世界と日本で広がる格差社会と貧困の現状に対策や解決策はある?

 格差拡大と貧困は大きな問題ですが、見えにくい問題です。「格差が拡大している」と言われてもピンとこない人は多いでしょう。

 そこでしっかりと数字を示し、格差が拡大している現実を紹介します。

 どのような問題があるのかを分解し、数字で認識すると解決策も見えてきます。

 格差社会や貧困問題でもっとも重要なことは「一人ひとりが問題を認識すること」です。

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格差と貧困が世界で広がる

 1980年代以降、特に2000年以降から世界中で格差拡大しています。厚生労働省の「OECD主要国のジニ係数の推移」によれば、ジニ係数がジワジワと上昇しているのが見て取れます。

 ジニ係数とは社会における所得の不平等さを測る指標で、1に近くなるほど格差が大きいと示しています。

 例えば急激な経済成長を成し遂げた中国は、ジニ係数が0.46前後です。中国は貧富の差が激しく、さらに地域間の格差も広がっています。インドでも一部のエリートのみが経済成長の恩恵を受け、識字率の低い多くの貧困層にその恩恵は波及していません。

 インドや中国など急成長した国のみならず、日本やアメリカなどの先進国でも格差が広がっています

 アメリカでは富裕層の所得は激増していますが、低所得層の所得は過去30年間でほとんど増加していません。

 日本では2000年代初頭から格差拡大が始まり、最近では若年層にまで格差が広がる傾向を見せています。

 このように1980年代以降、世界中で格差拡大が確認されています

日本の格差拡大とジニ係数

 日本では特に1990年代からジニ係数が上昇し、格差拡大が確認されています。

 内閣府のデータでも高齢層に加えて、若年層でも格差が拡大していると確認されました。ジニ係数は3年ごとに計測されます。
 2017年は当初所得で0.5594と2014年より若干改善しました。
 それでもやはり高い水準を保っています。

格差社会の問題点

 「収入や財産によって人間社会の構成員に階層化が生じ、階層間の遷移が困難である状態になっている社会」が格差社会の定義です。

 要するに格差という名前の階級が固定され、一度非正規雇用になったらなかなか正社員になれない、低所得層から這い上がれない社会を指します。

 資本主義社会でも、社会設計によって格差を少なくすることが可能です。しかし1970年代から台頭した新自由主義とグローバリズムによって次々と規制緩和や構造改革が行われ、格差は拡大する一方です。

 規制緩和や構造改革、自由競争の強化は労働組合など中間団体の弱体化を招きました。中間団体が弱体化したことで資本主義に歯止めがかからなくなり、株主至上主義や労働分配率の低下が引き起こされました。

 こうして格差が生まれ、階級化された社会ではさまざまな問題が発生します。

拡大する貧困層

 格差社会の問題の多くは経済格差・所得格差に端を発します。貧困こそが格差社会の最大の問題です。

 新自由主義的な資本主義はトマ・ピケティが言うように、格差を拡大させ続けます。政治が経済に強く介入しないと格差拡大は止まりません。

 ピケティが発表した公式では「r(資本収益率)>g(経済成長率)」が進みます。要約すると富める者がさらに富み、持たざるものはさらに貧します

 こうして一部の富裕層と大半の貧困層に階級化されます。

一番の被害者「子供」

 格差社会において大人も被害を受けます。しかし一番の被害者は子供と言えます。

 子供は自らで貧困を抜け出すことができません。子供は、自分が産まれる家庭は選べないのです。日本では7人に1人の子供が現在、貧困状態にあります。

広がる教育格差・学力格差

 教育・学力差が付くのは学校外教育が主な理由です。学校内の授業や学校ごとの就学内容ではなく、塾などの学校外教育が格差の原因となっています。

 貧困家庭では子供を塾に通わせることができず、逆に富裕層は家庭教師すら付けることができます。こうした教育格差が学力として現れます。

 実際に東大生の6割は、年収900万円以上の家庭です。年収350万円以下の家庭はわずか9%弱しかいません。

貧困の世代間連鎖

 学歴は就職にも影響します。貧困家庭の子供は低学力・低学歴になる傾向が強く、将来の就職でも低賃金の仕事に就かざるを得ません。

 大人になって所得の低い仕事に就き、家庭を持ち、その子供もまた低学力・低学歴となり――延々と貧困の世代間連鎖がループします

医療格差

 日本でも地域による医療格差が顕著ですが、アメリカではさらにひどい医療格差が広がっています。

 アメリカでは医療保険に8.5%が未加入で、新型コロナの検査すら大変な金額がかかります。コロナウィルスの検査を受けたところ、3000ドル(30万円!)が請求されたという話も。

