なろう小説-玉葱とクラリオンは政経ブロガーも驚きの面白さ-内政系

 いやあ……270万文字は読み応えがあります。なんとか読み終えました。面白くてハマったなろう小説、玉葱とクラリオンのレビューします。

 結論から言えば「作者の知識量が頭おかしいレベル」「最初はコミカルなのに、最後はとても濃厚なストーリー展開」「異世界転移ではなく、じつは空想科学小説だった」です。

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玉葱とクラリオンのネタバレとストーリー

 ソシャゲで遊んでたら異世界に迷い込んでいた青年、但馬波留。剣と魔法が支配するゲームみたいな世界に困惑しつつも、現代人の知識を頼りに立身出世しようと目論むが……そこはかつて勇者が君臨していた内政チート国家だった。

 空腹は満たされ清潔な衣服を纏う人々。経済的に町は潤い鉄筋コンクリートの家が建ち並ぶ。生半可な知識は通用せず、ろくな職にもつけず埋没する彼は、生き残りをかけた起死回生の策に打って出た。

「他ならぬあなただけに、特別なお話があるんです。いえいえ、怪しくなんかありません。私の故郷ではねずみ講と言うのですが……」

 これは詐欺師と蔑まれ、後にソープ王と呼ばれた男の異世界サクセスストーリー。

玉葱とクラリオン[小説情報]

 上記は、玉葱とクラリオンの作者が書いた紹介文です。序盤はまさに、なろう小説テンプレート的な異世界転移ストーリーが進んでいきます。けれど油断するべからず。

 序盤から「なんか……あれ?」と思っていたら、読者を巻き込んでどんどんストーリーが加速し始め、最後は壮大なSF、空想科学小説、サイエンスフィクションにまっしぐらですよ。
 これは異世界転移なろう小説じゃない。序盤はテンプレート詐欺に違いない!

 途中にクラウゼヴィッツやらマキャベリ、ケインズetc……社会科学の大御所学者や大古典をぶち込んできたり、理系の――おそらく現実でちゃんとした理論――学者や理論をぶち込んできたり……。

 ストーリーも引き込まれるほど面白いのですが、これらの蘊蓄うんちくも楽しめる人には楽しめます。他の人のレビューを見ていると、すっ飛ばして読んでいる人もいるようですが問題ありません。問題ないはずです。

 但馬波留の人物像やヒロイン、登場キャラたちは現実の人間くささを感じさせる印象です。無理してキャラを立てていないので、ストーリーも蘊蓄うんちく以外はすっと頭に入ってきます。

玉葱とクラリオンの作者は何者……

 玉葱とクラリオンの作者は水月一人さんです。270万文字に及ぶ壮大なストーリーを、2年ジャストで完結させる筆の速さ。

 決して飽きが来ず、中だるみのないストーリー展開はとてもよく練られていて「すごい!」の一言です。けれどそれ以上に「この作者、一体何者?!」と思わされます。

政治経済ブロガーの筆者すら驚く知識量

 筆者は政治経済ブロガーですが、その筆者すら驚きの知識量です。ストーリーの中でクラウゼヴィッツ、ケインズ、マキャベリの他にも経済学の講義はあるわ、アダム・スミスやら貨幣論が出てくるわ……。

 理系の科学的な理論もたくさん出てきます。電流がどうやら、カメラの理論構造やら、蒸気機関に電球やら……。小説を読んでいるのか、違う何かを読んでいるのかわからなくなる瞬間がある小説です(笑)

 作者の知識量と知見の広さには、ただただ脱帽するしかありません。

理系知識に脳みそバーン

 筆者は理系の知識に乏しいですから、途中で理解を諦めた文章もあります。脳みそバーンです。玉葱とクラリオンのレビューを見ていると「どちらの知識にもついて行けない!」「どちらか一方なら……」という人も多いです。

 蘊蓄うんちくの部分は気軽に、斜め読みするくらいでOKでしょう……でしょう……でしょう。

設定の説得力は半端ない

 設定がとても練られている&マジ社会科学に基づいている箇所多数ありですから、設定の説得力は半端ありません。玉葱とクラリオンのストーリーは、読者を力尽くでどこか別の場所に連れていきます。

 気がつけば玉葱とクラリオンワールドに、引き込まれて後戻りできなくなっている感じ。

内政系なろう小説では一押し

 内政系だけでなく、戦争や戦闘もあり、魔法チートありのストーリーですが、やはり内政系の比重が高い。玉葱とクラリオンは、内政系なろう小説が好きな人におすすめします。

 他にも「なろう小説は好きだし、異世界転生ものも好きだけど、もっと重厚かつ説得力のある小説が読みたいんじゃ~!」と思っている人にも、絶対におすすめしたいのが玉葱とクラリオンです。

