MMT(現代貨幣理論)が日本に上陸して1年半ほど。多くのMMT批判や議論がありました。中には「MMTは嘘つきだ」と断じる人まで。
MMTを嘘つき呼ばわりする人たちはなぜ、そう感じたのか? そしてどこに誤謬があるのか? 分析することで今後、どのようにMMTを議論していくかの参考になれば幸いです。
MMTが嘘だと感じる理由
MMTを嘘つき呼ばわりする人たちが、なぜMMTを嘘だと感じるのか検討してみましょう。
財政赤字は悪いものという信仰
まず「財政赤字=悪」という思い込み、信仰です。信仰とは「根拠がなくても信じること」です。
MMT論者なら「いやいや、誰かの赤字=誰かの黒字だから。財政赤字がなくなると、民間黒字や資産もなくなるよ?」と説明するでしょう。
しかしそこは信仰。信仰とは「根拠なく信じること」であり、裏を返せば「根拠を示されたからと、信仰をやめることはない」のです。
通貨の信認・信用という不確かなメモリ
通貨の信認や信用も信仰です。
MMT批判者たちは「MMTでは通貨の信認が毀損されハイパーインフレになる!」と言います。
「通貨の信認の大きな毀損=ハイパーインフレ」なら「通貨の信認の毀損=インフレ」です。とすれば「通貨の信任が高まる=デフレ」であり、デフレこそが望ましいのでしょうか?
ところがハイパーインフレ以外で、通貨の信任なる言葉は出てきません。したがって通貨の信任に実態などない、ということでしょう。
「通貨の信任」とはある種の精神論です。戦時中の「必勝の信念」と一緒です。
赤字の民主主義理論に則る現実対応への不信
「赤字の民主主義」とはジェームズ・M・ブキャナンが提唱しました。「民主主義は一度赤字国債を許せば、国民が甘えて赤字国債拡大を支持する。よって民主主義では財政赤字が拡大し続ける」という理論です。
これをMMTに当てはめると「MMTで財政赤字を拡大すれば、国民がそれを支持し続ける。よって、際限なく財政赤字が拡大してハイパーインフレになる」です。
MMTが「インフレになったら金融引き締めや緊縮財政で、インフレ率を抑制すれば良い」とする主張への反論に使われます。
――20年以上も緊縮財政を支持する国民が、極東の島国にいますが何か? と、皮肉の一つでも言いたくなります。
共通するのは「嘘だと信じられる理由を探す」
MMTは論理破綻している! 嘘だ! と断じる人たちは、MMTが嘘であってほしいと願っています。
そして嘘である理由を探します。
もっとも――当初はバリエーション豊かであった批判ですが、MMTの反論にさらされて一つ、また一つと潰えていきました。
それでも彼らがMMT批判を止めず、MMTを嘘だと断じるのは――信仰ないし願望に他なりません。
センメルヴェイス反射とMMT嘘つき論
センメルヴェイス反射とは「今までの通説や常識に反する新事実を、受け入れられないこと」です。
例えば地球の周りを太陽が回っていると信じている人々にとって、地動説は受け入れがたい理論でした。
他にも出産で患う産褥熱は、医師の手についた雑菌が原因でした。しかしその新事実はしばらくの間、受け入れられませんでした。
「自分たちの間違いが多くの妊婦を殺した」と、多くの医師が認められなかったからです。
財政破綻論を主張してきた人たち
財政破綻論者はMMTを決して受け入れられません。今まで「国の借金で日本は破綻する!」と主張して、緊縮財政を強いてきたのです。
財政赤字に問題がないなど、受け入れられるわけがありません。
こうして彼らは「MMTが嘘つきであってほしい」と願うのです。自分たちの嘘がばれないことを祈りながら――。
MMTが100%正しい! などと筆者は思っていません。しかし今までのどの理論より、現実をよく説明できている理論だと思います。
ネットには独自の経済理論を持つ大家(?)がたくさんいます。その独自理論の99.9%は、箸にも棒にもかからないものです。
まとめ
- 財政赤字は悪いものという信仰
- 通貨の信認・信用という不確かなメモリ
- 赤字の民主主義理論に則る現実対応への不信
- 共通するのは「嘘だと信じられる理由を探す」
- 信じたくないが嘘つき呼ばわりする理由
MMTを嘘と断じる人たちの考え方、ないし感じ方を筆者なりに分析してみました。
もっとも現実を齟齬なく説明できる理論がMMTだと、筆者は思います。もちろんMMTが100%正しいなどと言うつもりはありません。
MMTを多くの人に伝えるため、議論方法などの参考にしてくださいね。
MMTをがっつり学ぶなら以下の著書は必読。