身を切る改革! という言葉ほど、おぞましいものはありません。なぜなら身を切る改革によって、日本はまさになます切りにされてきたからです。
小泉改革のとき、日本人は痛みに耐えたら豊かになれると思っていました。実際は痛みに耐えたら、痛みが続いただけでした。
身を切る改革をすれば、身が切られてつらいだけ。より貧困に、より貧乏になっていくだけです。
身を切る改革という言葉が、いつから使われ始めたのか? その本質とは何なのか? じっくりと徹底的に、そしてわかりやすく解説します。
身を切る改革とは
ここ10年ほどの間に、身を切る改革という言葉が政治で登場し、頻繁に使用されるようになりました。昔でいうところの襟を正してや、他山の石としてなどと、同じようなイメージで「身を切る改革」という言葉は使用されます。
まず身を切る改革という言葉が使用された、歴史や意味合いから見ていきましょう。
身を切る改革の歴史
weblio辞書によれば身を切る改革とは、野田佳彦総理が2012年1月26日に行政改革などを例えて「身を切る改革」と表現したようです。
野田佳彦総理は消費税増税を中心とした改革案を、公務員給与などの行政改革を引き換えに行うことを「身を切る改革」といいました。
身を切る改革の意味
身を切るという言葉は一般的に、自分の身が切られるように非常につらく、厳しいことという意味です。
しかし身を切る改革となると、やや意味合いが異なります。野田佳彦総理によれば「消費税増税という負担増を、国民に我慢してもらう代わりに」「行政改革という行政にとっての『厳しくつらい改革』も実行します」という、取引――トランプのいうところのディール――が「身を切る改革」です。
もう少し表現を簡単にします。「国民に痛みを与えるので、自分たちも痛い思いをします。どっちも痛い思いをしているので、一緒に頑張りましょうね」が、身を切る改革です。
ちなみに身を切る改革には、痛い思いをどっちもしないという選択肢はありません。
身を切る改革の代名詞、維新の会
身を切る改革といえば、維新の会が真っ先に思い浮かぶ政党です。Googleで「身を切る改革」と検索すると、維新の会のサイトが1位と2位を独占しています。流石という他ないでしょう。
見てください。URLまで「miwokiru」です。上記のページの概要はこうです。
- 行政改革をするために、まずは政治家自ら身を切る! そのために
- 議員定数削減!
- 公務員の人数削減!
- 小さく効果的・効率的な合成機構
- 規制改革
要するに「税金をあまり使わない行政にする」というのが、身を切る改革の正体なのでしょう。「政治家も公務員も、税金の使用を最小限にします! だから国民の皆さんへの社会保障も最小限にしてください!」というわけです。
自民党と安倍政権も身を切る改革は大好き
Googleで「身を切る改革」を検索した3位は、なんと首相官邸です。
ありがたくって涙がちょちょぎれますね。結局上記も内容は維新の会とほぼ変わらず「国家公務員の新規採用を抑えています」「公務員の給与を下げました」「国会議員の歳費を減らしました」など。
こういうのが受けるんだな。国民には! と、維新の会も安倍総理も、きっと確信しています。
身を切る改革の嘘と欺瞞性
身を切る改革の欺瞞性はと嘘は、枚挙に暇がありません。しかし簡単に、いくつかのポイントのみ解説します。
- そもそも日本に財政問題は存在しないので、身を切る必要がない
- 金持ちが100万円失うのと、貧困層が100万円失うのはわけが違う
- 国家という共同体の身を切ることは、国民が身を切るのと一緒
それぞれ、解説していきます。
存在しない財政問題
行政改革や消費増税が必要だといわれるのは、端的にいえば「税金を上げるかコストを下げるかで、赤字国債を返したいから」です。つまり「国の借金問題j」があるので、節約して返済しないといけないという考え方です。
この考え方は、すでに学術的にも実証的にも歴史的にも「誤りであること」が証明されています。自国通貨建て国債では、財政破綻もデフォルトも起こりません。そして日本は、100%自国通貨建て国債です。
詳しいことは、下記の記事を参照してください。
そもそもですね……「身を切る必要性が全くない」ことが、身を切る改革の嘘と欺瞞です。
身を切ることの逆累進制
百歩譲って、身を切る必要性があるとします。ありませんが……ありませんが!
