ネトウヨの意味と定義とは-テレ朝での古谷経衡の定義がしっくり来る

 当ブログではたびたび、ネトウヨというものに注目してきました。それは主に、ネトウヨの起こした事件(ネトウヨの弁護士大量懲戒請求と、余命三年時事日記の裁判の結末)などから、彼らの思想を推定し、批判するためでした。

 今日は珍しく、ネトウヨ批判ではありません。
 学術的に、ネトウヨの意味や定義について考察します。

 まずはネトウヨの歴史を、元ネトウヨの私の経験則も踏まえてお話します。どのように「ネトウヨ」という言葉の意味が、拡大されていったのか? について書きます。

 またネトウヨは全国で何人いるのか? 平均的なネトウヨ像とはどんなものか? まで言及して解説したいと思います。
 そして最終的に、様々な要素から分析される「ネトウヨの学術的な意味と定義」をしたいと思います。

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ネトウヨという言葉が使われ始めた2000年代初頭の意味

 ネトウヨという言葉が使われ始めたのは、2000年代初頭からです。2ちゃんねるの東亜+板の住人が、ネトウヨといわれていました。
 東亜+板住人は、自分たちを「嫌韓」「呆韓(ほうかん)」「笑韓(しょうかん)」と自称していました。
 嫌韓の人自体が、当時は少なかったのです。
 ネトウヨの定義と意味は、当時は「嫌韓」でした。

 何を隠そう、私もこの東亜+板の住人でした。2000年代中盤には、三橋貴明さんなどもいたのですよ。

 東亜+板ではよく、歴史談義がありました。大東亜戦争は正しかった、という類のものです。自虐史観を否定し、歴史を振り返るという意味はあったように思います。

 嫌韓、いわゆるネトウヨが大量に発生したのは、2002年の日韓ワールドカップからです。
 この頃から、ネトウヨの言葉の意味は拡大していきます。

ネトウヨの意味の拡大と、最近のネトウヨの意味や定義

 2000年代初頭は「嫌韓」が、紛れもなくネトウヨの意味であり定義でした。
 しかし昨今では、嫌韓は一要素でしかありません。

 国粋主義的・愛国主義的・排外主義的なイデオロギーとして、ネトウヨが広く使われます。
 これはネトウヨが市民権を得ていく中で、広範な主義主張を取り込んだからだろうと思います。もっとも……広範といえど「浅い」のですが、それは置きます。

 いわく「マスメディアは反日」「反日国家と親日国家」「あの弁護士は反日」等々。とにかく「何かにつけて、反日かどうか?」が判断基準になるのが、ネトウヨの意味になりました。
 その反日勢力と戦うのが、自分たち愛国主義者だ! というわけです。
※愛国者と愛国”主義者”は異なります。

 その一要素として、嫌韓や嫌中が存在するだけになったのです。

 ネトウヨの愛国主義の特徴は、戦前への憧憬です。大東亜戦争への賛美です。
 ただし基本的に、ネトウヨで「反米」はいません。ネトウヨにいわせれば「アメリカと本気で殴り合って、理解し合った」のだそうです……?

 国際政治学を多少、嗜む私としては「へっ?」となる理屈ですが、脇に置きます。

テレ朝での古谷経衡のネトウヨの定義が見事で鮮やか

 テレ朝で「ネット右翼」の定義が明言される!その定義にネット物議 | ニコニコニュースによれば、テレ朝で古谷経衡は、以下のようにネトウヨを定義してみせました。

 古谷経衡がモーニングショーで「ネット右翼とは、保守系論壇誌や保守系番組にでる『保守言論人の言葉をそのまま信じる人』のこと」と定義してる。

 ネトウヨという言葉を考えてみると、なにも「書き込みをした人だけ」ではないはずです。偉人の思想や世の中の見方は、記事を書かなくても理解しますでしょ?

 とすれば「ネトウヨというフィルター」の定義が必要です。
 古谷経衡のネトウヨの定義は、まさにそのフィルターを定義してみせたのです。

 「ネット右翼とは、保守系論壇誌や保守系番組にでる『保守言論人の言葉をそのまま信じる人』のこと」の、言葉の意味を因数分解してみましょう。
 最も重要なのは『保守言論人の言葉をそのまま信じる人』の部分です。

 「信じる」と「理解する」は異なります。
 「理解する」とは途中で「正しいかどうか? 咀嚼する」ことも含まれます。
 一方で「信じる」とは「そのまま飲み込む」ことです。

 端的な例で上げましょう。私はキリスト教をある程度、理解はしてます。しかしキリスト教を信じてはいません。イスラム教でも一緒です。
 一般的日本人と一緒で、宗教には縁遠いのです。

 宗教がそうだとはいいませんが、「信じる」とは「理解しなくてもできる行為」です。余命三年時事日記の、弁護士大量懲戒請求事件がまさにそれです。
 ネトウヨは「不当な懲戒請求を出せば、どうなるか?」を理解してなかったのです。

