信用創造は詐欺で又貸し、お金は紙切れ?混乱する信用創造議論の整理

 経済学ないし経済では、信用創造への理解は必須です。なぜなら信用創造とは、お金がどのように生まれるか? の構造だからにほかなりません。

 ところがネット上で検索してみると、信用創造の議論が相当混乱していることがわかります。信用創造は詐欺だ! お金は単なる紙切れで、錬金術だ! はたまた又貸しだ! 信用創造なんて起きてない! etc……。
 これでは信用創造の、どの解説を信用すればよいのでしょう。信用創造だけに信用の問題が……(笑)

 基本的な部分や、経済思想の潮流から紐解いて「どのポイントが、混乱の原因か」から「どのように整理して考えればよいか」「正解はなにか?」まで解説します。

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信用創造議論を混乱させる3つのポイント

  1. 主流派経済学と現代貨幣理論(MMT)の信用創造の違い
  2. お金に対する間違った知識
  3. 巨視的視点での構造の俯瞰ができていない

主流派経済学と現代貨幣理論(MMT)の信用創造の違い

 主流派経済学とは、1970年代から台頭した新古典派経済学ないしその亜種です。リフレ派も大雑把には、主流派経済学に入ります。
 主流派経済学の信用創造の特徴は、根源的預金(元本のようなもの)から乗数的にお金が生まれていくということです。以下の図がそのイメージです。

 上記の信用創造の解釈では「もともとの預金100(根源的預金)の額によって、信用創造できる貨幣量の限界が決定される」ことになります。
 この説に則るならば、金融緩和でマネタリーベースを増やせば「信用創造の限界値も上がる」ので、マネーストックも増えるはずだというリフレ派の主張になります。

マネタリーベース
 日銀当座預金+すべての流通現金。日銀当座預金をいくら増やしても、経済全体に貨幣が出回るとは限りません。

マネーストック
 民間銀行から社会に供給している資金。実際に社会で使われているお金の総量

 一方で現代貨幣理論(MMT)の信用創造は、どのようなものでしょう? 端的にいえば「お金は借りることで生まれる」です。

 詳しくは、以下の記事でお読みください。

 学術的に2つの信用創造の解釈がある。これが混乱の最大の原因です。

お金に対する間違った知識

 お金に対する間違った知識も、信用創造の議論を混乱させます。一般的には「お金には何らかの価値がある=貴金属的な価値」と感覚的に捉えるようです。
 だからこそ信用創造の議論で「お金が生み出される仕組み」が、なんの生産も伴わないことに抵抗を感じるのでしょう。

 上記のような感覚的、感情的な印象から「信用創造は詐欺で嘘」という言説がまかり通っているようです。銀行の信用創造機能の否定や否認は、どの経済学であれ学問的にはありえません。

巨視的視点での構造の俯瞰ができていない

 信用創造もお金も、資本主義という構造の中での話です。したがって「どれが正しい信用創造の解釈か?」を知るには、資本主義やお金について知らなければなりません。

 ちなみに主流派経済学は「貨幣とはなにか?」を議論していません。ミクロ経済学やマクロ経済学の教科書にも、せいぜい付録や補論として登場する程度です。

信用創造議論を整理するための3つのポイント

  1. お金とはなにか?
  2. 資本主義とは?
  3. 国家主権や国家の権力

 信用創造を整理するためには、上記3つのポイントを抑えておく必要があります。

お金とはなにか?

 お金とはなにか? は、近代資本主義が芽生えた頃に、活発な議論がありました。地金論争という、イギリスの議論です。 商品貨幣論vs表券主義という、対立の構図がありました。しかしここでは詳しくは触れません。

 お金とはなにか? この問いへの端的な答えは「お金とは負債(であり、一方の債権)」です。
 皆さんが持っている日本銀行券、つまり1万円札などは日銀では負債の部に計上されます。みなさんの債権であり、日銀の負債なのです。

 お金とは「誰かが負債を負うことで、創造されるもの」です。日銀の負債がなければ、現金は出回りません。同様のことは国債とマネーストックや、銀行融資と信用創造にもいえます。

資本主義とは?

