保守の対義語は革新です。では革新=リベラルでしょうか? という疑問点から今日の記事は始まります。
世間では保守の対立軸、対義語はリベラルだと思われています。でもこれ、間違いです。
保守の対義語の革新とは何で、リベラルとは何なのか? 最後にはリベラルの対義語にまで踏み込んで解説します。
保守の対義語は革新、では英語では?
保守の対義語は革新です。
保守は英語でConservative(コンサバティブ)と書きます。Conservativeの対義語は? 英語圏でもLiberal(リベラル)が使用される場合も多いですが、厳密にはDrastic(ドラスティック)が対義語です。
Drasticは日本語で「抜本的」「革新」「急進的な」という意味があります。Liberalも「自由主義」以外に「革新的な」という意味もありますから、あながち間違いではありません。
しかし、より厳密に保守(Conservative)の対義語を英語で探すならDrasticが適当です。
保守対義語はリベラルではない
保守の対義語としてリベラルはやや不適当です。その理由について簡単に解説します。
そもそも保守とは
保守は一般的に「父権的でマッチョな政治思想」のイメージですよね。しかし、全く違います。保守思想は要約すると「急進的な改革の警戒し、反対する態度」です。
急進的な改革は、理性で導かれた答えに現実を合わせようと行われます。「○○が正しいはずなので抜本的改革!」のような行動に警戒するのは、保守思想が理性を万能だと考えていないからです。
理性は万能ではないと考えるので、保守は理性に導かれた急進的な改革を警戒します。
リベラリズムが急進的だった時代
リベラリズムは日本語で自由主義です。リベラリズムも保守思想も、イギリスの産業革命や近代の幕開けと同時に生まれました。
当初のリベラリズムはフランス革命に見られるように、非常に急進的なものでした。だから保守はフランス革命を警戒しました。
イギリスの産業革命とレッセ・フェール(経済自由主義)は急速に社会を疲弊させました。よって保守は社会主義に与しました。
急進的な経済自由主義による社会の疲弊を警戒したのです。
この頃、保守の対義語は確かにリベラルでした。
リベラリズムを保守すべき時代
現代は人権や自由の概念が広く浸透し、民主制国家は世界の半数を占めています。すでに急進的なリベラリズムではなく、むしろ自由主義社会を保守すべきですらあります。
今は保守の対義語としてリベラルは成り立ちません。現在、保守の対義語はリベラルではありません。
保守でリベラルな政治主張もあり得る
保守の対義語がリベラルでない以上、保守かつリベラルな政治主張もあり得ます。例えばリベラル政党である立憲民主党の枝野幸男議員は「私たちこそ保守本流だ」と演説しました。
またリベラル側から「リベラル・保守」という言葉も出ています。
これらは矛盾しておらず、論理的に整合しています。
保守本流の自由民主党は英語でLiberal Democratic Party
枝野幸男議員の主張やリベラル・保守が論理的に矛盾しないことは、保守本流と言われる自由民主党を見れば明らかです。
自由民主党を英語で書くと“Liberal” Democratic Partyです。自由民主党もリベラル・保守です。
かつては保守こそがリベラルを自称していました。自由のない共産主義に対抗する資本主義陣営として、自由主義を名乗っていたのです。
その証拠が自民党、”自由”民主党の名称です。
このことからも到底、保守の対義語はリベラルと言えません。
ではリベラルの対義語は?
保守の対義語は革新であり、英語ではConservativeに対してDrasticが対義語です。リベラルは保守の対義語ではありませんでした。
ではリベラルの対義語は?
そもそもリベラリズムとは
現在、リベラリズムと呼ばれているイデオロギーは多くの場合、社会自由主義を指します。
自由には「~からの自由」と「~への自由」の2種類があります。前者を消極的自由、後者を積極的自由と呼びます。
前者は「政府からの自由」「束縛からの自由」など、後者は「より豊かな生活への自由」「望んだ職業につくことへの自由」など。
リベラリズムは主に積極的自由を重視します。逆にネオリベラリズム(新自由主義)は消極的自由を重視しますので、リベラリズムとは別物です。
リベラリズムは社会的公正を重視する自由主義思想と言えます。
リベラルやリベラリズムの対義語は権威主義
リベラル(自由主義・Liberal)の対義語は権威主義です。権威主義は英語でAuthoritarianism(オーソリティリアニズム)と書きます。
日本の”いわゆる”保守主義者、エセ保守は権威主義的な部分があるので、リベラリズムが対義語と言ってあながち間違いではないのかもしれませんね。
※本来の保守思想は権威主義的ではありません
まとめ
保守主義の対義語は革新だと多くの人がわかっています。しかしConservativeやリベラルの対義語を知らなかった人が多いのではないでしょうか。
イデオロギーや思想は整理しておかないと混乱します。議論でもトンチンカンな発言があってポカーンとすることがあります。
しっかりと整理しておくと議論も捗りますよ。
もしこの記事を小林よしのりとそのシンパが読んだらどう思うのか興味深いです。
気に入らない人物をリベラルや左翼と決めつけて執拗に攻撃してきますから(汗)
同様の傾向はホリエモンと永江一石(コロナ脳という言葉を流行らせた維新系の人物)にもありますが。
レッテル貼りは政治議論で横行してますよね。あまり右左関係なく横行しているように見えます。
一種の思考停止で、あまりいいものではありませんね。