 では一般受けはしないのか? というと、そんなことはありません。蘊蓄うんちく部分をさらりと読み流すなら、ストレスフリーでわくわくドキドキしながら読めますよ。

玉葱とクラリオンのレビュー紹介

 玉葱とクラリオンのレビューは、以下のリンクから読めます。

玉葱とクラリオン – レビュー一覧

  1. やはり壮大な詐欺 筆者注:よい意味です
  2. ただただ素晴らしい作品。読んでみて?
  3. すべての『お約束』を伏線にする物語
  4. 切り口はなろう系、中身は本物志向 、後半は超濃厚。
  5. 私は二度読み返した今もまだ、評価をつけられずにいます。

 「素晴らしい! 面白かった! 作者頭おかしい(よい意味で)!」的なレビューと、あまりにも濃厚すぎて「評価つけられないんですけど……」的なレビューに分かれる作品です。

他の方もレビューでおっしゃっているように、あらすじは「詐欺」です。主人公はソープ王どころか、最後には○○になってしまいますし、あらすじのような軽いノリは読み進めていくうちに霧散します。

ただ、全てを読み終わった後、ふと、こんな感想が胸をよぎるのです。確かにこれは詐欺師の物語かもしれない。絶望の中ですべてを騙し、最後には主人公も読者自身も騙された。そんな仕掛けがあらすじにも込められているのかもしれない、と。

そんなわけで、騙されたと思って読んでみてください。そんじょそこらの凡百なチート内政や無双など霞んでしまうくらいの濃密な内容に驚かされます。科学、化学、工学、冶金、農学、歴史、戦争論、政治学、はては宗教に至るまで、幅広い知識と教養に裏打ちされた世界観と物語構成は深い満足感を与えてくれることでしょう。

玉葱とクラリオン – レビュー一覧

 筆者はむちゃくちゃ楽しめました。この満足感は天下一品の濃厚ラーメンとチャーハンを、食べきったときの満足感に似ています。「もうマジお腹いっぱい!」的な(笑)

 なお玉葱とクラリオンは書籍化、コミカライズなどはしていないようです。なぜに……。

他にもおすすめの異世界系アニメやマンガ

 先日、ネットカフェで見かけて読みました。異世界転移した叔父さんが、現代に戻ってきて甥っ子に世話になりながらYouTuberをしつつ、どこかズレたコミカルな日常を送る物語。ぶっちゃけギャグ漫画。

 アラフォー以上のおじさん世代(筆者もそう)におすすめ。若い子は読んでいても「??」となる部分が多いかもしれません。

 盾勇者の成り上がりは、ご存じの通り超メジャー作品でなろう小説から発表されました。

盾の勇者の成り上がり
男主人公 裏切り 不信の主人公 ダーク系? 成り上がり 盾の勇者 奴隷 残酷な描写あり 異世界転移

 コミカライズもされていて、シリアスながらドキドキわくわくするストーリーで超おすすめ。

 本好きの下剋上はアニメ化もされた、なろう小説です。

本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~
R15 異世界転生 ファンタジー 異世界 転生 女主人公

 本好きの少女が異世界転生し、マインとして本のない世界に本を普及させようとしたら、なぜか貴族になって最後には一国の主になる物語。

 紹介した作品もそれぞれ、レビューを書こうかと思います。それではまた。

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4 Comments
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4 年 前

>玉葱とクラリオン

早速アマゾンで購入しようと思ったのですが、まだ書籍化はされていないのですね。。。違法でトラブルも多そうな「ネズミ講(無限連鎖高)」より、普通に商品を介在させた「MLM(ネットワークビジネス、マルチ、特定商取引)」の方がいいのではとか、まだ未読なので想像が膨らみます。

>最後には一国の主になる物語

ネタバレ~(笑)。まあ、私はあまりネタバレとか気にしないので問題ありません。アニメを毎週楽しみにしていますが、「転生者ならではの創意工夫」がちゃんと描かれているため、そこを高く評価しています。

「自分がもし、異世界や過去にタイムスリップしたなら……」を真面目に考えるのは楽しいですね。オセロ、ナンプレ(数独)、100マス計算を普及させるとか、白米じゃなくて玄米食べろ(栄養学)とか、そうしたことならスキル無しで実践できるかもとか妄想します。

「本好きの下剋上」の一期で、マインが計算道具を使わずに暗算するくだりがありましたが、あの時代(中世ヨーロッパ?)では何気に凄いことなのでしょうね。

Reply to  高橋 聡
4 年 前

私も、設定やプロットを書くのは好きだし割りと得意なのですが、脚本を書いて具現化する作業は、いつもなかなか大変だなぁって思います^^