大阪都構想の住民投票2015否決の全容からターニングポイントを探る

大阪の朝の風景

 本稿を書いているのが2020年2月22日早朝。今年11月に再度、大阪都構想の住民投票が行われる予定です。大阪都構想住民投票2020に際して、2015年の住民投票を振り返っておくことは重要でしょう。
 過去に何が起きたのかを知れば、未来に何が起きるのかを予測できます。

 大阪都構想を巡って行われた、2015年の住民投票の全容とターニングポイントを解説します。

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大阪都構想の住民投票2015概要

 2015年の大阪都構想住民投票は、結果的にはわずか1万741票の僅差で否決されました。当時の大阪の状況を知っている人間からすると、まさに奇跡とも呼べる結果です。

大阪都構想の始まりと2015年の住民投票に至るまで

 2008年に橋下徹が大阪府知事に就任します。当時の大阪の熱狂手は、大阪在住の筆者もよく覚えています。小泉政権を生み出した、あの熱狂に似ていました。

 2010年に大阪都構想が大阪維新の会から打ち出されます。2011年には大阪ダブル選が行われ、橋下徹が大阪市長に就任。大阪府知事には松井一郎が就きます。大阪維新の会と橋下徹の圧勝でした。
 このときに2015年までに大阪都構想を実現させる、と大阪維新の会は打ち出しています。

大阪都構想2015の概要は大阪都構想2020と区割りが異なるだけ

 2015年に大阪市の住民投票で争われた大阪都構想は、現在の大阪都構想と区割りが異なるだけです。基本的には全く同じもの、といって差し支えありません。5区が4区になっただけで、再提出されているのです。

デマと嘘が渦巻いた大阪都構想住民投票2015

 大阪市で2015年に行われた、大阪都構想の住民投票の選挙活動はひどいものでした。多くのデマと嘘が、大阪にばらまかれたのです。その嘘とデマの大半は、大阪維新の会や橋下徹が発信したものです。

 代表的なものだけあげましょう。

投票用紙に「大阪市における特別区の設置について」になっている

 「大阪市を存続させ、市内に特別区を設置します」ともとれる表現です。2015年の住民投票後に、問題として取り上げられました。

詐欺パネル問題

 メモリが等間隔でない、教育費の一部だけを抜き出して倍増したと主張する、大阪市の債務をさも橋下徹が減らしたように見せるグラフなど、あげればきりがないデマと嘘が蔓延りました。

主張がコロコロ二転三転する

 上記の画像は2012年の、大阪維新の会のポスターです。「大阪市は潰しません、バラバラにしません」と堂々と嘘を書いています。
 また大阪都構想の財政効果の額も、4000億円と主張していたのが検証にさらされ、最後には150億円にまでダウンしました。

 なお「財政効果額は赤字では?」との試算もありました。なお財政効果額が下がるにつれて、橋下徹は一丁目一番地の財政効果を「額の問題じゃない」と言い出します。

大阪都構想の住民説明会が、催眠商法と揶揄される

 2015年の大阪都構想住民投票前に行われた、住民説明会は催眠商法と揶揄されました。メモリのおかしなグラフを使うなどで、デマや嘘を吹き込んだとされたからです。
 行政が中立の立場で行う説明会が、明らかに賛成を誘うものであったのは間違いありません。

2015年の大阪都構想住民投票に向けて何が起こっていたか

 2015年、大阪都構想の住民投票が決定したのは、公明党が立場を翻したからです。元々自民党、民主党、公明党、共産党は大阪都構想に反対の立場でした。しかし大阪維新の会の圧力を受けて公明党は、大阪都構想には反対だが住民投票は容認と立場を変えました。

 大阪都構想は2014年、大阪市議会で1度否決されています。一事不再議の原則に則れば、すでに一度否決が決定していましたので、短期間で住民投票になること自体が相当無理筋な話です。
 詳しい経緯は、以下の記事でご覧ください。

 大阪都構想自体は、大阪維新の会の政治的パフォーマンス以外の意味を持ちません。大阪都構想に危機感を抱いた京都大学の、藤井聡教授が学者の立場から反対運動を展開しました。
 確か2015年1月のことだったかと記憶しています。

 2015年、大阪都構想を巡って大阪は真っ二つに割れます。賛成と反対、維新と非維新の対立です。大阪は分断されたのです。
 大阪都構想反対派にとって、藤井聡教授は理論的支柱となりました。

 2015年5月17日の住民投票まで、大阪では激しい議論と論争、対立が繰り返されました。
 当日まで選挙活動は続き、結果は奇跡的に1万741票差という僅差で否決です。

大阪都構想住民投票2015が終わった後の分析や言説

シルバーデモクラシーという間違った分析

 大阪都構想の2015年住民投票が否決されると、賛成派からは「大阪都構想が否決されたのは、シルバーデモクラシーだから」という議論が沸き起こります。
 つまり「若者は大阪都構想を望んでいたけれど、数の多い高齢者たちが大阪都構想を潰した」と、大阪の世代間闘争をあおったのです。

 しかしシルバーデモクラシーという主張と分析は、明らかに嘘や間違いの部類です。なぜなら……大阪都構想の住民投票で「普段は投票行動をしない若者の多くが、投票行動をした結果の否決」だからです。住民投票で上がった投票率の多くが、若者でした。

 ちなみにテレビで取り上げられた以下の画像は、期日前投票を含んでいません。期日前投票では、圧倒的に反対票が多かったのです。

くっきりとした南北の投票動向

 北が大阪都構想に賛成で、南が大阪都構想に反対。そんな傾向が、2015年の大阪都構想住民投票後に判明しました。

 この南北差は、一般的には「北が裕福で南が貧困だから」と分析されています。つまり大阪都構想が実現すると、南の方の特別区は予算的に負け組になるからという分析です。
 しかしそれだけではなく、大阪への愛着の差もあるのかもしれないと筆者は感じます。

ばらまき続けられる大阪維新の会の嘘

 大阪都構想住民投票2015の、大阪維新の会の嘘についてはまた別枠で近日中に記事を書きます。しかし明らかに、2015年の住民投票後に「嘘やったんかい!」となったものがあります。

 松井一郎は2015年の大阪都構想住民投票で「否決されたら民間人に戻る!」と宣言していましたが、大阪府知事から大阪市長に転身しただけです。
 また大阪維新の会や橋下徹は、2015年の大阪都構想住民投票前に「これがラストチャンス!」と吹聴してました。

 しかし2020年11月に、またも大阪都構想の住民投票が実施される予定です。

まとめ 大阪都構想の住民投票2020はどうなるか予測

 2015年に行われた大阪都構想の住民投票は、本当にひどい状況でした。嘘やデマが蔓延し、大阪市民が対立をあおられ分断されたのです。その中で奇跡的に、大阪都構想は住民投票で否決されました。

 あれから5年。2019年の大阪ダブル選と地方統一選では、大阪維新の会が圧勝しました。松井一郎が市長に、吉村洋文が知事に取っ替えられました。
 この流れでいけば、2020年の大阪都構想住民投票は可決の可能性が非常に高いと予測されていました。

 しかし大阪都構想と並列して語られるカジノでは、国会議員の収賄が話題になりました。またコロナウイルスで、大阪の対応が後手後手になっているとの指摘があります。
 大阪維新の会の大阪の政治に、疑義が発生しつつあると思いたいところです。

 大阪都構想によって大阪市という、政令指定都市を解体するのか。それとも大阪都構想を否決して、大阪市を存続させるのか。
 大阪市民の双肩に、大阪市の未来がかかっています。

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