先日、ジュンク堂に行きましたら、目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】が売り切れだったので、アマゾンでバリカンと一緒に購入しました。
※なぜバリカン? という突っ込みはしないでください。ちなみに、断髪もしました(笑)
届いてから2時間ほどで読み終えたので、レビューしたいと思います。
最初に結論だけ申し上げますと、「この本は、世界一信用貨幣論をやさしく書いた本」です。
目からウロコが落ちる奇跡の経済教室、目次
定番の、目次から見ていきましょう。
- 日本経済が成長しなくなった単純な理由
- デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ
- 経済政策をビジネス・センスで語るな
- 仮想通貨とは、何なのか
- お金について正しく理解する
- 金融と財政をめぐる勘違い
- 税金は、何のためにある?
- 日本の財政破綻シナリオ
- 日本の財政再建シナリオ
- オオカミ少年を自称する経済学者
- 自分の理論を自分で否定した経済学者
- 変節を繰り返す経済学者
- 間違いを直せない経済学者
- よく分からない理由で、消費増税を叫ぶ経済学者
- 主流派経済学は宗教である
10章からは第二部、応用編となっていて「経済学者たちはなぜ間違うのか?」という副題がついております。
1~9章は本当の基礎知識編で、世界一わかりやすい信用貨幣論
中野剛志さんといえば富国と強兵という大著で、日本で初めて現代貨幣理論(MMT)を取り上げた方です。
目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】では、現代貨幣理論(MMT)をがっつり取り上げているわけではありませんが、そのエッセンスは随所に詰まっております。
現代貨幣理論(MMT)の一番のエッセンスは何か? と問われると、信用貨幣論だと思います。信用貨幣論と中央銀行制度こそが、資本主義を発展させた本質と思われます。
余談ですが、イギリスでなぜ産業革命が起こったのか? なぜイギリスだったのか? 当ブログでも数度言及しておりますが、イギリスがいち早く中央銀行制度を整えたからです。
大きな事業をするには、大きな資金(負債)の調達が必要です。
「預金を集めて貸し付ける」なんて制度では、巨額の資金(負債)は賄えません。
現代貨幣理論(MMT)ではおなじみの、イングランド銀行の信用創造や、貸付したら預金が創造される、という話も目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】では出てきます。
非常にやさしく、かいつまんで要点を解説されておられるので、現代貨幣理論(MMT)や信用貨幣論の概要を知りたい方には、もってこいの本です。
逆に、すでに現代貨幣理論(MMT)や信用創造、信用貨幣論を理解している人にとっては、第一部「経済の基礎知識をマスターしよう」は、物足りないかもしれません。
また、中野節も第一部にはあまり出てきません。
※実際に私なんかは、第一部は「うんうん、そやんね~」と、わりと速読気味でした。
しかし、今から現代貨幣理論(MMT)を知りたい! という方には、必読の書といえます。
第二部 経済学者たちはなぜ間違うのか? が面白い!
第二部からが中野剛志さんファンにとっての、中野節を読める目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】の本体です(断言)。
第一部の基礎知識をもとにしつつ、……え~経済学者を滅多切りです(笑)
あえて言います。きっと中野剛志さんは主流派経済学者に「なんでこんな、簡単なことすら見落としてるんだ? ちょっと考えりゃ、基礎知識でもこうなるってわかるだろ!」と言いたいのではないか? と感じました。
目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】は、初心者向けに書かれておりますので、経済学者たちに対する批判も、基礎的な信用貨幣論とデフレ対策、そして一般均衡理論への批判になります。
書いてある批判は、日本の主流派経済学者の変節や間違いに絞られています。実際の言説を抜き出しての矛盾の指摘など、中野節を彷彿とさせる箇所です。
ただし、批判内容自体は目新しいものではありません。むしろ主流派経済学を批判するうえで、定番のものといった印象です。
新古典派経済学とは?わかりやすく新古典派経済学・新自由主義の間違いを解説などで、私も用いる定番のものです。
基礎知識編・初級者向けですので、それはそうなるのでしょう。
奇跡の経済教室【基礎知識編】で最も大事な要素
リフレ派、現在の日銀のインフレ理論は「マネタリーベースを増やせば、貨幣供給量が増える!」というものです。
リフレ派は主流派経済学の亜種であり、新自由主義的ですが、現代貨幣理論(MMT)を論じると早とちりする人がいます。
現代貨幣理論(MMT)も新自由主義だ! ネオリベだ! と。
こう主張する人はおおよそ、文章の1つ1つの細事にこだわり、論理の全体像を見落としがちです。
現代貨幣理論(MMT)にのっとれば、デフレを解消するのは「貨幣供給量拡大=政府支出(政府の需要)拡大=政府負債による信用創造=需要創出」です。
端的にいえば、現代貨幣理論(MMT)による「貨幣供給量の拡大」とはイコールで、「政府による需要創出」なのです。
また、コメントで「中央銀行は信用創造してない」というものがありました。してます。
感想やご質問にはできるだけコメ返ししますが、議論には面倒なので返さないこともあります。
延々と(99%無駄な)議論するくらいなら、1本でも良質な記事を書きたいからです。
関連:政治・経済議論がネットで嫌いになった理由 ブロガーの正しい時間の使い方
閑話休題。
現代貨幣理論(MMT)をすでに、がっつりしている方には目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】は物足りない本かもしれません。
しかしそれだけに、非常にわかりやすい初級者向けの一冊となっております。これを読んだら、次は以下をどうぞ。
中野剛志さんのご著書はほとんど読んでますが、これほどまでに「わかりやすい、やさしい!」のは珍しい気がします。