大阪都構想2020の住民投票は、わずか5ヶ月後の11月に予定されています。大阪市民の皆さんはもう、賛成か反対か決めていますか?
今回は大阪都構想の区割りについて、わかりやすく解説します。今の住所がどうなるのか? 気になりますよね。細かく目次を分けているので、気になる部分から読んでOKです。
余談ですが大阪府大阪市天王寺区四天王寺に住んでいる人は、大阪都構想が実現すると「大阪府天王寺区天王寺四天王寺」という住所になりますよ。圧倒的ではないか! 天王寺は!
2015年の大阪都構想と何が違うの?
大阪都構想2020は、2015年に住民投票で否決された大阪都構想と何が違うのでしょうか? 結論のみ最初に書くと「細かな調整以外、大枠は一緒」です。
5区から4区になった
大阪都構想2015は5区案が採用されていましたが、大阪都構想2020では4区案に修正されました。もし2020年11月に予定されている住民投票で否決されれば、次は6区案で出されるでしょう。
実際に大阪都構想2015の5区案が否決されたあと、4区案と6区案が検討されていました。なぜ4区案が採用されたのか? 5区案より4区案の方が優れている点はどこなのか?
常識的な疑問ですが、誰も答えを明示できません。
ちなみに2013年の議論では、5区案と7区案が検討されていました。
大阪都構想2015、大阪都構想2020のどちらも区が少ない方を採用しています。しかし採用理由は明かされません。
筆者は、区が少ない方が調整が楽だからでは? と推測しています。
平成25年8月に7区案と5区案でそれぞれ北区と中央区を分離・合体させる案が出た。
キタとミナミは分離させるべき、福島はキタと合わせるべきという意見が出たため、試案1(7区、北区・中央区分離)と試案3(5区、北区・中央区分離)が残った。
大阪都構想と最適行政規模
ちなみに上記の研究では、7区案がもっとも最適化される結果となったそうです。
新庁舎建設を取りやめ初期コストを圧縮
初期コストだけで600億円かかると、大阪都構想2015は反対派から批判されました。大阪都構想2020では新庁舎の建設を取りやめて、初期コストを圧縮することになりました。
新庁舎建設を見送れば、300億円以上の初期コストが圧縮できるとの試算が出たからです。
財政格差が出ないように調整
5区案でも財政格差が出ないようにと調整されていたはずですが、大阪都構想2020では4区案の方が財政格差が出ないように調整しているとされています。
具体的にはどの区にも、繁華街、ビジネス街、下町が配置される区割りになっています。
細かい調整がされただけで大枠は一緒
大阪都構想2020は、大阪都構想2015と大して変わっていません。大きな違いは区割りだけです。その区割りについて、5区より4区の方が最適という理由は示されていません。
そもそも区ごとの財政格差を気にするなら、1区にしてしまえばもっとも最適化されるではありませんか!
ん? それは今の大阪市じゃないかって? その通りです。
大阪都構想2020の区割りの概要
大阪都構想2020の区割りについて、ある程度詳細な概要を参照していきましょう。
4区の名称と決定の経緯
4区の名称はそれぞれ「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」となる予定です。大阪市の公式見解によれば「住民に親しみやすい名称」「地勢などを含めたわかりやすさ」を重視した結果とのことです。
現在の区はどこに含まれる予定?
