消費税の仕組みについて解説 企業は消費税を転嫁できているか?

 本稿では消費税の、ごく基本的な知識について解説します。
 国内ではどうなるのか? 国外(輸出)ではどうなるのか? なぜ輸出に還付金が与えられるのか? 消費税の還付は輸出だけなのか?

 消費税は非常に身近にある税金ですが、その中身は分かりづらい部分が多くあるようです。様々な資料を元に、解説していきたいと思います。
※今回、厳密に論じるために、かなり資料は厳選しております。1次資料などが多いです。
※また参照資料として、税理士さんの記事などもあげておりますので、自営業の方にも役に立つかもしれません。

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消費税の基本的な仕組み

消費税って身近にあるのに、その仕組っていまいちわからないんだよね。

難しい言葉でいうと、財やサービスの付加価値にかかる税金と理解してください。最終負担は消費者になりますよ。

下請け→企業→販売店→消費者の例(消費税率10%)

  1. 下請けが1万円の製品を、企業に納品。価格は1.1万円(下請け、0.1万円納税)
  2. 企業は1.1万円で仕入れ、価格を2万円に設定。販売店に2.2万円で納品(企業0.1万円納税)
  3. 販売店は2.2万円で仕入れた製品価格を3万円に設定。消費者に3.3万円で販売(販売店0.1万円納税)
  4. 消費者は3.3万円で購入。納税行為はなし

 上記の例では、下請け、企業、販売店はそれぞれ1万円の粗利(付加価値)を設定しています。その付加価値に対して、10%の消費税がかかり、それぞれ納税するという仕組みになります。

売上でもらった(預かった)消費税-経費で払った消費税=納税する消費税
 上記が事業者視点から見た、消費税の式になります。

 それぞれ企業の粗利は変わりません。最終的には消費者が企業や販売店の消費税を負担していることになります。
 消費税が内需に対して、ダメージが大きいことが分かります。
参照:消費税のしくみ|国税庁

消費税は価格転嫁できているか?

 消費税の完全な価格転嫁は不可能だ、とトマ・ピケティはいいます。
参照:全商連[全国商工新聞] ピケティ教授が指南 消費税は「関税」岩本沙弓さんが解説

 実際に日本国内の、BtoB(事業者間取引)、BtoC(消費者向け取引)で価格転嫁は、どの程度できているのでしょうか?
 消費税、BtoBは85%が「全て転嫁」 経産省調べ – 観光経済新聞によれば、BtoBで84.7%、BtoCで72.7%が「価格に完全に転嫁できている」とのことでした。

 記事を要約します。

  1. BtoBで84.7%、BtoCで72.7%が完全に価格転嫁できている
  2. BtoBで15.6%、BtoCで27.3%が価格転嫁できていない
  3. 価格転嫁できない理由は、競争が激しいから、取引を変えられるかもしれない、消費者の財布の紐がかたいからなど
  4. BtoBで業種別に、完全に転嫁できているのは製造業が92.1%、運輸業・郵便業の90.5%、建設業の89.8%など。サービス業が78.0%と一番低い
  5. BtoCでも4.の順序になるものと類推(筆者)

 価格転嫁できない理由の回答などから、やはり競争力が弱い企業ほど価格転嫁できない、ということのようです。

 忘れないでほしいのは、仮に「完全に価格転嫁ができた」としても、税額を最終的に負担するのは消費者だということです。
 またサービス業の価格転化率がBtoBでも低いことも、特徴の1つです。

 産業構造 – 厚生労働省でも分かる通り、産業構造の変化でサービス業が昨今は、割合を増やしています。
 つまりサービス業従事で、消費税を価格転嫁できていない=人件費を削ってコストを捻出している可能性が大きい=所得が消費税に圧迫され、なおかつ生活で消費税を負担、ということになります。

輸出の場合に消費税が免除されるのはなぜ?

