アベノミクスの失敗と成果なき8年の原因をわかりやすく解説

 安倍政権が終わりを迎えようとしています。

 報道によれば安倍政権は世論から支持されており、辞意を表明した内閣として異例の支持率の高さです。国民は安倍政権とアベノミクスに、成果ありと判断しています。

 しかし本当にそうでしょうか? データと経済から巨視的に俯瞰すると、アベノミクスと安倍政権は「運が良かっただけ」と結論されます。
 アベノミクスは失敗だったが、たまたま状況が良かったと言えます。

 アベノミクスが失敗と評価される理由と、失敗の原因を解説します。

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アベノミクスの概要

 アベノミクスは2012年12月に発足した、安倍政権の経済政策です。

第一の矢 大胆な金融政策
第二の矢 機動的な財政政策
第三の矢 民間投資を喚起する成長戦略

 三本の矢と呼ばれる政策が、アベノミクスの根幹でした。しかし実際に実施されたのは、金融政策と規制緩和です。第二の矢である財政出動は、ほとんど実施されませんでした。

 上記がアベノミクス第一期であり、2013年から2015年にかけての政策です。

 アベノミクス第二期は、2015年から始まります。

  1. 希望を生み出す強い経済 2020年にGDP600兆円
  2. 夢をつむぐ子育て支援 希望出生率1.8
  3. 安心につながる社会保障 介護離職ゼロ

 2015年からの第二期は、具体的な政策よりスローガンの色が強くなっています。一億総活躍社会が掲げられ、アベノミクスは成功していると喧伝されました

 以下の記事で、より詳細にまとめています。

 上記の第一から第三の矢や、第二期のスローガンでは具体的な政策が見えてきません。
 実際にアベノミクスで実施した政策は、以下のようなものでした。

  1. 二度にわたる消費税増税と緊縮財政
  2. 規制緩和・移民拡大による外需依存の増加
  3. 社会保障費の削減

 アベノミクスでもっともインパクトが大きいのは、なんと言っても消費増税です。2014年4月、2019年10月の二度にわたって消費増税し、5%だった消費税は10%に引き上げられました。
 税収が増えた、これはアベノミクスの成果だ! と喧伝されました。

 入管法改正による、移民拡大政策もインパクト大でした。その他にも水道事業民営化、農協改革などの規制緩和が目白押しでした。

 社会保障費の削減も、アベノミクスの顕著な特徴の一つです。

 詳しくは以下の記事にまとめています。

データから見るアベノミクス

 より具体的に振り返るために、数字ベースでアベノミクスを眺めてみましょう。

経済成長が鈍かった

 アベノミクスで日本は、戦後最長の景気拡大と言われました。後に「じつは2018年10月には景気後退局面でした」と訂正が入りました

 余談ですが心ある有識者は、当時から「すでに景気後退局面では?」と指摘していました。日銀と政府による大本営発表、とアベノミクスが揶揄される所以です。

 アベノミクスをコロナ禍前の2019年10-12月期までの7年間で見ると、2%目標だった経済成長率は0.9%平均でした。
 特に個人消費は停滞し、7年間累計で0.4%しか増加していません

 個人消費が伸びなかったのは、実質賃金が下落ないし停滞していたからです。
 詳しくは以下の記事をどうぞ。

トリクルダウンが起きなかった

 アベノミクスはもともと、トリクルダウンを前提にしていました。トリクルダウンとは果実から果汁がしたたり落ちるように、大企業が儲けたらおこぼれで国民の所得も増える、という理論です。
 トリクルダウン理論は現在、世界中で起きないと証明され、否定されています。

 法人企業統計では2012年から2018年の6年間で、経常利益は73%、株主配当は88%の増加を見せました。
 一方で同じ6年間に、人件費はわずか6%しか増加していません

 トリクルダウンは日本でも、起きなかったのです。

財政出動しなかった

 アベノミクスは第二の矢で「機動的な財政政策」を謳っています。いわゆる財政出動のことですが、実際にはほとんど実施されませんでした。

 それどころか二度にわたる消費増税で、緊縮財政ですらありました。第二の矢がアベノミクスの中核と見なすなら、アベノミクスは実行されていなかったと言えます。

 安倍政権では新規国債発行額も、年々減少しています。

 「安倍総理は財務省と戦っている!」「緊縮財政は財務省のせいなんだ!」というバカバカしい言説がありました。安倍総理が財務省と戦っていたとしたら、ついぞ一度も勝てなかったようです。

 もちろん、これは単なる皮肉です。

成功と失敗に分かれる評価

 アベノミクスを評する声は、成功と失敗に二分されます。本稿では失敗と結論づけています。失敗と結論づける理由について、解説します。
 加えて成功と評しにくい、到底評せない理由も紹介します。

外需の好調と完全リンク

 先に結論から言えば、アベノミクスは海外の経済状況に恵まれました。そして2018年10月の景気後退は、まさに米中貿易戦争の最中のことです。

 つまり海外経済が不透明になると、日本経済は風邪を引いたのです。
 外需によって戦後最長の景気拡大(仮)は支えられ、海外経済の不透明さによって終焉を迎えました。

 では外需だけで、日本の失業率はあそこまで低下したのでしょうか? 成果と言われる失業率低下の謎に迫りましょう。

アベノミクスの成果の正体

 アベノミクスで成果として、もっとも喧伝されるのが失業率の低下です。非正規雇用も増えましたが、それ以上に正規雇用も後半から増えた! アベノミクスのおかげだ! と言われます。

 本当に?

