自粛要請とは?使われ始めた時期やねじれた言葉の意味について解説

 「自粛要請」と聞くたびに不思議に感じます。あなたも語感に違和感がありませんか? もし感じるならとても感性が鋭いです。

 自粛要請とは何なのか? 使われ始めた時期や言葉の意味、そしてあなたが感じている違和感の正体について迫ります。

 結論を言えば「自粛要請とは責任の所在を曖昧にする言葉」です。

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コロナ禍で使われ始めた「自粛要請」

 Googleで時期を区切って検索すると、2019年の10月以前に自粛要請という単語は出てきません。

 よって自粛要請とは、コロナ禍が始まってから使われ始めたと推測されます。

 これだけ広まっているので、権威や権限のあるところが使い始めたに違いありません。

 そこでコロナ禍で自粛要請の根拠となっている「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を参照しました。しかし法律の中に「要請」はあっても「自粛」は見当たりませんでした。
 自粛要請という単語は法律で使われていません。

 さらに検索すると、内閣官房の有識者会議の資料で初めて「外出自粛の要請」という単語が出てきました。
参照 感染を防止するための協力要請等について 【法第45条】

 自粛要請とは有識者会議が最初に使ったと推測されます。そこから広まったのではないでしょうか。

自粛要請の意味とは

 自粛要請の意味について検索したところ、解説記事がありませんでした。こういった場合は言葉を分解するとわかりやすくなります。なるはずです――多分。

自粛とは

 自粛とは「自ら行動をつつしむこと」です。類語には自制や我慢、自己制御があります。

 使用方法は「飲み会を自粛する」「目を付けられないよう自粛する」など。自粛は自ら行動したり律したりする自律的な言葉です。

 なおWeblio辞書で用法に「卒業式の華美な服装を自粛するよう要請する」とありましたが、正しいとは思えません。
 なぜなら「卒業式の華美な服装を『控えるよう』要請する」が正しい日本語だからです。

要請とは

 要請とは「必要だとして強く願い求めること」です。類語には要求や要望があります。

 使用方法は「不要不急の外出を控えるよう要請する」「時短営業を要請する」など。要請は他から働きかける他律的な言葉です。

自粛要請の意味とは

 自粛と要請の意味から推察すると、自粛要請とは「控えるようお願いすること」という意味です。

 しかし自粛が自律的な言葉なのに、要請は他律的な言葉です。
 この2つが結合して用語になることは本来、あり得ません。無理のある言葉だからこそ、解説記事がなかったのかもしれませんね。

自粛要請の使用方法

 自粛要請は日々使用されていますから、使用方法に悩むことはありません。「政府が外出の自粛要請をする」「大阪府が住民に自粛要請を出した」などと使用されます。

 余談ですが自粛要請とGoToキャンペーンは矛盾していますよね。こういった矛盾した指令にストレスを感じる状態をダブルバインドと言います。詳しくは以下の記事で解説しています。

自粛要請という言葉のねじれ

 自粛要請は自律的な「自粛」と他律的な「要請」が結合しており、言葉として矛盾しています。

 「強制ボランティア」に近い語感があるのはそのためです。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法の中で使用されなかったのも、矛盾した用語だからでしょう。

 「自粛要請」に矛盾が感じない人は、例えば「自粛指示」「自粛命令」ならどうでしょうか? 「指示されたり命令されたりしたらそれ、もう自粛ちゃうやん!」と思いますよね。

 「自粛要請を最初に使ったのは有識者会議では?」と書きました。そうだとしたら有識者会議は、言葉の矛盾に気がつかなかったのでしょうか。

 疑問は尽きません。
 しかし矛盾した語句が大量に流れている状態は、あまり好ましくありません言葉の矛盾に気がつかなくなれば、思考が矛盾しても気がつけなくなるからです。

自粛要請の問題点

 自粛要請の意味とは「控えるようお願いすること」です。しかし言葉自身が矛盾しているため、使用する文脈や理屈も矛盾します。

 要請されたとはいえ自粛ですから自己責任と解釈できます。したがって自粛要請に応じたからといって、政府が保障する義務はありません。
 自粛要請とは「自らつつしんだのか」「政府の要請なのか」がわからず責任の所在が曖昧な言葉です。

 「控えるように要請」「控えるように指示」となって初めて責任の所在がはっきりします

 自粛要請という言葉は2つの可能性を示しています。

  1. 国の権限が弱いため、自粛要請という矛盾した言葉を使用せざるを得なかった
  2. 責任の所在をはっきりさせたくないので自粛要請を使っている

 あなたはどちらだと思いますか?

まとめ

 「自粛要請」とは責任の所在を曖昧にする言葉です。GoToキャンペーンにしてもコロナ対策にしてもイマイチ責任の所在が曖昧なのは、自粛要請という言葉から始まっているのかもしれません。

 政府や地方自治体はきっちりと「不要不急の外出を控えるように要請」などの表現を使用してほしいと思います。

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Muse
4 月 前

>自粛要請という言葉は2つの可能性を示しています。

1.国の権限が弱いため、自粛要請という矛盾した言葉を使用せざるを得なかった
2.責任の所在をはっきりさせたくないので自粛要請を使っている

あなたはどちらだと思いますか?

周知の通り、日本国憲法には(実に曖昧な概念である)「公共の福祉」なる文言を用いた基本的人権に関する制約の規定があります(12条・13条・22条・29条)。「公共の福祉」による制約の具体的内容は学説により様々ですが、「国民の健康・安全に対する弊害の除去を目的とする制約」もあるそうです。そうだとしたら、国民をコロナ・パンデミックから救うため、欧州諸国並みの強力なロックダウン(都市封鎖)を伴う法律の制定は現行憲法下でも可能。なので、1.の見解は的外れ。

それから安倍政権以来のコロナ対応を見れば誰でもわかる通り、政府は国民の自己責任への一方的な丸投げと責任放棄に終始。しかも、いまだにGo To利権に固執して何ら有効な対策を打ち出さず、国民の生命や公衆衛生、つまり(広義の)安全保障の概念など全く眼中にないどうしようもないクズ政権です。なので、2.の見解以外にはあり得ません。

Muse
Reply to  高橋 聡
4 月 前

調べてみたら、憲法解釈上の論点になっており、確かに「公共の福祉」という文言だけではロックダウンの法的根拠として乏しいと言えます。そこでいわゆる改憲派が推しているように、「緊急事態条項」を明記した憲法改正が行われれば、法的根拠は万全です。

しかし、今や一部のレントシーカーどもに国政が牛耳られて議会制民主主義は形骸化、マスメディアも国民世論もこうした惨状に見向きもしない体たらく。こんな状態で狂った政府に国家緊急権を与えればどうなるか。サヨク連中でなくとも、自民党改憲草案による憲法改正には断固反対!

よすけ
4 月 前

仰る通りおかしな言葉ですよね。
よく使われるようになってしまった”自己責任”と同じものを感じます。

自粛や不要不急という言葉、大嫌いです。
聞くだけでも不愉快に感じます。
これらの言葉のせいで犠牲になってしまった人はかなりいるでしょう。

政府は責任を取りたくない、地方自治体は票田(高齢者)に逃げられたくないというゲスな思惑があると思いますが、日本人の陰険性悪で同調圧力や足の引っ張り合いが大好きな気質があらわになって国民から進んで事態を悪化させているように思えます。