 つまり古谷経衡はネトウヨを「保守系統の言論なら何でも信じる、思考停止した人たち」と定義したのです。
 書き込みをしたかどうか? は関係ありません。ROM専でも、上記のようなフィルターがかかっているならば「ネトウヨ」なのです。

ネトウヨの人数と平均像の実態とは? びっくりすること間違いなし

 メディアは「下流の低所得者が、不満を持ってネトウヨになる」というストーリーを信じてきました。じつはこれ、大間違いです。

 「ネット右翼」は日本に何万人いるのかを測る、ひとつの試み(古谷 経衡) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)によれば、古谷経衡は2013年に調査を行ったそうです。
 この調査でのネトウヨの、平均的な像は以下です。

 国民の平均年収は410万円ですので、450万円は高めといえます。また、大卒は確か55%程度だったかと思いますので、これも少し高め。
 マスメディアの「ネトウヨは社会の底辺の人たち」というのは、間違っていたのです。

 また同記事では、ネトウヨの人数は全国で200万人程度と推定されています。
 総務省|平成28年版 情報通信白書|インターネットの普及状況によれば、ネット利用者はおおよそ1億人です。

 年収から生活習慣まで 数字で読み解く「ネトウヨ」の平均像|日刊ゲンダイDIGITALでも、見解はわかれるものの、おおよそ2%くらいでは? とのことです。
 200万人という数字は、妥当であるといえるでしょう。

特筆するべきは「首都圏が3分の2」という事実

 首都圏の人口は、3800万人ほどです。日本の人口が1億2千6百万ほどなので、3分の1です。
 「ネトウヨは、首都圏が3分の2」という数字は、突出しています。
 大阪市や名古屋市などを含めると、もしかすれば4分の3くらいにはなるかも知れません。

 このテーマだけで、記事が1つ書けるほどです。

 首都圏や大都市の問題は、いくつかあります。

  1. 人間関係の希薄化
  2. 地方の地域共同体のようなものがない
  3. 個性的な「無個性」に甘んじるよりない

 社会科学用語でいえば、都市圏は「原子論的個人に陥りやすい」のです。オルテガの言葉を借りれば「大衆化」です。
 政府はもう嘘をつけない (角川新書)の著者、堤未果の言葉を借りれば「今だけ、金だけ、自分だけ」という、思考停止の利己性です。
※農業新聞によれば、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が、「食の戦争 米国の罠に落ちる日本 (文春新書)」で使ってから、広まったとされる。

 むっちゃ噛み砕いて、いいます。

  大都会でセカセカして、今日も明日もお金稼ぎ。もうなんか、自分がようわからん。俺は社会の歯車なんか?
 個性的に髭を伸ばしてみたけど、そんなんよーさんおる。個性的な無個性やん。

 親しい友人付き合いもない。組合? 入ってへん! お隣さんとエレベーターで鉢合わせても、無言で”一緒”に降りるだけ。
 自由やけど、自由とちゃう。圧迫感が半端あれへん。
 今日もまた、歯車にならんとあかんのか……。

 埋没、生の実感が乏しいとでもいいましょうか。こういう状態を「原子論的個人」「大衆人」「今だけ、金だけ、自分だけ」といいます。

 しかし「ネトウヨという共通の価値観」に染まれば、仲間内から共感が得られます。また「愛国者」という”特別な”称号も得られます。
 今日から「反日勢力と戦う、特別な日々」が始まるのです。

 つまり「キモチイイ」わけです。

 ネトウヨの十分条件とは、原子論的個人であることでは? と思います。

 とすれば、ネトウヨの意味と定義は、以下のように可能でしょう。
「原子論的個人であり、思考停止した人が『愛国主義の保守系言論にハマること、盲信すること』がネトウヨの定義と意味だ」

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Muse
4 年 前

>ネトウヨの意味と定義は、以下のように可能でしょう。
「原子論的個人であり、思考停止した人が『愛国主義の保守系言論にハマること、盲信すること』がネトウヨの定義と意味だ」

仰る通り、思考停止と妄信が彼らの最大の特徴だと言えます。①安倍礼賛、②左派政党やメディア批判、③嫌中嫌韓が、ネトウヨのテンプレ主張の3点セットになっています。言い換えれば、(中には例外もいるかもしれないが)彼らには物事の分析に当たって是々非々という視点が基本的に欠けています。例を挙げると、

>東亜+板住人は、自分たちを「嫌韓」「呆韓(ほうかん)」「笑韓(しょうかん)」と自称していました。

嫌中嫌韓のスタンス自体は全く何の問題もありません。その客観的根拠としては、まず、「中共による一党独裁体制をとる中国が、世界最悪の人権弾圧&少数民族弾圧&対外覇権主義丸出しの全体主義国家であること」。それから、「韓国は(日本から見れば全くいわれなき)反日を国是とし、親日的言動を完全に抹殺する社会風潮があって、いわば、筋金入りの反日カルト国家&反日カルト民族であること」などが挙げられます。