 近代資本主義から世界は、目まぐるしいスピードで経済発展を遂げました。資本主義が始まる前、世界に経済成長はほとんど見られなかったそうです。

 なぜ資本主義になって、経済が発展したのでしょう。イギリスの産業革命に見られるように、中央銀行制度と株式会社制度が、資本主義の条件です。
 この2つの制度で今まで取り扱えなかった大量の資本を、事業で調達することができるようになりました。

 資本とはお金です。つまり中央銀行制度による信用創造が、資本主義の経済発展に不可欠だったのです。

国家主権や国家の権力

 国家には基本的に、通貨発行権があります。通貨発行権によって金融主権と財政主権を、国家は保持しています。EUはユーロ銀行が中央銀行のため、金融主権は放棄され、財政主権を著しく制約されています。

 お金とは国家ごとに異なります。つまりお金とは、国家主権や国家の権力によって流通しているものです。
 ではなぜ銀行が信用創造できるか? 国家が銀行法によって、銀行に信用創造を許可しているからです。

信用創造は銀行にしか不可能なのか?

 銀行主体に信用創造を論じてきましたが、じつは貨幣の創出(信用創造)は銀行でなくても可能です。小切手などはまさに、個人による貨幣の創出でしょう。

 また例えば地域の割引チケットやクーポンも、信用創造の一種といえるかもしれません。

信用創造を議論してこなかった主流派経済学の謎

 信用創造の議論の混乱の大半は、主流派経済学の信用創造解釈にあります。彼らは現代貨幣理論が正しい信用創造を主張するまで、間違った信用創造を検証もなしに流布してきたのです。

 イングランド銀行は世界で初めてできた、中央銀行です。そのイングランド銀行という専門家は、主流派経済学の信用創造は間違っていると指摘します。

イングランド銀行の季刊誌(2014年春号)は「現代経済における貨幣の創造」の中で、銀行は、民間主体が貯蓄するために設けた銀行預金を原資として、貸出しを行っているのは、通俗的な誤解であると指摘している。銀行による貸出しは、借り手の預金口座への記帳によって行われるに過ぎず、銀行は何もないところから、預金通貨を作り出している。銀行は預金という貨幣を元手に貸出しを行うのではなく、その逆に、貸出しによって預金という貨幣を創造している。

信用創造 – Wikipedia

 主流派経済学が信用創造を正しく理解できなかったのには、理由があります。主流派経済学のモデルや理論に価格は出てきても、貨幣が出てこないからです。
 だからこそ貨幣を生み出す信用創造に、注意を払ってきませんでした。

信用創造を整理し、正解にたどり着くためのポイントまとめ

  1. 信用創造は学説として2つ。主流派経済学と現代貨幣理論
  2. 貨幣を議論しない主流派経済学の、信用創造理論は信用できるのか?
  3. 現実の経済をもっともうまく、説明できているのはどの信用創造理論か?

 学問の有用性は「現実を説明し、将来の予測を可能にすること」かと思います。リフレ理論はなぜ、現実的に失敗したのか? 主流派経済学の理論で2008年以降の経済が予見できたのか? 失われた20年はなぜ、脱出できないのか? etc……。

 歴史で実証していけば、自ずと正しい答えに行き着くのではないか? と思います。

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2 Comments
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田中リンクス
7 月 前

細かいですけどマネタリーベースは日銀当座預金、銀行保有現金、民間保有現金のことで全てのお金じゃないですよね。銀行預金はマネタリーベースじゃなくマネーストックですし。民間保有現金はマネタリーベースでありマネーストックです。
なので仮に銀行が預金ではなく現金を貸し出してもマネーストックは増えます。