で900兆円、借入金や政府短期証券も入れると1100兆円を突破した国の借金。日本政府は一体誰に借りているのか知っていますか?
答えは「日銀が半分」「他が民間金融機関」です。そして、国の借金は自国通貨建て国債です。円で発行された国債は、通貨発行権のある日本政府は返済がいつでも可能です。国民の税金で支払う必要はありません。
事実関係から、日本に財政危機はありません。1995年の武村正義大蔵大臣は間違った認識を示してしまいました。
わかりやすい国の借金の嘘
事実関係について確認してきました。ここからは国の借金の嘘について解説します。
国民1人当たり○○万円
現在は国の借金が1100兆円、国民1人当たり900万円と言われています。国民が900万円の返済を迫られるかのように報道されますが嘘です。
政府には通貨発行権があり、通貨発行権は国家主権の1つです。民主主義国家において主権とは国民が持つものです。
何らかの理由でどうしても国債を減らしたいなら、通貨発行権を行使すればいいだけです。税金で返済する必要はどこにもありません。
また、自国通貨建て国債を返済しきった国家はありません。国家にとって自国通貨建て国債の発行=通貨発行とほぼ同義だからです。
お金=通貨は私たちにとって資産です。「誰かの負債=誰かの資産」の原則に則れば、通貨は誰かにとっての負債でなければなりません。誰にとっての負債なのか? もちろん政府です。
要するに、政府が負債を作ることで通貨が流通し、私たちの資産になるのです。
上記の解説は難解なので、詳しくは以下の記事でどうぞ。
どちらにしても国民に国債の返済義務は存在せず、したがって「国の借金1100兆円! 国民1人当たり900万円!」も嘘と言えます。
日本が財政破綻する
1995年に財政危機宣言が出され25年以上が経過しました。しかし、一向に財政破綻する気配はありません。長期金利は低迷し、むしろ財政リスクはこれまでにないほど低下しています。
日本が財政破綻するという主張は嘘でした。
そもそも、自国通貨建て国債で財政破綻はあり得ません。政府が通貨発行権を持っているからです。
財政破綻(デフォルト)とは債務不履行のことです。自分で発行できる通貨で債務不履行するのは、償還の意思がない場合のみです。
原理的に日本は財政破綻しようがありません。この事実は主流派経済学も認めるところです。
ハイパーインフレが起こる
昔は財政破綻論と言えばデフォルトが主流でした。しかし、現在では「ハイパーインフレになる!」が主流になりつつあります。
なぜなら、どうあがいても、国債が何千兆円になっても、財政破綻しないと明らかになってきたからです。
ハイパーインフレが起きるとされる理屈はこうです。
国債発行額が大きくなっていくと、お金のプールからの持ち出しを国債が占める。したがって、民間に貸し出すお金が少なくなり金利が高騰する。金利が高騰してインフレが起き、ハイパーインフレになる。
「100あるお金のうち、90を国が借りると10しか残らず金利が高騰する」という理論をクラウディングアウトと言います。
クラウディングアウトは現実には起きません。
なぜなら「政府が90のお金を借りると、90のお金が創造される。民間が110のお金を借りるとさらに110のお金が創造されて、合計で200のお金になる」が現実のお金の仕組みだからです。
この仕組みを信用創造と呼びます。詳しくは以下の記事でどうぞ。
国の借金が増えるとどうなるか
国の借金が増え続けるとどうなるか気になりますよね。結論から言えば「なんともならない」です。その理由や実例も含めて見ていきましょう。
国の借金が増える原因
国の借金が増える原因は「資本主義だから」が結論です。国の借金が増える原因について、さまざまなことが言われています。
例えば、社会保障費の増大などです。
しかし、本質的には資本主義だからです。資本主義とは「負債を拡大し続けながら経済成長していく経済形態」です。
負債を拡大し続けた証拠に、1900年代と比較してアメリカの国債発行残高は3000倍以上です。
資本主義については以下の記事をどうぞ。
この20年の日本はやや不健全な増え方です。デフレによる経済成長の鈍化、それに伴う税収減によって国債発行の比率が大きくなっています。
積極財政でデフレを脱却すれば、逆に国債発行ペースは落ちていきます。
自国通貨建て国債が増えても影響はない
外債なら問題ですが、自国通貨建て国債はいくら増えても問題は起きません。先ほどの例で示したとおり、アメリカは1900年に比べて国債発行残高が3000倍以上です。
では、アメリカが財政破綻するでしょうか? あり得ません。
なぜなら、アメリカはドルの発行権を持っているからです。日本も自国通貨である円の発行権を持っています。いくら国の借金が増えても全く問題はありません。
国の借金プロパガンダの恐怖
自国通貨建て国債で発行する国の借金は、いずれにしても問題がありません。財政破綻はしませんし、ハイパーインフレにもなりません。1つ気をつけるとすれば、需要過多を原因とするインフレの行き過ぎだけです。
しかし、日本では国の借金で財政破綻! という言説が染みついています。そのため、積極財政もろくにできません。
1998年にデフレに突入し、積極財政をしたのは小渕・麻生政権の2回だけです。
政府はPB黒字化目標を指針に据え、財政健全化を目指しています。財政健全化で消極財政(緊縮財政)をする限り、デフレ脱却など夢のまた夢です。
失われた20年は30年になろうとしています。ロストジェネレーションの大きな原因は、国の借金プロパガンダによる消極財政(緊縮財政)です。
デフレさえなければ日本はGDP1000兆円に達していたかもしれません。その未来を失わせた国の借金プロパガンダの罪は大きいでしょう。
まとめ
「国の借金」とはある種のプロパガンダです。正確には政府の借金ですし、返済の必要もありません。その気になればいつでも瞬間的に返済可能なものが国の借金です。
もっとも――返済してしまうとそちらの方が大問題です。
「誰かの負債=誰かの資産」の原則に則れば、もし政府が1100兆円を返済すると民間から1100兆円の資産が消えます。金融ショックどころの話ではありません。
閑話休題。
国の借金プロパガンダは非常に強力です。多くの国民が正しい知識をつけて対抗しなければなりません。