現在、大阪市には24の行政区があります。それぞれ「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」のどこに配置されるのか? 以下の表で整理してみました。
淀川区 | 北区 | 中央区 | 天王寺区 |
此花区 港区 西淀川区 淀川区 東淀川区 | 北区 都島区 福島区 東成区 旭区 城東区 鶴見区 | 中央区 西区 大正区 浪速区 住之江区 住吉区 西成区 | 天王寺区 生野区 阿倍野区 東住吉区 平野区 |
それぞれの区の人口と職員数
それぞれの区の人口や職員数など、重要な数字を表で参照してみましょう。
淀川区 | 北区 | 中央区 | 天王寺区 | |
職員数 | 2400人 | 2800人 | 3100人 | 2600人 |
歳出額 | 1396億円 | 1669億円 | 1851億円 | 1556億円 |
人口 | 60万1千人 | 77万6千人 | 72万4千人 | 64万1千人 |
昼間人口 | 66万7千人 | 101万8百人 | 120万2千人 | 66万3千5百人 |
面積 | 67.24平方km | 48.5平方km | 65.28平方km | 44.22平方km |
企業本社数 | 16543社 | 30148社 | 27853社 | 22639社 |
病院・診療所数(千人あたり) | 943カ所(1.6カ所) | 1770カ所(2.4カ所) | 1824カ所(2.6カ所) | 1368カ所(2.1カ所) |
大阪都構想可決後の流れは?
大阪都構想2020の住民投票は、2020年11月に予定されています。報道では11月1日が有力視されているとのこと。
2023年に大阪市長選・市議選が行われ、2025年に大阪市を廃止して特別区に移行することになります。2025年には万博、IRの開業(大阪が選ばれた場合)も控えています。
この2つは「大阪都になったから行われた! 大阪都構想は大成功だ!」との宣伝に、大いに利用されるでしょう。
大阪都構想の区割りで住所はどうなる
大阪都構想が可決されると、もっとも気になるのが住所ですよね。なにせ大阪市は解体され、廃止されます。もちろん大阪府大阪市○○区という住所は、使えなくなります。
住所は原則的に「特別区名+今の行政区名+町名」になります。例えば現在が「大阪府大阪市北区豊崎」だった場合、「大阪府北区北豊崎」になります。
上記ならまだマシですけど「大阪府大阪市天王寺区四天王寺」は「大阪府天王寺区天王寺四天王寺」に。どこかの早口言葉かよ。
大阪都構想の区割りが抱える問題点
大阪都構想はニアイズベター達成のために、大阪市を解体して特別区にするとされています。けれども大阪都構想の区割りには、重大な矛盾ないしジレンマが存在しています。
そもそもなぜ特別区に分割するのか
そもそも区ごとの財政格差を気にするなら、特別区にせずに大阪市というひとつの自治体の方が最適です。
また大阪都構想と最適行政規模によれば、真に最適化しようと思うと7区が最適解とのことです。
大阪維新の会の説明によれば、大阪市という大きな自治体では地域ニーズに対応しきれない。だから大阪都構想で特別区に再編し、小回りがきくようにしてニアイズベターを実現するとのことです。
ニアイズベター達成に必要な条件
ニアイズベターを達成する条件として、2つのことが必要です。
- 地域特色を持ったニーズになること。つまりニーズを一定程度、統一化すること
- 財源格差が少ないこと
大阪市を4つに分割したとしても、ニーズの多様性が変わらなければニーズへの対応力も変化しないはずです。特別区になったら突然、どんなニーズにも対応できます! なんてことはありません。
つまり例えば「北区は繁華街」「中央区はビジネス街」など、地域ごとの特色に偏ればニーズに対応しやすくなります。区ごとのニーズの統一化、特色化です。
しかし大阪都構想は、財政格差を重視して区割りを決定しました。どの区にも繁華街、ビジネス街、下町ができるだけ均等に割り振られています。
すなわちこれは、ニーズが多様化せざるを得ないということです。
財政格差を重視すればニアイズベターは実現できず、ニアイズベターを実現しようと思うと財政格差を許容せざるを得ません。
結論。大阪都構想でニアイズベターは実現しない。
まとめ
今回は大阪都構想2020の、区割りについて解説しました。
筆者はご存じの通り、大阪都構想に反対の立場です。途中でやや皮肉めいた文脈がありますが、それは致し方なしとご容赦いただけると幸いです。
大阪都構想2020の住民投票は、もうたったの5ヶ月後です。大阪市民の皆さんは賛成するか、反対するか決めましたか?
大阪市は解体されると、二度と大阪市として再生することはありません。
じっくりと熟考して、賛否を決定してくださいね。