ただ、ネトウヨの問題は、日本が中国はおろか韓国にまでコケにされている最大の理由が、「日本の総体的な国力が衰退の一途を辿ってきたことにある」ということすらわからず、さらに日本をこうした”衰退途上国家”に転落させた元凶=長期デフレの原因が、「緊縮財政&構造改革をひたすら推し進めてきた(民主党政権時代を含む)歴代政権の大失策にある」ということがわからない点にあります。

さらなる問題は、「真の愛国とは何か?」、「真の保守とは何か?」ということが全く分からず、こともあろうに、愛国&保守とは真逆の売国&壊国の総仕上げともいえる極悪政策のオンパレードを行ってきた現政権や安倍晋三個人に対して無批判に礼賛を続けていることにある。

要するに、ネトウヨは、自分たちの行っている中韓叩きが見苦しい”負け犬の遠吠え”に過ぎないということに気づかないアホなのです。ただ、こうした正真正銘のアホ以上に、(真実は分かっていながら)金儲けのために、ひたすら”安倍長期腐敗政権”に媚を売りつつ、愚かなネトウヨ大衆をカモにしてきた似非保守言論人ないしネトウヨ言論人のような外道どもはさらに許し難い存在だと言えます。

阿吽
4 年 前

>しかし「ネトウヨという共通の価値観」に染まれば、仲間内から共感が得られます。また「愛国者」という”特別な”称号も得られます。
>今日から「反日勢力と戦う、特別な日々」が始まるのです。
>つまり「キモチイイ」わけです。

これ(↑)、まんま韓国の反日を叫ぶ人達の精神の構図と、おそらくはおんなじなわけですね。(ネトウヨを『反日』に、反日勢力を『親日派並びに日本』とおきかえれば完成です)

皮肉なことに・・・・。

ネット右翼という存在の発端がアンチ韓国であったことを考えれば、その反対のネット右翼もその反日韓国人に似てしまうということは、ある意味では当然の帰結だったのかもしれませんね。

そしてそんな反日遊びに興じていた韓国は、今、些細なことで大混乱なわけです。

ネット右翼の嫌韓遊びの帰結というのも、いくぶんかは想像できると言うものですね・・・。

とらまる
4 年 前

福沢諭吉先生はネトウヨになりますね。

トナカイ
4 年 前

あの違法サイト漫画村の運営が、まとめブログのやらおんの運営もやっていたことを考えると、嫌韓系のビジネス右翼ってお金が儲かるんでしょうか?
反グローバリズム保守系に比べ、ネトウヨ系はただ敵意さえ煽っていれば、誤報やデマ流してもいい、正確性なんてなくてもアクセス稼げる、みたいな志が低いところが多い気がします。
ハム速も、与党政治家に持ち上げられたりして、裏で黒いつながりがありそうでなんかいや。

阿吽
Reply to  トナカイ
4 年 前

星野ロミ容疑者ですが、管理人曰く、ですが、正確には『やらおん!』の運営はしていなかったみたいです。

↓  ↓  ↓

   【重要】AbemaTIMESの「星野ロミ容疑者がまとめサイト「やらおん!」の運営をしていた過去も」という記事について
   http://yaraon-blog.com/archives/153892?s=やらおん

,
>ネトウヨ系はただ敵意さえ煽っていれば、誤報やデマ流してもいい、正確性なんてなくてもアクセス稼げる、みたいな志が低いところが多い気がします。

個人的に一番ひどいサイトだと思ってるのはここですね・・→『あじあニュースちゃんねる』

保守速報なんかもソース不明記事が多いとは思いますが、上記したサイトにつきましてはあきらかなスレタイ詐欺ばかりでほんとに最悪ですね・・・・。

上記サイトの読者なんかコメ欄で見てみますと、嫌韓がいかに彼等からしたら娯楽かということが良くわかりますね・・。(その上、サイト運営から上がるお金で、彼等が嫌韓ビジネス者(ブログ運営者)にとって良い金のなる木だということにされているのもよくわかります・・。)

トナカイ
4 年 前

盲信的な愛国心って、独裁者を生む危険がある気がしますね。
最近ジョージオーウェルの1984年読んで、思ったこととして、自分の頭で考えない愛国のいきつく先が、言論の自由のない独裁国家に繋がるのではという危惧。
弱者の救済を考えるれいわ新撰組や、山本太郎を反日ブサヨと罵って思考停止して、
弱肉強食のグローバル安倍自民を盲信って。

二重思考と、ニュースピークは、既に日本に蔓延している気がします。