日本学術会議の任命拒否はなぜ問題か?その理由について徹底解説

 日本学術会議の任命拒否が話題になっています。

 なぜ問題になっているのか、よくわからない人も多いでしょう。問題になっているポイントは理解していても、スタンスをどちらに置くか悩んでいる人もいるかもしれません。

 今回の記事では問題とされるポイントと、任命拒否の肯定・否定どちらの主張も検討します。より整理して問題を考えられますよ。

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日本学術会議の任命拒否問題とは

 まず日本学術会議委の任命拒否問題について、経緯をおさらいしましょう。

 2020年9月に日本学術会議が推薦した会員候補のうち6名を、菅総理が任命拒否しました。任命制になった2004年以降、政府が任命拒否したのは初めてです。

時系列

 2020年8月31日に日本学術会議は、会員候補を安倍総理に提出します。9月28日に任命対象者の名簿が返送されるも、6人が除外されていました

 10月1日の加藤官房長官の会見で、会員6名を任命しなかったことが判明。10月2日に加藤官房長官は、人事を見直す考えがないと明らかにします
 同日、日本学術会議の有識者3名がヒアリングに出席して抗議。

 10月3日に日本学術会議は幹事会を開き、菅総理へ6人の任命と任命拒否した理由の説明を求めます。10月4日に立憲民主党の枝野代表は、任命拒否を明確な違法行為と断言。

 10月5日に菅総理は会見で「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と説明しました。
 10月6日になぜか加藤官房長官は、日本学術会議の人件費を公表

任命拒否された6名と共通点

  1. 芦名定道 キリスト教学者:京大教授
  2. 宇野重規 政治学者:東大教授
  3. 岡田正則 法学者:早稲田大教授
  4. 小澤隆一 憲法学者:東京慈恵会医科大学教授
  5. 加藤陽子 歴史学者:東大教授
  6. 松宮孝明 法学者:立命館大教授

 6名の共通点は安保法制や特定秘密保護法への反対です。十分な説明が現段階ではありません。反対したことが理由かどうか、確定はしていません

任命拒否で問題のポイント

 任命拒否で問題になっているポイントは主に3つです。「拒否理由の説明が不十分」「学問の自由の侵害」「手続きに正当性がない」です。

拒否理由の説明が不十分

 菅総理は拒否理由を「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と説明しました。とすれば、6名を除外したことでどのように「総合的、俯瞰的に日本学術会議の活動が確保される」のか、明らかにしなければなりません

 6名の学者は業績も経歴も立派なものです。一方で、除外する理由はあまりに抽象的です。

 日本学術会議任命拒否の肯定派は、さもありそうな理屈で説明しようとします。しかし当事者たる菅総理から、十分な説明は未だにありません。

学問の自由の侵害

 「学問の自由」の侵害に当たるとの指摘もあります。

 政府に助言することが日本学術会議の役割です。そのための学問や研究をする組織が日本学術会議です。

 人事権を不当に行使して学問の方向性を制限するなら、学問の自由の侵害です。
 しかし任命拒否批判派からも「憲法問題にせず、根拠法に照らし合わせて反論するべき」との指摘も。

 現段階で学問の自由の侵害に該当するかどうか、はっきりとはしていません。

手続きの正当性がない

 日本学術会議の役割は政府への助言です。よって政府の指揮監督を受けては、適切な助言ができません。政府から独立した機関だからこそ、政府への助言が可能です。

 とすると菅総理は日本学術会議の任命を、原則的には拒否できません。拒否する場合は相当の理由がなければなりません。

 今回、何もかもすっ飛ばしての任命拒否です。手続きに正当性がないとの指摘は説得力があります

任命拒否を肯定・擁護する意見

 一方で、日本学術会議の会員任命拒否を擁護・肯定する意見もあります。

前例主義の打破

 「菅総理は日本学術会議の任命拒否で、前例主義を打破したんだ」と肯定派は言います。前例主義を打破するには相応の、打破されなければならない理由が必要です。
 打破のための打破などあってはなりません。