 労働市場の多くを占めた団塊世代とは、1947年から1949円生まれを指します。60歳で定年として、2007年から労働市場にインパクトを与えます。

 本来なら2007年から徐々に、団塊世代の定年に伴う正規雇用の入れ替えが起こるはずでした。

 しかし2008年に、リーマンショックが起こります。世界経済と同じく、日本経済も大打撃を受けました。
 年越し派遣村も話題になり、数年間は雇用が喪失し失業率が上昇しました。

 リーマンショックからの自律回復は、2010年から始まります。
 安倍政権は「リーマンショックからの回復期」+「人口構造の変化の影響」+「海外経済の復活」という3つの要素に恵まれました

 有り体に言えばこの時期は誰が総理をやっても、失業率は同じ水準まで回復したはずです。

評価は成功と失敗があるが……

 アベノミクスの成果と喧伝される失業率低下を、アベノミクスを評価する人たちは「どの政策が功を奏した」と言えません。
 なんとなくアベノミクスと言われている時期と、失業率を関連付けているだけに過ぎません。

 アベノミクスを成功と評する声のほとんどは、どの政策がどの結果につながったのかという因果関係が説明できないのです。

 「薬のどの成分が効いたのかは不明だが、病気が良くなったのはこの薬のおかげに違いない!」と言われて、納得できます?

 一方で失敗と評する声は、具体的な政策を議論しています。大企業優遇や緊縮財政、消費増税などが失敗だと理由を挙げられます。

 このように考えると、アベノミクスを成功と評するのはよく言っても強弁。失敗と評するのが、ロジカルな思考でしょう。

アベノミクス失敗の理由

 アベノミクスが失敗した理由は、非常に簡単です。

 第二の矢である機動的な財政政策を、実施しなかったからです。

 経済学的な常識ですが、日本はデフレでした。したがってインフレになるように、財政出動や積極財政を実施しなければなりませんでした。
 加えて金融政策は景気引き締めに効果を出せても、景気浮揚は原理的に不可能です。理由は以下の記事を参照してください。

 確かに複数の要素によって、失業率は低下しました。しかしその先の「人手不足だから、イノベーションに積極的に投資する」という段階に至らなければなりませんでした。

 アベノミクスは幸運にも、海外の経済が好調でその一歩手前まで行きました。しかし消費増税や移民拡大で、次の段階に行けませんでした。

 アベノミクスはデフレを脱するチャンスを、無駄にしてしまったのです。アベノミクスの失敗は、幸運を活かせなかったことかもしれませんね。

まとめ

 安倍政権はもうすぐ、終焉を迎えます。一つの区切りに「アベノミクスは成功か失敗か」など、しっかりと総括せねばなりません。
 やった結果を総括し、評価してこそ次に改善できます

 ところが日本は、こういった工程が苦手です。

 終わったら「終わってんから、シャンシャンでええやん。今さら厳しく評価しても、変わるわけちゃうねんし」となあなあになります。
 だから20年間も、デフレ続きで失敗しています。

 失われた20年が、失われた30年にならないように。あなたもしっかりと「アベノミクスとは何だったのか?」を考えてみてはいかがでしょうか。

 下記はシュペングラーの奇書である、西洋の没落を読み解いて日本に応用した中野剛志氏の著作です。

 アベノミクスへ直接の言及はありません。しかしアベノミクスも失敗し、日本はこれからどこに行くのかを知るためにおすすめの著書です。

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2 Comments
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Muse
2 月 前

今回の記事内容についても、我々(つまり「進撃の庶民」関係のブロガーや読者を含む、いわゆる経世済民の理念を持つ国民)にとっては、いわば”常識中の常識”であるといえます。

ところで、今更ながら驚き唖然としたのが、安倍の辞任表明後の世論調査の結果。それによると、「安倍内閣の支持率が62.4%、安倍首相の実績評価は71%であった」とのこと。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a0ada38e9842f2cd76ebb361cccc5c10d6298c62

(リフレ派で、その言説には個人的には全く賛同できない)田中秀臣氏も、世論調査で安倍支持を表明する連中を「ワイドショー民」と呼んで呆れ返っている様子。
https://ironna.jp/article/15802

世論調査における安倍支持者の中には、政財界や言論界における新自由主義者・グローバリストの連中はもちろん、思考停止・視野狭窄の極みともいえるネトウヨのクズどもや、さらには自己責任礼賛の社会的風潮を当然視する20代~30代の若年層も含まれてはいますが、やはり、「何事もテレビや新聞などの印象に左右され、感情的に判断する情弱愚民の群れ(上記の「ワイドショー民」)」がかなりの多数を占めているという感じがします。個人的な主観ですが、昼間からポカ~ンとテレビを見ている年金暮らしの高齢者とか専業主婦とか。。。

まあ、TwitterなどのSNSやブログで正しい情報を拡散するのも重要ですが、(もともと自分が興味・関心のあるネット情報しかアクセスしようとしない)ノンポリ層に果たしてどれほど伝わるのか甚だ疑問だし、ましてや「ワイドショー民」にとっては触れる機会すらない。

やはり、経世済民の理念を持つ人間たちそれぞれが、ネットだけではなく、家族や親戚、友人・知人、会社の同僚・先輩・後輩、その中でも暇を持て余しているようなノンポリのワイドショー民に対して、個別にアプローチして目覚めさせる必要があると思います。自分の場合はリアルな人間関係が全くといってよいほどないので無理ですが(笑)。