奇跡の経済教室 基礎知識編レビュー 世界一やさしい信用貨幣論

 先日、ジュンク堂に行きましたら、目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】が売り切れだったので、アマゾンでバリカンと一緒に購入しました。
※なぜバリカン? という突っ込みはしないでください。ちなみに、断髪もしました(笑)

 届いてから2時間ほどで読み終えたので、レビューしたいと思います。
 最初に結論だけ申し上げますと、「この本は、世界一信用貨幣論をやさしく書いた本」です。

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目からウロコが落ちる奇跡の経済教室、目次

 定番の、目次から見ていきましょう。

  1. 日本経済が成長しなくなった単純な理由
  2. デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ
  3. 経済政策をビジネス・センスで語るな
  4. 仮想通貨とは、何なのか
  5. お金について正しく理解する
  6. 金融と財政をめぐる勘違い
  7. 税金は、何のためにある?
  8. 日本の財政破綻シナリオ
  9. 日本の財政再建シナリオ
  10. オオカミ少年を自称する経済学者
  11. 自分の理論を自分で否定した経済学者
  12. 変節を繰り返す経済学者
  13. 間違いを直せない経済学者
  14. よく分からない理由で、消費増税を叫ぶ経済学者
  15. 主流派経済学は宗教である

 10章からは第二部、応用編となっていて「経済学者たちはなぜ間違うのか?」という副題がついております。

1~9章は本当の基礎知識編で、世界一わかりやすい信用貨幣論

 中野剛志さんといえば富国と強兵という大著で、日本で初めて現代貨幣理論(MMT)を取り上げた方です。
 目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】では、現代貨幣理論(MMT)をがっつり取り上げているわけではありませんが、そのエッセンスは随所に詰まっております。

 現代貨幣理論(MMT)の一番のエッセンスは何か? と問われると、信用貨幣論だと思います。信用貨幣論と中央銀行制度こそが、資本主義を発展させた本質と思われます。

 余談ですが、イギリスでなぜ産業革命が起こったのか? なぜイギリスだったのか? 当ブログでも数度言及しておりますが、イギリスがいち早く中央銀行制度を整えたからです。
 大きな事業をするには、大きな資金(負債)の調達が必要です。

 「預金を集めて貸し付ける」なんて制度では、巨額の資金(負債)は賄えません

 現代貨幣理論(MMT)ではおなじみの、イングランド銀行の信用創造や、貸付したら預金が創造される、という話も目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】では出てきます。

 非常にやさしく、かいつまんで要点を解説されておられるので、現代貨幣理論(MMT)や信用貨幣論の概要を知りたい方には、もってこいの本です。

 逆に、すでに現代貨幣理論(MMT)や信用創造、信用貨幣論を理解している人にとっては、第一部「経済の基礎知識をマスターしよう」は、物足りないかもしれません。
 また、中野節も第一部にはあまり出てきません。
※実際に私なんかは、第一部は「うんうん、そやんね~」と、わりと速読気味でした。

 しかし、今から現代貨幣理論(MMT)を知りたい! という方には、必読の書といえます。

第二部 経済学者たちはなぜ間違うのか? が面白い!

 第二部からが中野剛志さんファンにとっての、中野節を読める目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】の本体です(断言)。

 第一部の基礎知識をもとにしつつ、……え~経済学者を滅多切りです(笑)

 あえて言います。きっと中野剛志さんは主流派経済学者に「なんでこんな、簡単なことすら見落としてるんだ? ちょっと考えりゃ、基礎知識でもこうなるってわかるだろ!」と言いたいのではないか? と感じました。

 目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】は、初心者向けに書かれておりますので、経済学者たちに対する批判も、基礎的な信用貨幣論とデフレ対策、そして一般均衡理論への批判になります。

 書いてある批判は、日本の主流派経済学者の変節や間違いに絞られています。実際の言説を抜き出しての矛盾の指摘など、中野節を彷彿とさせる箇所です。

 ただし、批判内容自体は目新しいものではありません。むしろ主流派経済学を批判するうえで、定番のものといった印象です。
 新古典派経済学とは?わかりやすく新古典派経済学・新自由主義の間違いを解説などで、私も用いる定番のものです。
 基礎知識編・初級者向けですので、それはそうなるのでしょう。

奇跡の経済教室【基礎知識編】で最も大事な要素

 リフレ派、現在の日銀のインフレ理論は「マネタリーベースを増やせば、貨幣供給量が増える!」というものです。
 リフレ派は主流派経済学の亜種であり、新自由主義的ですが、現代貨幣理論(MMT)を論じると早とちりする人がいます。
 現代貨幣理論(MMT)も新自由主義だ! ネオリベだ! と。

 こう主張する人はおおよそ、文章の1つ1つの細事にこだわり、論理の全体像を見落としがちです。

 現代貨幣理論(MMT)にのっとれば、デフレを解消するのは「貨幣供給量拡大=政府支出(政府の需要)拡大=政府負債による信用創造=需要創出」です。
 端的にいえば、現代貨幣理論(MMT)による「貨幣供給量の拡大」とはイコールで、「政府による需要創出」なのです。

 また、コメントで「中央銀行は信用創造してない」というものがありました。してます。
 感想やご質問にはできるだけコメ返ししますが、議論には面倒なので返さないこともあります。
 延々と(99%無駄な)議論するくらいなら、1本でも良質な記事を書きたいからです。
関連:政治・経済議論がネットで嫌いになった理由 ブロガーの正しい時間の使い方

 閑話休題。
 現代貨幣理論(MMT)をすでに、がっつりしている方には目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】は物足りない本かもしれません。
 しかしそれだけに、非常にわかりやすい初級者向けの一冊となっております。これを読んだら、次は以下をどうぞ。

 中野剛志さんのご著書はほとんど読んでますが、これほどまでに「わかりやすい、やさしい!」のは珍しい気がします。

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