名誉職になれなかっただけ

 任命拒否を「単に名誉職に学者がなり損ねただけ」と矮小化する意見もあります。「なり損ねただけで学問の自由だとか、手続きの正当性だとかうるさいなぁ」というわけ。

 さすがに、この手の擁護は説得力がゼロです。

 助言が役割の組織人事に手を突っ込んで説明が不十分なことを、擁護するだけの理由になりません。

古くさい組織の日本学術会議が悪い

 日本学術会議のさまざまな問題を指摘する声もあります。組織が古い、問題を遅々として解決できないなどです。

 日本学術会議に問題がないとは言いません。しかし日本学術会議に問題があることと、任命拒否は全く別の問題です。任命拒否をしたからと、日本学術会議の問題は解決しません

学問の自由が大事ならいっそ民営化すればいい

 「学問の自由が大事ならいっそ民営化してしまえ!」という乱暴な意見があります。政府の予算に頼らず、自分たちで財源を確保しろとの主張です。

 例えばJT(日本たばこ産業株式会社)がスポンサーになったとして、たばこの有害性について研究できるでしょうか。

 政府が予算を出すからこそ、完全な学問の自由が保障されている側面もあります
 民営化すればいいという主張は、乱暴で見識のない愚見に過ぎません。

学問の自由は勝ち取るもの

 「学問の自由は勝ち取るものであって、政府に保障してもらうものではない!」と、したり顔で主張する有識者もいます。

 学問の自由とは人権の一種です。したがって上記有識者の愚見に従えば「人権は勝ち取るものであり、政府に保障してもらうものではない」のだそうです

 さまざまな説がありますが、人権は少なくとも政府が保障するものです。学問の自由も政府が保障しなければなりません。

Twitterでは擁護・肯定派が多数

 日本学術会議の任命拒否問題は、簡単に言えば「慣例を菅総理が破り、なおかつ説明が全くない」ことが問題です

 単純に「何の理由もなく好き勝手されて、納得がいかない!」という話です。

 ところがTwitter上でクラスタリングしたところ、肯定派が多数のようです。
 菅総理を批判する声より、日本学術会議を批判する声が多いのです。
参照 日本学術会議に関してはツイッター上では任命拒否肯定派が批判派を上回りそうという話(鳥海不二夫)

 自民党議員がブログで「日本学術会議は中国とつながっている」という陰謀論を発表したり、「日本学術会議の会員は、年金が死ぬまで貰える」というデマがメディアで拡散されたりしました。
参照 「学術会議会員になれば年金増える」はデマ 野党ヒアリング詳報その2 – 毎日新聞

 他にも、加藤官房長官が人件費をなぜか公表しました。日本学術会議叩きに持っていきたい意図を感じるのは、筆者の気のせいでしょうか

 まるで、公務員叩きの再現映像を見せられているようです。

日本学術会議の任命拒否問題に見る危うい空気

 日本学術会議の任命拒否問題のポイントは1つです。「説明不十分、かつ意味不明に人事権を発動したので混乱している」です
 結果が学問の自由への侵害です。

 ところが多くの人のイメージで、日本学術会議は悪者になりました。Twitterで任命拒否肯定派が多いのがその証拠。

 悪者は叩かれなければなりません。悪いところがなければ、重箱の隅をつついてでも叩かれなければなりません。なぜなら悪者だからです。

 相対する菅総理は正義の味方になりました。正義の味方は何をしても、正しいはずです。正しい理由は後から考えて、取って付けても正しいのです。なぜなら正義の味方だからです。

 上記のような構図ができあがりつつあります。

 公務員叩きの再現と申し上げた意味が、理解いただけたでしょうか。

 正当な理由なく雰囲気と空気で「悪者」を叩くことを、全体主義と呼びます。往々にして「悪者にされた人たち」は、単にいじめられているだけです。
 大衆は「悪者」を叩くことで正義の快感を得て高揚します。

 なぜこのようなことが言い切れるか。菅総理の説明が未だにないからです。

 権力を行使し、行使した理由を明確にできない
 大衆が行使した理由を後付けで考え、正当化し、日本学術会議を叩く

 どう見ても全体主義そのものです。

Als die Nazis die Kommunisten holten, habe ich geschwiegen, ich war ja kein Kommunist.
Als sie die Sozialdemokraten einsperrten, habe ich geschwiegen, ich war ja kein Sozialdemokrat.
Als sie die Gewerkschafter holten, habe ich geschwiegen, ich war ja kein Gewerkschafter.
Als sie mich holten, gab es keinen mehr, der protestieren konnte.

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義者ではなかったから。
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。
そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった

まとめ

  1. 菅総理が任命拒否をした理由はまだ不明
  2. 一部では、安保法制や特定秘密保護法への反対が理由だと囁かれている
  3. 未だに十分な説明が菅総理からなされていない
  4. 手続き上の正当性が疑われる
  5. 学問の自由への侵害が疑われる
  6. 正当な理由はないがTwitterでは任命拒否肯定派が多数
  7. 公務員叩きの再現のように、日本学術会議叩きが始まった
  8. これは全体主義の萌芽である
  9. 今、声を上げないと次の標的はあなたかもしれない

 日本学術会議の動きは当初、全く追いかけていませんでした。興味がなかったからです。しかしTwitterで話題になったので追いかけてみたところ、非常に恐ろしい結論となりました。

 日本学術会議の任命拒否問題。あなたはどう考えますか?