 アメリカの医療がとにかく高額なのは有名です。例えば2012年のニューヨークタイムズでは、貧困のために治療を受けず、虫歯がひどくなってから緊急救命室に駆け込むアメリカ人が急増していると報じました。

 医療が高額だと富裕層は助かり、低所得層は医療を受けられない事態が発生します。命の値段が人によって変わるのです。

地域格差

 地域格差の問題は医療だけではありません。

 日本では東京一極集中が問題視されています。首都圏にばかり投資した結果、地方は過疎化して衰退する一方です。

 過疎化すれば医療や教育にも格差が出ます。就業機会にも大きな違いが生まれます。

 日本では特に沖縄県や高知県、鹿児島県、徳島県などの貧困率が高いことが知られています。

格差拡大と貧困への対策

 格差拡大や貧困への対策・解決策はいくつか考えられます。しかし抜本的には「政府が経済にしっかりと介入する。自由競争をある程度、抑制的にする」以外にありません

 格差と貧困が広がるのは資本主義の本質だからです。

社会保障拡充による所得再分配

 現在は社会保障予算の増大が懸念され、社会保障削減が議論されています。しかし社会保障の削減こそが格差拡大の大きな原因の1つです。

 セーフティーネットが削減されたことで底が抜け、貧困に陥っても救済されない人々が増えています。例えば生活保護の水際作戦などはその典型例でしょう。

 格差拡大、貧困問題を解決するなら社会保障の拡充は必須です。

生活保護の補足率の強化

 貧困問題でもっとも手当を厚くするべきは、実際に貧困に陥った場合です。その意味で生活保護は最後の砦です。

 しかし生活保護の補足率はたったの2割しかありません。残りの8割は「生活保護を受けるべき水準」にもかかわらず、生活保護を受けることができていません。

 これは他の先進国と比べてとても低い水準です。先進国の生活保護補足率はドイツ64.5%、フランス91.6%、イギリス90%です。

 これは上述した、社会保障費削減に伴う水際作戦と無関係ではありません。GDP比での生活保護予算の割合も、日本はアメリカをぶっちぎって最低レベルです。

 せめて他の先進国と同程度まで、社会保障の拡充が必要です。

労働分配率の見直し

 1990年代以降、日本は労働分配率も低い傾向が見られます。加えて1998年から緊縮財政を続けてきた結果、デフレが慢性化して実質賃金もマイナス傾向です。

 労働分配率の低下と実質賃金のマイナス傾向は緊縮財政が大きな原因でしょう。

 加えて規制緩和や短期主義の蔓延による株主至上主義が、労働分配率の低下に大きく影響しています。

新自由主義的な政策の見直し

 格差が拡大し始めたのは、グローバリズム+新自由主義が蔓延し始めた時期と重なります。世界では1980年代から、日本では1990年代からです。

 格差拡大や貧困問題を解決しようと思えば、新自由主義的な現在の制度や政治を見直す必要があります

 均衡財政主義を捨て去り、1980年代以前の完全雇用を目指す政策に転換するべきです。さらに、ガタガタになり始めている社会保障制度の立て直しも必要でしょう。

ベーシックインカム

 ベーシックインカムは格差社会や貧困問題解決の切り札になるでしょうか。

 ベーシックインカムを否定こそしませんが、筆者はあまりの筋のいい政策とは思っていません。理由はいくつかあります。

  1. 現在の社会保障制度の拡充が先だし、手間もかからない
  2. もともとベーシックインカムは、新自由主義陣営から出てきた議論だから
  3. ベーシックインカム議論の発端である、AIが発展してから議論しても遅くないから

 ベーシックインカムという新しい政策ではなく、今までの社会保障制度を拡充することが最優先田尾ともいます。

まとめ

  1. 格差と貧困が世界と日本で広がっている
  2. 格差社会や貧困問題の一番の被害者は子供
  3. 格差社会と貧困の解決策は新自由主義から転換すること

 もはや無視できないほどに格差社会は深刻化し、貧困問題は迫っています。明日は我が身かもしれません。

 一人ひとりが問題を認識することこそ、まずは重要です。

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