上級国民の意味とは?由来や時代背景、例文、反義語まで簡単解説

 近年、上級国民という言葉が一般的に広まってきました。上級国民という言葉はネットスラングですが、当初はどのような意味だったのかご存じですか? じつは皮肉から発祥していました。

 上級国民という言葉の意味、由来、時代背景などをわかりやすく解説していきます。
 最後には上級国民や格差に関する、興味深い新著もご紹介しますね。お時間のある方は是非ともどうぞ。

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上級国民の意味とは?

 上級国民という言葉は、2015年に2ちゃんねるの嫌儲板から発祥したネットスラングです。当初の意味は、一般国民とは違うという専門家に対しての皮肉でした。「一般国民にこのデザインは理解できない」という専門家に対して、上級国民と皮肉ったのです。

 しかし現在では、何らかの特権的な措置を受けている人という意味で使用されることが多いです。
 日本に身分制度は存在しませんが、上級国民の存在を信じている人も一定数います。

上級国民という言葉の由来

 上級国民という言葉の由来は、2015年の東京オリンピックエンブレム盗用問題に端を発します。エンブレムのデザイン性を理解できるデザイナーと区別する意味で、(デザインを理解できない)一般国民という言葉が用いられました。
 対してデザイナーたちを皮肉る意味で、上級国民という言葉がネット上で使用されたのです。

 上級国民という言葉が広まったのは、2019年4月の池袋交通事故です。赤信号を無視して乗用車が交差点に突っ込み母子2人が死亡、他9名が重傷を負いました。
 乗用車を運転していたのは飯塚幸三・元通産省工業技術院長です。瑞宝重光章も受賞している華やかな経歴と、事故後に逮捕されなかったことから「特権的な措置を受けているのではないか?」との疑義が巻き起こりました。

 この疑義の中で飯塚幸三容疑者を上級国民と非難する声が上がり、一般的にも上級国民という言葉が広まります

 上級国民という言葉の意味は現在、特権的な立場や措置を指して使用されることが多いようです。

上級国民という言葉が生まれた時代背景

 上級国民という言葉の、直接の発祥はオリンピックエンブレム盗用問題でした。しかし上級国民という言葉が広まった背景には、言葉とその意味への共感があります。

 日本は2000年代初頭から、グローバリズムと新自由主義によって格差が問題化しました。また失われた20年とデフレで、国民が貧困化していきました。
 富める者はますます富み、持たざる者はますます貧しくなっていったのです。

 このような時代背景において、多数の国民はルサンチマンと不満を抱きます
 「自分たちとは異なる特権的な身分の人たちが存在する」と、心の中で共感したからこそ上級国民という言葉の当初の意味が変質し、また広まったのではないでしょうか。

上級国民と見なされる人たち

 上級国民と見なされる人たちは、どのような職種や属性でしょうか?

  • 政治家
  • 芸能人やマスコミ関係者
  • 公務員やキャリア官僚
  • 天下り団体
  • 在日韓国・朝鮮人
  • 勝ち組企業の役員
  • タックスヘイブンを利用して租税回避をしている人
  • 一部の政治団体

 安定してたくさんの所得を得ている(と思われている)人たち、ないし何らかの特権を持っている(と思われている)人たちが、上級国民と見なされるようです。

上級国民を使った例文

  • 上級国民が特権階級だとすると、一般国民は下級国民だ
  • 上級国民という明確な定義は存在していない
  • 上級国民という言葉のニュアンスには、多くのルサンチマンが含まれている
  • どうやったら一般国民は、上級国民になれるんですか?

上級国民の類義語と反義語

 上級国民の類義語としては「特権階級」や「エリート」などが挙げられます。反義語は「一般国民」ですが、ネットスラングで生まれた「下級国民」も該当します。「貧困層」「低所得者」「庶民」「アンダークラス」なども上級国民に対する反義語として使用されることがあります。

上級国民の意味まとめ

 上級国民という言葉は、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)で2015年に生まれたネットスラングです。マスメディアやSNSなどを通じて、一般的に意味が認知されるようになりました。同時に下級国民というネットスラングも生まれています。

 現在、上級国民の意味は、特権階級を指して使用されることが多いです。この使用方法の背景には、格差社会や日本の貧困化、デフレといった経済問題が横たわっています
 また格差の拡大によって社会の分断が生まれる、とする説を現実に補強する現象ではないでしょうか。

 上級国民の意味とその背景について、ざっと解説してきました。言葉の意味ひとつをとっても、その時代の背景や状況、ニュアンスが反映されるものですね。

上級国民や下級国民というテーマの著作紹介

上級国民/下級国民(小学館新書)

 やっぱり本当だった。

 いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ──。これが現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音だというのです。

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 「上級国民/下級国民」はかなり話題になっている新著です。以下のようなレビューがあり、筆者もぜひ手に取ってみたいと思っている著作のひとつです。

 最近の某事件後「上級国民」という言葉がネットでよく知られるようになったが、この場合「上級国民」とは“不当に優遇されている”というニュアンスがあると思われる。一方、本書では世界的に見られる“本来マジョリティだった層の上下への分裂”を語っているが、善悪の問題ではなく必然的に行き着く先として自然現象に近いニュアンスで描いているように見える。

 その論の進め方は巧みで一気に読める歯切れの良さがあるが、同時にそれを言ってしまったら元も子もないという内容も多い。それがこの著者の言うところの“言ってはいけない”ことなのだろう。まず「団塊の世代」という既得権益者を優遇して格差を拡大させた日本の失敗について語り、次いで男女の性戦略についての論はこの分裂に生物学的基礎もあるように思わせる。その後は米国の状況を中心に語られトランプだのオルタナ右翼だのも登場させるが、本質は60年代以降人間が人類史上かつてない“異常な自由”を享受しておりその行き着く先は究極の自己責任社会になるしかなく、情報化社会での格差とは知能の格差に他ならないという点である。
 1つの希望?として、シンギュラリティ後は人間相互の知能の格差は無意味になるという趣旨のことを述べているが、これは一種の「加速主義」であろうか。

 なお、タイトルから日本の特権階級批判というガス抜き?を期待するとそれは違うので一応言及しておく。また、例えば日本人の生産性の低さについては生産性の指標の妥当性にも議論はあるところだし、その他論証というより著者の仮説の積み上げも多いので多少厳密さに欠ける面があるが、多くのデータや文献を引用して書かれており一般書としての説得力は十分と思われる。

上級国民/下級国民(小学館新書)›カスタマーレビュー

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