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阿吽
14 日 前

菅さんが安倍総理よりも一歩踏み出している部分が出てきましたね・・。(安倍政権時代も官邸が任命に難色を示したことじたいはあるそうです)

菅さんは改革にやる気満々の顔をしてます。

安倍総理と違って突然降ってわいた総理任命だから、政権維持が目的なんてちんけなものではなくて、長年ため込んできたやりたかった改革を一気にやったろう、そうしようという仕事のできる男のやる気を感じます。その点は安倍総理以上ですね・・。

(改革病の罹患者の総理は、私としては甚だ迷惑ですが・・・・(ーー;))

.
>日本学術会議の任命拒否問題。あなたはどう考えますか?

任命権があるなら、任命しないという権利もありそうな気もしますし、なんとも言えないですね・・・。

ただ、拒否した理由を説明しなければ、菅総理は延々この問題で追及され続けるでしょうね。

(まあ、気に入らないから拒否した以上の理由があるのかどうかは、知りませんが・・(笑))

.
あとは、Twitterは安倍応援団改め菅応援団が騒ぎやすい場所ですので、Twitterの世論を見て判断するのもちと尚早かとも・・、

JNN世論調査、菅内閣の支持率70.7%(10/5(月) 6:22配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/11862b087f0ea344dcea16ae951fa7e4000c3224

の、中で・・、

「日本学術会議」をめぐる学者6人の任命見送り
妥当だ 24%
妥当ではない 51%

世論的には(10月5日の時点では)妥当ではないという印象です。

.
また、学問の自由を守るために、日本学術会議を諸外国同様、実際に独立すべきとの意見もありました。

詳細は下記をお願いいたします。(費用面についても、いちおうは、ですが書いてありました。)

↓ ↓ ↓

学問の自由を守るために日本学術会議を完全民営化する方法
https://news.yahoo.co.jp/articles/10b3aeef83b041503fc3b5faef611ca9ece9904d

.
個人的に、さらに遠くまでこの問題のいきさつを予想しますと・・、世論的には今回の件は反対だけど、菅内閣自体は支持するという安倍総理時代同様の逆転現象がまた起こる可能性があるのではないかと思います。

(ただし、菅総理は安倍総理よりも安定的政権運営に興味がない感じもありますので、安倍政権時代よりかは火種として大きくなる可能性もこれは捨てきれない可能性もあるのではないかと思います)

Last edited 14 日 前 by 阿吽
阿吽
Reply to  阿吽
14 日 前

(すみません、上記文章の全面文章微調整バージョンです・・。大きい差はありませんが、こちらが今回投稿の本文いうことで、すみません・・。)

菅さんが安倍総理よりも一歩踏み出している部分が出てきましたね・・。(安倍政権時代も官邸が任命に難色を示したことじたいはあるそうです)

菅さんは改革にやる気満々の顔をしてます。

安倍総理と違って突然降ってわいた総理任命だから、政権維持が目的なんてちんけなものではなくて、長年ため込んできたやりたかった改革を一気にやったろう、そうしようという仕事のできる男のやる気を感じます。その点は安倍総理以上ですね・・。

(改革病の罹患者の総理は、私としては甚だ迷惑ですが・・・・(ーー;))

.
>日本学術会議の任命拒否問題。あなたはどう考えますか?

任命権があるなら、任命しないという選択じたいもありえそうな気もしますししない気もしますし、どうなんですかね・・・。

ただ、拒否した理由は説明しなければ、菅総理は延々この問題で追及され続けるでしょうね。

(まあ、気に入らないから拒否した以上の理由があるのかどうかは、知りませんが・・(笑))

.
あとは、Twitterは安倍応援団改め菅応援団が騒ぎやすい場所ですので、Twitterの世論を見て判断するのもちと尚早かとも・・、

JNN世論調査、菅内閣の支持率70.7%(10/5(月) 6:22配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/11862b087f0ea344dcea16ae951fa7e4000c3224

の、中で・・、

「日本学術会議」をめぐる学者6人の任命見送り
妥当だ 24%
妥当ではない 51%

世論的には(10月5日の時点では)妥当ではないという印象です。

.
また、学問の自由を守るために、日本学術会議を諸外国同様、実際に独立すべきとの意見もありました。

詳細は下記をお願いいたします。(費用面についても、いちおうは、ですが書かれていました。)

↓ ↓ ↓

学問の自由を守るために日本学術会議を完全民営化する方法
https://news.yahoo.co.jp/articles/10b3aeef83b041503fc3b5faef611ca9ece9904d

.
個人的に、さらに遠くまでこの問題のいきさつを予想しますと・・、世論的には今回の件は反対だけど、菅内閣自体は支持するという安倍総理時代同様の逆転現象がまた起こる可能性があるのではないかと思います。

(ただし、菅総理は安倍総理よりも、安定的政権運営には興味がない感じもありますので、安倍政権時代よりかは火種として大きくなる可能性もこれは捨てきれない可能性もあるのではないかと思います)