外国人観光客の観光公害に悩む京都-市バスの市民利用が困難に

 「観光公害」という言葉、聞いたことがありますか? 外国人観光客が急激に伸びる中で、秘かに注目されている概念です。

 観光公害をまず解説し、その背景にある外国人観光客の推移や、消費金額についても分析します。
 その上で「観光立国」は、日本が取るべき選択肢なのかどうか? 考えます。
 結論だけ先に書けば、観光立国は弊害が大きく、魅力的な選択肢ではありません。

 最後に、観光立国と内需立国を比較し、それぞれの未来を描いてみます。

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観光公害とは?

 観光公害とは英語で「オーバーツーリズム」「オーバーユース」といいます。

 京都に代表される観光公害は、以下のようなものです。

  • ゴミのポイ捨てや散乱、分別しないなど
  • 人の集中による景観や自然破壊
  • 私有地への立ち入りなどの、プライバシー侵害
  • 道路の渋滞や、公共交通機関の混雑。京都においては市バスが顕著
  • 上記への対応のため、行政コストが増加
  • 物価や賃料の高騰、市民向けの商店やサービスの減少

参照:日本むしばむ「観光公害」 訪日客6000万人は幻か :日経ビジネス電子版
 上記に加えて「日本人観光客の、京都離れ」もあげられるでしょう。

 なぜこうなってしまったのか? 端的にいえば、キャパシティオーバーです。
 京都の外国人観光客数は、2000年が40万人。2017年には353万人と、9倍近く増加しました。

 結果どうなったのか? 日本人の“京都離れ”が進行中、インバウンドがもたらす「観光公害」という病(デイリー新潮) – Yahoo!ニュースから参照します。

  1. 市バスはいつも、2本見送らないと乗れない
  2. 祇園祭(宵山)を地元住民が敬遠
  3. 京都住民の台所「錦市場」は、外国人観光客の食べ歩き天国に
  4. 舞妓・芸妓がパパラッチに狙われる
  5. 地価の高騰

 民泊が突然となりにできて、地元住民が夜な夜なスーツケースの引く音に悩まされる、という話もあるそうです。

 実際の私の体験談ですが、2年ほど前に嵐山に旅行に行きました。川下りの受付では、船頭さんに「にいちゃん、中国人一緒にのるけど……大丈夫?」と聞かれました。
 大丈夫ですよと。なぜですか? と答えると、苦笑いしながら「あいつら、うるさいねん」と(笑)

 京都には年に何回か、行く機会があります。しかし……市バスは私も使おうとは思えません。すごい混雑なんです。いつも、タクシーで移動しております。

観光公害で都市機能が衰退する恐れがある

 前述の記事では、地価の高騰とホテル建設によって、京都でマンションが建てられなくなり、滋賀県草津のマンションのチラシが入るのだそうです。

 京都で観光客排斥運動が起こる恐れアリ…!インバウンドの深き闇(村山 祥栄) | マネー現代 | 講談社(1/3)が詳しいですが、このままでは「若い人の京都離れ」まで起こるのでは? と危惧される状況です。

 一例を上げますと、ベネチアは住民5万人に対して観光客が3000万人! だそうです。住民は郊外に移住し、ベネチアの中心地は「住民に必要な商店が、次々閉店している」のだそうです。
 この例は大げさでもなく、錦市場はもはや「外国人観光客用のサービス市場」になっているようです。

 とすれば……京都市の若者が、京都市以外へ流出するのもうなずけます。住むところは高い、仕事はホテルや外国人観光客向けのもの。生活環境も悪い。

 若者が地元で働いてくれる、というのが都市機能の維持には不可欠です。つまり、インバウンドと外国人観光客増加によって、京都市の都市機能が衰退を始めたのです。

観光公害を起こしてまで、外国人観光客に拘る必要はない

 外国人観光客やインバウンドの増加は、弊害ばかり大きいのです。その割に、リターンは「少ない」といえます。

 なぜか? 国内の観光消費額Gのうち、外国人観光客が占めるのは15~20%弱にしか過ぎません。日本人観光客が、80~85%なのです。

 マナーもない、言葉もわからない外国人観光客より、日本人観光客のほうが「手間がかからない」はずです。
 なにより、観光公害がおきる可能性がかなり低い。
 言葉が通じるので、問題が置きても対処も容易です。

