【さらっと解決】大阪都構想と東京都の違いは?それとも一緒?

 今年の11月上旬に、大阪都構想の住民投票が予定されています。2015年と今年2020年の大阪都構想がほとんど同じとは知っているけど、まだまだわからないところがたくさんある! なんて人も多いでしょう。

 もっとも疑問なのが「大阪都構想って東京都と一緒なん? 違いはあるん?」ではないでしょうか?

 そして一緒だとしたら、大阪も東京都のようになるのか? 栄えるのか? 疑問ですよね。本質的なこの問いに、わかりやすく解説をしていきます。

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大阪都構想と東京都は一緒?違う?

 最初に結論を書きます。大阪都構想で実現される制度は、東京都の制度とほぼ一緒です。制度的な違いは本当に、小さな部分だけです。

 東京都の都区制度の歴史を追うことで、大阪都構想の本質に迫れます。

都区制度(東京の大都市制度)について(特別区長会)

 上記のPDFは今年2月に、東京都の特別区長会が出した資料です。資料によれば東京都区制度は1943年(昭和18年)の、戦時体制下でできました
 資料に詳細はありませんが、東京市を解体して自治権を取り上げ、戦時体制下でコントロールを容易にすることが目的です。1947年(昭和22年)には現在の23区になりました。

 特別区が基礎自治体として位置づけられたのは、2000年(平成12年)のことです。それまでは東京都の内部団体として位置づけられていました。

都区合意のもとに国に制度改正を求め、ようやく特別区が法的に基礎自治体に

都区制度(東京の大都市制度)について 5Pより

 しかし特別区は、行政の専門家や有識者から言わせれば「半人前の自治体」です。特別区の権限は、市はもちろんながら町村にすら劣ります。もっとも権限の弱い自治体が、特別区です。

 東京は都区制度を改正するために、長年運動してきました。そして特別区が基礎自治体と認められた現在でも、財源や自治権を巡って都区間の対立が存在します。

 東京都の都区制度は、大都市制度で定められたものです。大阪都構想も大都市制度に則っていますから、制度的には東京都とほぼ同じです。

 しかし決定的な違いもあります。東京都の特別区は長い間、自治権の拡充を求めてきました。一方で大阪市は政令指定都市という自治の最高権限を捨て去って、都区制度に移行しようとしています。

 つまり東京都は自治権拡充の運動。対して大阪都構想は、自治権放棄の運動なのです!
 この点が大阪都構想と東京都の、全く違うところです。

 さらっと他の問題にも触れておきましょう。

 全国に現在、政令指定都市は20市が存在します。例えばお隣の京都で「京都府と京都市の二重行政! 問題だ!」などと騒がれているでしょうか? 他の政令指定都市はどうでしょう?

 政令指定都市で二重行政と騒いでいるのは、全国でも大阪府と大阪市のみです。なぜ大阪だけ、そんなに問題視されたのか?
 大阪維新の会や大阪都構想推進派によって、大阪の過去問題がことさら過大にクローズアップされたからです。

 東京都と大阪都構想の制度自体は、ほぼ同じものです。
 しかしもっとも異なるのは、東京都は戦争という、どうしようもない時代の要請で都区制度に移行したのに対して、大阪市は自ら自治権をかなぐり捨てて移行しようとしている点でしょう。

 加えて付言すると、東京23区に比べて大阪は4区です。制度は一緒でも規模は大きく異なる、と言えます。

大阪都と東京都の違いは?

 便宜上、大阪都と書きましたが……じつは大阪都構想で大阪は、大阪都になりません。名称変更には、また別の手続きが必要です。

 大阪都構想が可決されたとしましょう。2025年に大阪市が解体され、4つの特別区からなる大阪都構想に大阪は移行します。
 果たして大阪都は、東京都のように栄えるのでしょうか? 豊かになれるのでしょうか?

 結論から言えば、なりません。

 2025年には万博とIRの開業が控えています。この2点を持って大阪維新の会は「大阪都構想は大成功!」と言い張るかもしれませんが、なんでやねんと。
 別に大阪都構想が可決されたから、万博が誘致できたわけじゃありません。IRが開業できるわけでもありません。

 閑話休題。

 東京都があそこまで栄えている大きな理由は、投下される資本量の大きさにあります。特に国からのインフラ予算は、関西圏より関東圏の方が優遇されています。
 ……首都ですから、優遇は理解できます。

 そもそも投下される資本量や予算が大きく異なるのに、制度だけ一緒にしても同じ成果が出るわけがありません。

 じつは東京の都区制度は、東京の成長を阻害してきたとすら解釈可能です。

 なぜなら1980年代まで、大阪と東京に籍を置く本社数は同じくらいでした。
 そして東京都で自治権拡充運動が行われ、その成果が出始めたのもまた1975年です。特別区が事実上の基礎自治体になったのが、ちょうど1975年です。
参照 都区制度(東京の大都市制度)について 5Pより

 つまり東京都は特別区の自治権が拡充するとともに、大阪に大きく差をつけていきました。とすれば政令指定都市から特別区に転落する大阪都構想は、成長を阻害するおそれが非常に高いのです!

北区や中央区の名前がかぶっているけど大丈夫?

 大阪都構想で設置される特別区の、北区と中央区がやや問題となっています。

 東京都にも北区、中央区があります。大阪都構想で北区、中央区が設置されることに東京都が異議を申し立てています。同名はだめだ、という意義です。

 一見して北区や中央区は他にもあるので、問題ないように思えます。北区や中央区は札幌市やさいたま市、その他にもあります。

 しかし「同じ特別区で同名」というのが問題とされています。

 町村の同名はわりとありますが、市の同名はできるだけ避けるというのが慣例です。全国でも同名市は、わずか2例にとどまります。
 特別区も市に準ずるのだから、同名は避けるべきとなります。よって東京都は大阪都構想の北区、中央区に対して異議を申し立てています。

 もちろん名称は、その自治体権限で決定されます。東京都の異議申し立てには、なんら強制力はありません。

 しかし合併などで市名が変わる際に、他にも同名市があり拒絶されて断念した……という例も結構あります
 大阪都構想の場合はまだ、住民投票が行われていません。よって決定していないので、現段階で東京都が強い行動に出ることはないでしょう。

 ただ大阪都構想が可決した後に、トラブルになる可能性があることは頭に入れておきたいですね。

まとめ

 大阪都構想と東京都の都区制度は、制度的には一緒です。しかし4区と23区という規模だけ比べても、かなり違いますよね。
 そして何より大きな違いは、東京は自治権の拡充を求め続けてきたことです。一方、大阪は自治権の放棄をしようとしています。

 この点がもっとも大きな、大阪と東京の違いでしょう。

 住民投票は今年の11月上旬を予定しています。大阪市民の皆さんは、しっかりと熟考して投票してくださいね。

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