非正規雇用の割合増加の原因はムチ型成長戦略と貧困への競争

 日本ではここ20年間、非正規雇用の割合が増加の一途です。1990年代には2割程度だった非正規雇用は現在、約4割に拡大しました。

 一体この20年間に何があったのでしょうか? 資料を元に、非正規雇用の割合が増加した原因を探ります。

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2019年の非正規雇用の割合

 厚生労働省の資料によれば2017年の非正規雇用は2036万人、割合で37.3%でした。他の資料にも当たってみると、総務省の発表で2018年の非正規雇用は2165万人、割合で38.3%となっています。

 1990年代末から非正規雇用の増加は顕著です。1999年の非正規雇用の割合は24.9%でしたが、2004年には30%を超えて31.4%に拡大します。その後、平均すると年に0.5%ほどの拡大が持続して続きます。

非正規雇用の割合と年収などの推移比較

 上記の図を見てもらえばわかる通り、雇用者数は増えています。一方で、正規雇用は1990年代後半を境に縮小傾向です。

 図からは2つの仮説が考えられます。1つは労働市場が拡大したから非正規雇用が増えたという説。2つめは正規雇用の所得が下がったので、共働きで非正規雇用として働かざるを得ないという説です。

  1990年代をピークに全世帯年収は低下気味で、児童のいる世帯も下落傾向でした。2010年代以降は全世帯平均は回復しておらず、児童のいる世帯のみ急激な回復を見せています。
 原因は児童のいる世帯で共働きが増えたからでしょう。

 2008年のリーマンショックとそれに伴う海外景気の回復、追随する日本の国内市場で非正規雇用の需要が増えたものと考えられます。そのため共働きが可能になり、児童のいる世帯のみ急激に所得を回復しました。

 平均年収は1997年をピークに下落しており、2019年にようやく436万円に回復しました。436万円はリーマンショック前の水準で、1997年には遠く及びません。

 各図の傾向を見るとどうやら2つめの説が正しいようです。つまり、正規雇用の平均年収が低下したため共働きとしての非正規雇用が増えたとの説です。児童のいる世帯の世帯年収が2015年あたりから回復し始めたのも理屈が通ります。

 要するに国民が貧困化して世帯年収が下がり、働きに出ないといけない人が増えたのです。

非正規雇用の割合増加の原因を探る

 非正規雇用の割合が増加した原因は、国民の貧困化でした。では、国民が貧困化した原因は何でしょうか? さまざまな原因がありますが、非正規雇用の割合と直接関係するものは3つです。

 「労働者派遣法改正」「ムチ型成長戦略」「貧困への競争」です。

労働者派遣法改正

 労働者派遣法改正は何度も行われています。中でも1999年と2003年の労働者派遣法改正は、非正規雇用の割合に大きな影響を及ぼしています。

 1999年には「派遣業務の原則自由化」、2003年には「製造業務への労働者派遣解禁」「派遣期間の延長」が行われました。

 労働者派遣法の改正は非正規雇用を大きく増加させました。また企業に対し、非正規雇用へのインセンティブを与えました。

 非正規雇用は正規雇用より人件費が安く、容易に首を切れるために景気の調整弁としても機能します。景気がいいときに雇い、悪いときに解雇できます。

 こうして正規雇用の需要は減少し、非正規雇用の割合が増加していきました。

アメ型とムチ型の成長戦略

 日本の採用した成長戦略も大きな影響を与えました。成長戦略には「アメ型」「ムチ型」があります。
 日本の取ってきた成長戦略はムチ型です。

アメ型成長戦略とは

 アメ型成長戦略とは労働者を保護することで所得を伸ばし、所得増加による需要増加でさらに景気が良くなるという循環を目指します。

 労働者の保護は企業にイノベーションを迫り、長期投資に駆り立てます。結果、イノベーションも多く生まれます。

 積極財政や規制強化、保護主義的な貿易と併用される戦略です。

ムチ型成長戦略とは

 ムチ型成長戦略とは労働市場の自由競争を加速するため、労働者の保護を緩和します。つまり、規制緩和して生産性を向上させようという戦略です。

 緊縮財政や自由貿易と併用されます。
 日本は1990年代からムチ型成長戦略を採用しました。その結果、労働者の保護を緩和して非正規雇用の割合を増加させました。

貧困への競争

 世界的なグローバル化も非正規雇用を増やす原因の1つです。自由貿易とは海外製品が日本に入ってくることです。国内企業と海外企業の製品が競争することは、イコールで国内と海外の労働者の競争でもあります。
 輸出も同様です。

 こうして発展途上国と人件費の競争が始まります。これを貧困への競争と言います。

 グローバル化で貧困への競争が加速した結果、世界中の先進国では中流層の崩壊が起きています。日本も例外ではありません。その結果が非正規雇用の増加であり、格差の拡大です。

非正規雇用の割合増加=国民の貧困化

 ここまでの話を整理するとこうです。

 日本はムチ型戦略を採用し、グローバル化を進めました。そうして国民全体が貧困化し、所得が下がります。

 正規雇用の所得が下がったので、共働きせざるを得ず非正規雇用が増えました。また、労働者派遣法改正で企業が非正規雇用増加にインセンティブを感じ、正規雇用を抑えて非正規雇用を拡大しました。

 就労者が増えているのだから全体的なパイも増えているのでは? という反論があるかもしれません。しかし、1997年の536兆円を境に日本のGDPはほぼ横ばいで推移しています。
 同じ規模のパイをより多くの人で取り合った、というのが正解です。

 ジニ係数は拡大傾向です。つまり、日本でも格差が拡大しています。富める者に富が集中し、中流層の崩壊が起きています。

 

 非正規雇用の割合が増加した原因は国民の貧困化、格差の拡大などに理由がありました。日本は今のままでは、将来的にさらに凋落するでしょう。

まとめ

 非正規雇用の割合は年々、0.5%ほど増え続けています。これは年を追って日本が貧困化していることを示します。

 凋落を止めるにはどうしたらいいのでしょうか? ことはそんなに難しくありません。アメ型の成長戦略を採用すればいいのです。
 規制強化と労働者の保護、積極財政、保護主義的な貿易政策などを組み合わせる必要があります。

 年々増加する非正規雇用の割合。このままではいけません。

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