イージス・アショアとは?THAADとの違いや値段、予算と兵站の解説

 現在、防衛省の対応の問題でイージス・アショアが話題になってます。この機会にぜひ、日本の弾道防衛システムについて、理解を深めてください。

 最初に結論をいいますと、イージス・アショアの導入は「あまり賢い選択肢とはいえない」のです。THAADを導入するべきだった、と私は考えます。
 防衛上の理屈ならば、THAADに旗が上がります。

 問題の発端は予算でした。イージス・アショアやTHAADを解説した後、予算について論じます。

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イージス・アショアとは

 イージス・アショアとは? 専門用語を省いて解説します。端的にいえばイージス艦と同じシステムを、地上基地に据え付けるものです。
 イージス・アショアはイージス艦と同じく、弾道ミサイルが最高高度(ミッドコース)に達しているときに迎撃します。

 運用する人員や、防御のための施設なども必要です。防空能力も必要ですので、「高機能の基地を新たに2つ造るようなものだ」といわれます。
参照:イージス・アショア 2基で総額6千億円超 関連施設など含めると想定の3倍に 防衛省試算 – 産経ニュース

 イージス・アショアは当初、配備にお金がかからないといわれました。しかし蓋を開けてみれば、見通しが甘かったようです。
 2基で当初予算の3倍、6000億円がかかるとのことです。

 秋田、萩にイージス・アショアが建設されるのは、アメリカ防衛に都合が良いからという仮説があります。
「誰がためのイージス・アショアか?」配備地から導き出される、ある推論 | ハーバービジネスオンライン

 要旨はこうです。「秋田、萩ともに日本の防衛のみを考えるなら、最適とはいえない。しかしハワイを視野に入れるなら、秋田と萩は最適地だ」

 私は、説得力のある仮説だと思います。

イージス・アショアとTHAADの違い

 イージス・アショアより低く、PAC-3より高高度で弾道ミサイルを迎撃するのがTHAADです。
 専門的にはブーストフェイズ、ミッドフェイズ(ミッドコース)、ターミナルフェイズと呼ばれます。

 PAC-3はターミナルフェイズの最終段階、高度がかなり落ちたところで迎撃します。THAADはターミナルフェイズの初期段階(最も高度が高い部分)、イージスシステムはミッドコースとなります。

 次にイージス・アショアは基地式ですが、THAADは移動式です。移動式ですから、運用の柔軟性に優れます。
 値段はイージス・アショアは6000億見込み/2基で、THAADは1基1000億円です。THAADは4基ほど必要といわれます。
 予算面でも、結果的にはTHAADが優れていました。

安全保障を合理的に考えるなら、THAADを選択するべきだった

 イージス・アショアはイージス艦と同じシステムです。安全保障を考えるなら、THAADが正解でした。

 理由はいくつかあります。最も重要なのは「ミサイル防衛に縦深性が出るかどうか?」です。イージス・アショアはイージス艦と同じシステムであり、2段構えにしかならないのです。

THAADの場合

  1. イージス艦
  2. THAAD
  3. PAC-3

イージス・アショアの場合

  1. イージス艦とイージス・アショア
  2. PAC-3の二段です。

 例えばピッキングを警戒して、ドアに鍵をつけるとしましょう。同じシステムの鍵を3つつけるより、3つとも異なるシステムの鍵をつけたほうが、セキュリティは上がるはずです。

 当初、イージス・アショアの費用は2000億円と見積もられました。THAADを4基配備すれば4000億円です。コスパが良いという理由だけで、イージス・アショアは選ばれたように思います。
 しかし蓋を開けてみれば、THAADのほうが予算面でも同等か、やすかったのです。

 安全保障上の合理性を、コスパで決めるとこのような迷走に陥ります。

予算制限が、日本の安全保障を蝕む

 そもそも論になってしまうのですが、自衛隊の予算は少なすぎます。陸自「弾薬量確保できぬ」…予算ピーク時の6割 で、問題は?によれば、弾薬料すら確保できない予算額です。

 兵站なくして軍事は語れません。兵站こそが、軍事の最重要課題の1つです。イージス・アショアというハードだけ揃えても、兵站なしでは張子の虎です。

 またイージス・アショアに決定したのも、コスパからとささやかれます。イージス・アショアの迷走もまた、予算制約から発生しました。

 日本の安全保障を高めようとすれば、予算は必要なのです。
 そして我が国はデフレであり、政府支出に制限はありません。自国通貨建て国債ならば、いくらでも発行できる状況です。インフレになるまで、という制約付きですが。

 デフレ期こそ、安全保障を思う存分に高められるチャンスです。
 せめて自衛隊に、十分な予算が行くようにしてほしいものです。

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2 Comments
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阿吽
5 年 前

安いと思ってたイージスアショアの方が結果的に予算が膨れ上がるって・・・、防衛省の予算の概算はがばがばですか・・?

上記が真実なら・・、国防面における防衛省の体質にもかなりの不安を持てますね・・・。

それとも・・、THAADはどの道、韓国に配備しているのだから・・、アメリカの国防面においては日本はイージスアショアの方が良いという米軍の配慮からのイージスアショアの日本配備ですかね・・・・?

上記の理由だった場合、かなりの情けなさがありますが・・、防衛省の予算の概算面でのがばがばさはなかったってことになりますから・・・、こっちの方が良いのか・・・?

まあどの道、国防面で考えれば、ヤンさんが言われるようにデフレの日本はインフレの制約がおこるまでガンガン財出して・・、それこそ日本中にPAC-3や、THAADや、イージスシステムをケチケチしないでバーンと配備してもらいたいところではありますね・・・。