「国の借金が1000兆円! 大変だ! 財政再建だ!」と、新聞やメディアでは報道されます。つまり国の借金を返さなきゃならない、と主張しています。
彼らは国の借金と言われる1000兆円もの国債を返済しきると、どういうことが起きるのか? あまり真剣に考えていないみたいです。
国の借金1000兆円をなくすと、とてもヤバい事態が起こります。
どうヤバいのか? なぜそうなるのか? 最新の現代貨幣理論(MMT)から解明しましょう。
負債と資産の大原則
誰かの負債は誰かの資産。これは負債の大原則です。
借金をするには、貸す人が必要です。借金した側からすれば借金は負債ですが、貸した側からすると債権、すなわち資産です。
誰もお金を貸していないのに、借金だけが存在するなんてあり得ません。借金の反対側には必ず、同じ額の債権が存在します。
この原則はとても重要ですよ。
余談ですが国内には、3つの経済主体があります。政府、企業、そして個人です。政府の借金は必ず、企業か個人の資産です。これも大切なポイントです。
信用創造と通貨と銀行
信用創造とは、お金が発生するプロセスです。三橋貴明氏はわかりやすくするため、貨幣創出と換言してます。
長らく貨幣は、主流派経済学で誤解されてきました。信用創造も間違った説明を――あのWikipediaでも! ――されてきました。
長々と信用創造の構造を解説しても仕方ないので、シンプルに要点のみ解説します。
貨幣とは誰かが借金することで発生し、借金を返済することで消滅します。よって現代貨幣理論(MMT)では、貨幣=負債であると喝破しています。
あなたが銀行から100万円を借ります。このとき銀行は、あなたの口座に100万円という数字を書き込みます。これが、預金通貨と呼ばれる貨幣が発生するプロセス――つまり信用創造――です。
そうです、銀行はあなたに貸すための100万円を、誰かから借りたわけではありません。
逆にあなたが銀行に100万円を返済すると、100万円という預金通貨が消滅します。
貨幣は誰かの借金によって発生し、借金の返済によって消滅する。国の借金を返済しきったら……と想像してください。
信用創造の詳細な解説は、以下からどうぞ。
国の借金1000兆円がなくなるとこんなことが起きる
「誰かの負債は誰かの資産」「貨幣は借金とともに生まれ、返済とともに消滅する」の2点を思い出してください。
この2点を国の借金1000兆円に当てはめましょう。国の借金がなくなると、どんなことが起きるのか……恐ろしい未来が待っています。
国の借金1000兆円を返済するためには、民間から税という形でお金を吸い上げなければなりません。よって民間から、1000兆円の貨幣が消滅します。民間の資産1000兆円が消えると、換言してもいいでしょう。
貨幣量の激減や、増税による民間の可処分所得の激減によって、すさまじいデフレが発生します。GDPの急激な縮小を招くことでしょう。
ん? 数年で返済するんじゃない。数十年かけるんだから、そんなことにはならないって?
数年のマイナス効果が、数十年に薄く引き延ばされるだけです。
もしGDPの規模を保つなら、国の借金1000兆円の代わりに民間が1000兆円の負債を増やさないといけません。
そんなことをすれば不良債権化し、金融危機が起きるのは容易に想像できます。
なぜなら民間には、通貨発行権がないからです。
政府黒字化のあとに金融危機が起きやすいのは、経済史では常識。逆側で民間の負債が、拡大するからです。
政府の借金1000兆円を返済したら直でGDPが縮小するか、民間負債が拡大して金融危機を引き起こしGDPが縮小するかの2択です。結果は同じ、という点では1択ですが……。
- 税で国債を返済しきると、民間資産1000兆円が消滅
- 急激なデフレと景気悪化とGDP縮小に襲われる
- GDPを縮小させまいと、民間が1000兆円の負債を拡大すると金融危機を起こして、やっぱり2.の結果に
まとめ
日本の場合、国の借金と言われる1000兆円は自国通貨建て国債です。つまり円で国債を発行しています。そして歴史上、自国通貨建て国債を返済しきった国家はありません。
なぜならそんなことは、バカのすることだからです。
いつでも理論上は通貨発行権によって返済可能な国債を、経済危機やデフレを引き起こしてまで返済しようとする国家があるでしょうか?
……あっ、ありましたね。極東の島国です。
なお資本主義とは、負債を拡大しながら経済成長する経済形態です。したがって資本主義である限り、国債は長期的に増加し続けます。政府は赤字で正常、健全なのです。
国の借金がなくなるとき。そんなときは永遠にきません。もしくるとすれば日本国民の超貧困化、ないし日本がなくなるときでしょう。
>誰もお金を貸していないのに、借金だけが存在するなんてあり得ません。
私の体験ですが、現代貨幣理論を信じられない人を相手に「国の借金の問題」について議論したら、まず話は噛み合わないです。私はそういう人に「国の借金とはいうけど、だれが債権者でだれが債務者なの?」といいますけど、そのときの返答は「債務者はいるけど債権者がいない借金だ!」というよくわからないものです。自分で書いてみても全くよくわかりませんわ。
まあ公人でない相手に、無理してまでこちらの考え方を分かってもらうつもりはないです。しかし現代貨幣理論については、国会議員にも賛成派と反対派がいるでしょうから、公開討論くらいはした方がいいです。ただ現代貨幣理論を信じない方の政治家が、そうした議論に応じてくれるとは思えませんが。
>「国の借金とはいうけど、だれが債権者でだれが債務者なの?」
この質問、私もします。
>そのときの返答は「債務者はいるけど債権者がいない借金だ!」というよくわからないものです
……え、マジですか。何という理不尽な返答。