【入門編】MMTの意味を誰にでもわかりやすく簡単に解説

 日本ではカタカナ語の他にローマ字で略する単語もあり、出会ったときに「何これ? どんな意味?」とはてなマークが付きますよね。

 MMTも意味がわからず、はてなマークが付く単語の1つかもしれません。

 経済学的な意味の方のMMTを、わかりやすく「どんな意味でどんな内容か」解説します。

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MMTの意味

 MMTをググると経済と医療の2つの意味があります。
 医療の方は徒手筋テストという意味だそうです。

 本稿では経済のMMTを扱います。

 MMTはModern Monetary Theory(モダン・マネタリー・セオリー)の略です。

 Modernとは近代的・今日的という意味。マネタリーとは金銭的や貨幣の意味です。Theoryが理論ですからModern Monetary Theoryは現代貨幣理論と翻訳されます。

 MMTは現代貨幣理論という意味でした。では現代貨幣理論とは何か? 内容についてもさわりだけ解説します。

MMTが「現代」貨幣理論である意味

 なぜMMTは「現代」貨幣理論なのでしょうか。古代でも中世でもなく現代と付くのか。これには意味があります。

 MMTは中央銀行制度を前提とした貨幣理論です。そして中央銀行制度が生まれたのは17世紀末、イングランド銀行が端緒です。

 これは「近代に入ってから中央銀行制度ができた」のではなく「中央銀行制度ができたからこそイギリスで産業革命が起きて、近代の幕開けが訪れた」と言うべきです。

 イギリスの産業革命は近代の幕開けであると同時に、資本主義の始まりでした。近代資本主義は中央銀行制度を前提としており、その貨幣構造を解き明かすのがMMTです。

 MMTが「現代」貨幣論である意味は、中央銀行制度を前提としているからです。

 もう1つMMTが前提としているものがあります。それが信用貨幣です。MMTは「中央銀行制度+信用貨幣」という意味だと捉えてOKです。

信用貨幣とは

 信用貨幣と中央銀行についても、さわりだけ触れておきましょう。

 信用貨幣とは現在、私たちが使っている貨幣です。あなたのお財布の1万円もそうですし、500円硬貨もそうです。ドルやユーロだって信用貨幣です。

 信用貨幣の反対語は商品貨幣です。商品貨幣とは「商品を担保とした貨幣」です。例えば貨幣が金や銀でできていて、その金銀の価値が貨幣価値を担保しているケースが考えられます。

 専門的な話は避けます。貨幣は昔から信用貨幣が使われていました。

 信用貨幣とはいわば単なる数字やメモリです。「これは貸しだからな」という取引を数字化したものが貨幣です。「貸し借りの数字化」とも言えます。ややこしいですね――(笑)

 ともかく信用貨幣は商品に制約されません

 よって銀行は「手元に資金がなくても」お金を創造することで融資できます。これを信用創造と言います

 詳しくは以下の記事を参照してください。

 手元資金に制限されずに融資できるなら、いくらだって貸せることになります。もちろん貸付にも制限があり、それは借り手の返済能力です。

  1. 信用貨幣は商品を担保にしていない
  2. よっていくらでも信用創造できる=貨幣を生み出せる
  3. しかし融資額は借り手の返済能力に依存する

 これが信用貨幣の特徴です。

 MMTが「自国通貨建て国債はいくら発行しても――インフレ制約以外は――問題ない」と主張するのは、政府は通貨発行権を持っており返済能力が無制限だからです。

中央銀行制度とは

 中央銀行制度とは17世紀末、イギリスのイングランド銀行から始まりました。

 中央銀行の特徴は非常に簡単です。

  1. 民間銀行の預金を受け入れる「銀行の銀行」
  2. 通貨の発行を政府から委任されている「発券銀行」
  3. 実質的には政府の一機関と考えられる「政府の銀行」

 上記の3つの役割が中央銀行にはあります。もっと簡単に言えば政府から通貨発行権を委任されている「銀行の総元締め」と考えることができます。

 ちょっと複雑ですよね。こういった複雑な中央銀行制度の構造と役割を解き明かし、理論化したのがMMTです。

MMTの意味をまとめると

 MMTの意味をまとめていきましょう。

 MMTとは中央銀行制度を前提条件とした貨幣論であり、近代に入ってからの貨幣構造を解き明かす学問です。

 MMTによれば近代の貨幣構造は、政府の一機関である中央銀行が実質的に引受先となり政府に融資している格好です。
 そして中央銀行は政府の一機関であり、政府には通貨発行権がある。

 この構造を簡単に言えば「自分で自分に融資して、自分で自分に借りている」と言えます。一般的に、こういったお金の動きを借金とは言いませんよね。
 だからこそMMTでは「自国通貨建て国債はインフレ制約以外で、いくらだろうと問題ない」と断言します。

 最後にインフレ制約について触れておきます。

 インフレとは需要>供給の状態です。国債を発行して誰かに渡せば使用するので、需要が増えます。需要が増えすぎると需要>>>供給と需要過多になります。

 需要過多では経済が混乱します。したがって国債発行は供給能力に依存していると考えられます。これをインフレ制約と言います。
 簡単に言えば「供給能力よりあまりに大きい需要はまずいよ」です。

まとめ

  1. MMTとはModern Monetary Theoryの略語で、日本語訳では現代貨幣理論の意味
  2. MMTが「現代」である意味は中央銀行制度を前提条件としているから
  3. MMTとは「中央銀行制度+信用貨幣」が前提の理論

 MMTの意味をできるだけ簡略化して、わかりやすくまとめてみました。

 日本の経済状況を考えるときに、MMTは従来とは少し異なるレンズを我々に提供してくれます。MMTというレンズを通すと日本には財政問題が存在しないと理解できます

 MMTをこれから勉強したい人には、2つの本をおすすめします。

 1つは中野剛志氏の著書「奇跡の経済教室」です。主に信用創造について解説されており、非常にわかりやすく書かれています。

 「基礎知識編」と「戦略編」があります。まず基礎知識編から読むことをおすすめします。

 本格的にMMTを勉強したいなら、L・ランダル・レイ現代貨幣理論入門がおすすめです。

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 この1冊でMMTのすべてが理解できます。ただしやや難しめなので、奇跡の経済教室などを読んでウォームアップした後をおすすめします。

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