 輸出製品に消費税が免除されるのは、最終消費地が外国だからです。

  1. 下請けが1万円の製品を、企業に納品。価格は1.1万円(下請け、0.1万円納税)
  2. 企業は1.1万円で仕入れ、価格を2万円に設定。販売店に2.2万円で納品(企業0.1万円納税)
  3. 販売店は2.2万円で仕入れた製品を3万円に設定。輸出価格3万円、粗利1万円に設定(粗利0.8万円+輸出還付金0.2)で輸出
  4. 海外消費者は3万円で購入。納税行為はなし

※輸出先の国に消費税がある場合、その消費税を輸出メーカーは価格に上乗せし、納税することになります。

 消費税は基本的に、消費者が最終的な負担をする税制です。
 ただし、事業者からではなく、消費者から直接納税というのは不可能です。なぜなら、「いくら支出したから、いくら消費税を納税しなければ」なんて煩雑な作業を、国民すべてに課すことになるからです。

 ですので、事業者からそれぞれ、納税させる形になります。

 輸出の場合、消費者は国外となり、国家の徴税権は及びませんので、最終的な輸出段階の企業が下請けなどとの取引で、支払った消費税を還付するという形になっています。
※参照は後述

還付されるのは輸出の場合だけか?

 よく見る勘違いで、1億円/年の売上だとして、1億円の8%を納税と思っている人がいますが、納税は以下の式で表されます。
売上でもらった(預かった)消費税-経費で払った消費税=納税する消費税

 じつは還付されるのは、輸出の場合だけではありません。経費で支払った消費税額が大きい場合、つまり赤字や多額の設備投資などの場合でも、消費税は還付されるようです。
参照:
輸出売上がある会社は消費税が還付されるって本当?! | 福岡の税理士|国際税務・海外進出をサポートする税理士事務所
消費税還付の仕組みと還付される条件まとめ|BIZ KARTE

 上記の式を、輸出の還付に当てはめてみます。
売上でもらった(預かった)消費税は、海外のため0円-経費で払った消費税=還付金

 もしくは赤字の場合に当てはめてみます。
売上でもらった(預かった)消費税1億円-経費で払った消費税1.2億円=還付金が0.2億円

消費税が輸出補助金と批判されるのはなぜか?

 上述では消費税の仕組みと、事実関係のみを解説してきました。ひとまず、上述してきたことをまとめましょう。

  1. 売上でもらった(預かった)消費税-経費で払った消費税=(事業者の)納税する消費税、ないし還付
  2. 輸出や赤字(経費の消費税が売上の消費税を上回った)の場合、消費税が還付される
  3. 消費税を価格転嫁できない企業は、概算で2割前後(調査に個人事業主が入っているかは不明)
  4. 価格転嫁できない業種の最たるものはサービス業
  5. 消費税の最終負担者は消費者

 再びピケティの記事、全商連[全国商工新聞] ピケティ教授が指南 消費税は「関税」岩本沙弓さんが解説に戻りましょう。
 この記事の中核部分は、以下に集約されます。

―― 付加価値税と補助金の関係は
 付加価値税にはリベートを渡せる機能があります。日本では還付といわれています。例えば日本の輸出企業が国内で製品を造るときには部品の調達先に消費税を払っています。それを米国に輸出するときは、日本の消費税を米国の国民から徴収できないという理由でゼロ税率になっています。国内で消費税を払っているのに、海外からは受け取れない。消費税は自分が受け取った消費税から払った消費税を差し引いて納税する仕組みです。そこで国内で支払ったとされる仕入れ分を還付するのですが、消費税では完璧な転嫁は流通のどの段階においてもできません。であるなら、戻してもらうお金は還付ではなく補助金の役割を果たすことになりかねないと米国などは指摘しています。

 「消費税では、完璧な転嫁は流通のどの段階においてもできない」とは、経産省の調査で2割前後が価格転嫁できていないとの事実通りです。

 よく記事やブログで書いてあるケースですが、5%→8%に消費税が引き上げられたとき、消費税増加ぶんを下請けに負担させる交渉があるようです。事実上の値下げ交渉です。
参照:消費税の還付金で「トヨタがボロ儲け」は果たして本当なのか? – まぐまぐニュース!(3ページ目)

 これが、ピケティのいう「完璧な転嫁は無理」という話です。
 この問題を分解してみると、消費税の制度そのもの(還付金含む)より、消費税が値下げ交渉の口実に使われている、ということが問題だと理解できます。

 消費税が輸出補助金は事実か?自民党政権の輸出企業優遇の構造でも、「消費税は強制的生産性のアップ(値下げ)を強いる」と書いたのは、このことです。

 消費税は最終的に消費者負担になるため、個人消費と需要の停滞を国内に招きます。簡単にいえば、国内需要が消費税分だけ減少するのです。
 であれば、企業は合理的判断として輸出を選択することでしょう。

 消費税の輸出還付は輸出補助金とはいえないものの、全体を見た場合に消費税そのものが、「輸出奨励税制=国内需要の低下」になっていると解釈できるでしょう。

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