アベノミクスの本来の解釈を読み解く
アベノミクスの三本の矢は覚えておられますでしょうか? 「金融緩和、財政出動、成長戦略」です。2012年頃にだったかと思いますが、基本に戻りこの三本の矢をまずは解釈してみたいと思います。
金融緩和とは2本めの矢、財政出動を支えるための国債引受と解釈できます。もう1つは為替誘導による円安誘導でしょう。
財政出動は日本への投資と、需要創出によるデフレ脱却のための最重要な政策と解釈できます。
最後の成長戦略は――財政出動を前提とした場合には、何に重点的に投資をしていくか? という話になろうと思います。
端的にまとめますと、財政出動の基盤として金融緩和を働かせ、財政出動をどこにどれだけするか? が成長戦略であったと読めます。つまり、日本政府が日本に多大な投資と需要創出をするのが、アベノミクスの本来の解釈であったはずです。
安倍政権の6年間の実態はどうであったのか?
ではアベノミクスは実行されていたのでしょうか? 藤井聡京大教授の動画(多分、ラジオ)が非常に短時間でよくまとまっていると思います。
https://youtu.be/pgYlnQ_QeUI(動画リンク切れ)
上記によりますと「安倍政権ほど、実質賃金を下落させた政権はない」のだそうでして、1997年の消費税増税も目じゃない、のだそうです。その他、様々な視点と分析から「アベノミクスはどうもなぁ……こう助言したんやけど……」ということを解説しております。
動画だけではなんなので、簡単に箇条書きでまとめます。
- 財政出動がされたのは2013年だけ。後はすべて緊縮財政
- 税収は17兆円増えたが7兆円は消費税増税、7兆円は輸出増加(海外景気のおかげ)
- 増えた税収の大半以上は国債の返済に当てられた。実際に、消費税増税のうち8割は国債返済に当てられている。
- 投資が増えないのにGDPが上がっているのも、海外要因(海外の景気、輸出)がほとんど。日本固有の政策によるものではない。
- 2008年のリーマン・ショックからの回復は2010年(民主党政権)を起点としており、そのトレンドを安倍政権が上げたという証拠はどこにもない。むしろ2014年の消費税増税で、トレンドに陰らせた。
投資をしないのに、成長をするはずがないのは企業も国家も同様です。簡単な思考実験を会社でしてみましょう。
A会社は家電を作る会社です。グローバル化で日本の白物家電はなかなか苦戦してます。さて……ここで家電の研究開発費を渋って、売上があがるでしょうか? 成長できるでしょうか?
さらに上記のA会社は「改革だ~!」と言いながら、部署名を変更したり権限を与えたりくっつけたり、会社組織ばかりいじっています。中には「民営化!」と言いながら、一番大切な研究開発部門を他者に委ねる、ということもしました。
どうみてもA会社は「オワコン」でしょ? それが安倍政権の6年間――いいえ、失われた20年という時代です。
アベノミクスは実行されたのか?
アベノミクスの解釈を思い出してください。
財政出動の基盤として金融緩和を働かせ、財政出動をどこにどれだけするか? が成長戦略であったと読めます。
上述したものが本来のアベノミクスだった”はず”です。2013年しか実行されていないということは、「アベノミクスは始まってさえいなかった」としか解釈しようがないでしょう。
アベノミクスの本来の形は、実行されていなかったのです。
あれだけ「アベノミクスの成果!」と言っていたのに、実行すらされていなかったとすれば、それはもはや壮大な詐欺ないし、壮大な嘘であったとしか解釈できません。
結果として安倍政権は、我々国民を欺いていたと考えるのが妥当です。
そして……安倍総理自身が「政治は結果」と言っているのですから、この結果を鑑みて総理辞任をされるのがスジであろうと思います。
消費税増税を今年実行する? 冗談じゃありません。
反緊縮運動という左派運動が熱い
私、別に右派でも左派でもありませんから、左派に苦手意識は持っていません。むしろ現代はグローバル化による「上下対立の時代」だと解釈しています。
最近は左派が薔薇マークキャンペーンという運動を始めたようでして、反緊縮財政を打ち出して運動されておられます。
一方で一般的に右派、保守派と呼ばれる層から財政出動の声があがるというのは、どうも少ないようです。私は例えば藤井聡さんや中野剛志さん、三橋貴明さん等々を「右派」とは思っていませんし、ご本人たちも明言されたことはないと思います。
※藤井聡京大教授は新聞赤旗でも、ときどき記事を書いておられるようですから右派とは定義されないと思います。
右派、いわゆる保守派――私はこれらを自称保守、自称愛国者と解釈していますが――は一体何をやっているのでしょう?
現在の保守派は、安倍政権を支持し続けたせいで認知不協和に陥っている、と思われます。それも相当深刻なものです。
もっともこの問題は、敗戦後から端を発するものであることは「平和主義は貧困への道」をお読み頂ければ、理解できるかと思います。
当然左派も認知不協和を抱えていますが、それでも反緊縮運動を繰り広げているのですから、評価してしかるべきだと思います。
冒頭で記しましたアベノミクスは本来……、という解釈が正しいのであれば、安倍政権はそれを実行しなかった欺瞞政権、嘘政権と解釈できます。
だとすれば、我々が戦うべきは「嘘や欺瞞」なのです。
そして嘘や欺瞞と戦うのに、左右の対立なんて必要でしょうか? 事実や真実を求めるのに、左右の対立は不必要です。
ポストトゥルースの時代からこそ、上記のような姿勢が求められると思います。