 経済学的にいえば「コスト(手間)がかからず、生産性を上げる余地が十二分にある」のが、日本人観光客です。
 外国人観光客は「コスト(手間)ばかりかかり、弊害も大きい。生産性の向上が困難」となります。

 経済学的な知見からも、外国人観光客にこだわる必要性はありません。

都市機能や共同体が破壊されれば、再生は困難

 京都市が抱える根本的な問題は、外国人観光客の増加によって「若者が流出し、都市機能が衰退する」というジレンマです。
 端的に表現すれば、グローバル化によって地域共同体が破壊の危機に陥っています。

 共同体の破壊は容易です。しかし再生は困難を極めます。
 例えば……離婚するのは簡単ですが、よりを戻すのは非常に難しいのに似ています。

 京都では景観条例の規制緩和なども、検討されているようです。
 観光地としての価値を保ってきた景観条例が、外国人観光客の増加によって規制緩和されるかも知れないとは、なんとも皮肉な話ではありませんか。

 一度規制緩和してしまえば、景観は壊れるでしょう。観光地としての価値も、下がるかも知れません。
 その後に、景観を回復するのに「何十年かかるか?」と考えれば、共同体の再生が「いかに困難か?」が実感できるのではないでしょうか?

観光立国と内需立国を比較し、未来を描いてみる

 京都市の観光公害を解説しました。日本全体がそうなると考えると、とてもじゃありませんが「観光立国!」などといえないでしょう。

 反論としては「もう、外国人観光客は増えたんだ! 減らしたら、失業者が出るじゃないか!」というものがあるでしょう。
 これは「愚にもつかない反論」です。

 解決策は簡単で、日本人の所得が増えれば、外国人観光客の観光消費である15~20%など、すぐにフォローできるはずです。
 内需でまかなう、という発想です。

 そのためには、デフレ下において積極財政が必要です。積極財政さえすれば、4%の経済成長などたやすいことです。
 数年程度で、外国人観光客分の観光消費がまかなえるのです。

 逆に観光立国の場合、経済成長は「外国様次第」になります。観光公害という問題も、押し付けられます。
 内需立国では、自分たちのことは自分たちで決めることができます。
 どちらが良いか? など、私には一目瞭然のように思えます。

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3 Comments
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阿吽
5 年 前

スレチすみません。m(__)m

ちょっと最近これは少し、個人的に気になっていることがありますので、もしよろしければヤンさんの見解を伺いたいことがあるのですが・・、

それは・・、もし、アメリカが、MMTをその政策に取り込んだ場合・・、アメリカは、今までのような軍事支出ではなく、大量の軍事支出をする可能性があるでしょうか?

MMTによって財政の幅を拡大したアメリカなら・・、G1時代(1991年~2001年)のごとく、軍拡をして世界中に軍隊を派遣しようとするでしょうか?

それともアメリカでMMTが導入されれば、他の国々もその後ぞくぞくMMTを取り入れ軍拡をし、最終的にはやはり、中国・ロシア・トルコ・EU・アメリカ等々でそれぞれ地域覇権国となり、どの道、21世紀の世界戦国時代に突入するのはかわりないものでしょうか?

どんなもんですかね・・・・?

それとも、いくらアメリカがMMTを導入しても、冷戦期のような、世界の富の半分はアメリカみたいな現象の再現は、他の国もMMTを導入するだろうことを考えたり、もしくはインフレの制約等の結果・・、当時の所まで経済を拡大することはさすがに少し難しいものでしょうか・・?

阿吽
Reply to  高橋 聡
5 年 前

やっぱり、世界戦国時代は不可避ですかねえ・・。(正確には、15世紀以前の各大陸地域にそれぞれ地域覇権国が並立していた時代に逆戻りという感じですが・・)

せめてその中でも、世界でも最も早く産業革命を達成したイギリスが如く、今度のMMT革命(仮)でも、早めに採用した国が、まず最初にアドバンテージを取れるんじゃないかとは思いますので、日本政府も是非にとも思うのですが・・・・、安倍ちゃんがなあ・・・・・・・・・・・・。