政治家と庶民では、切られる身の大きさが異なります。マグロと鰯みたいなものです。マグロから刺身5きれ分のみをもらっても、まだまだ残っています。しかし同じ分だけ鰯から取ると、骨だけになってしまいます。
金持ちから取る100万円と、貧困層から取る100万円は「痛みが異なる」のです。
もっとも、お金持ちの人は安心してください。なぜなら日本には、身を切る改革などそもそも必要ありません。
共同体のなます切り
千歩譲って身を切ることの逆累進制も、我慢できたとしましょう。
政治家は胸を張って「身を切る改革で公務員を50%減、政治家も50%減、政府予算も50%減にしました!」といいます。
政府支出はイコールで需要ですから、政府部門の需要が激減しましたので景気がさらに悪くなります。また公務員がいないので、行政サービスが受けられません。政治家なんか50%減らしたところで、大して歳費が減るわけではないので脇に置きます。
政治家は「自分たちの身を切ったつもり」かもしれませんが、全て国民に返ってきます。「身を切る改革」とは、共同体のなます切りです。痛みに耐えたら、その先も痛みしかありません。
身を切る改革と緊縮財政の関係
身を切る改革は、緊縮財政と非常に深い関係にあります。上述したように、いわゆる国の借金問題を真に受けている人たちが、身を切る改革の主導者です。
日本は20年以上、緊縮財政をしてきました。緊縮財政では国民は、絶対に豊かになれません。絶対に豊かになれないので、出てきた詭弁が「身を切る改革」です。
豊かになれない言い訳、豊かにさせない言い訳が「身を切る改革」の意味です。
痛みを分かち合うという、政治家の責任放棄
コロナ禍で「痛みを分かち合う」という言葉が、政治家やメディアから発せられます。10万円の給付を受け取らない政治家などは、この類いです。
そして給付を受け取らない政治家を、一定数の国民は賛美します。
本当に日本って、こういう不合理かつバカなことが好きですよね。
なぜバカなことなのか。
- 政治家が10万円を受け取って使えば、国民の所得が10万円増える
- 使わなければ、10万円は国庫に返る死に金
- 特に地方の政治家は、地方のために受け取って使うべき
地元が困ってるときに「給付金を受け取りません!」という政治家は、非常識かつ頭がおかしいです。
また国民が困っているときに「痛みを分かち合う」とかいっている政治家も、責任放棄しています。なぜなら政治家の役目は「国民の痛みを和らげること」だからです。
まとめ 身を切る改革をやめさせよう
自分が骨折したときに、近くに来て「痛みを分かち合おう!」「身を切る改革!」とかいって、自分の骨を物理的に折ろうとする人がいたとします。
怖いですよね。完全に狂人ですよ、本当にいたら。
普通は救急車を呼ぶとか、病院に連れて行くとかしますよね。
日常レベルではみんな、どうしたらいいのか理解してます。ところが政治レベルになると途端に、狂人を狂人と思わなくなります。どうしてなのか? は、言及しなくても自明でしょう。
日本に身を切る改革は、みじんも必要ありません。これ以上無駄に、身を切らないで欲しいものですね。
戦時中の「欲しがりません勝つまでは」の精神が、悪い意味で生き残ってますね。
平成の緊縮政策と、かつての戦時中は、もう自分の中では、ほとんど同じイメージです。
物わかりが良すぎる庶民と、それに甘える無能な権力者だったり軍上層部だったりインパール作戦牟田口だったり。
あの戦争の敗因の一つは、軍上層部の補給の軽視による餓死者の多さみたいな話も聞きますし。
小泉政権以降、自己責任論に殺された自殺者たちと、景気の衰弱は無関係じゃない。
ネトウヨ系の、「お国のために滅私奉公」の価値観が、必ずしも国の豊かさにつながらないのは、お国のためになら、庶民が犠牲になればいいという、旧日本軍そのままの価値観だからですね。
そりゃ愛国心と、弱者切り捨て自己責任論の相性が良いはずですね。
これ、権力者側から見ても、長い目で見ると大損な構図ですね。
日本人の勤勉で従順な性格を考えると、どんなに生活が豊かでも決して怠け者にならないのは昭和の時代の繁栄で既に証明済み。
国民の学力が高く、科学技術進歩しまくりで、映画に漫画に音楽にと文化面だって充実。
国民みんな裕福だからストレスも少なく、勉強に集中できるから優秀な才能を開花させやすかった。
それが平成以降、急に結果をだせなくなったのは、国全体が栄養失調に陥ってるからです。
親がリストラされて、学費がなくて、夢をあきらめた。
そんな子供の持つ優れた才能は、竹中平蔵に、二束三文の派遣労働で、消耗させられてしまう。
これを「欲しがりません勝つまではの自己責任論」で解決しようとすると、科学技術も文化も衰弱して、後進国化してしまいます。
>そりゃ愛国心と、弱者切り捨て自己責任論の相性が良いはずですね。
なんですよね~。自分を愛国者と喧伝する人は、信用ならんのです(笑)
(。・_・。)ノ 話が逸れちゃうですけど『痛みを分かち合う』の正しい見本。
https://t.co/5YsqrMg0Mq
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