検索キーワードを調べていると「大阪都構想 なぜ」が急上昇していました。「なぜ反対するの?」「なぜ前回は否決されたの?」という検索意図です。
大阪都構想の住民投票は、今年の11月が予定されています。あと2ヶ月強しかありません。
今のうちに「反対派はなぜ反対しているのか」「なぜ前回は、否決されたのか」を知っておくことは、とても重要なことです。
ポイントを絞って、5分で解説します。
大阪都構想になぜ反対なのか
大阪都構想が反対される理由は、大きく分けて三つです。
理由①100年の歴史を持つ大阪市を廃止する構想だから
大阪市は1889年から続く歴史ある都市で、100年以上の歴史を持ちます。戦前まで大阪は、大大阪と呼ばれるほど発展していました。東京より大阪の方が発展しており、大阪市は日本最大の都市でした。
戦後も1980年代まで、大阪は日本の大都市であり経済・文化の中心地でした。じつは現在の大阪のイメージは、1980年代以降のテレビによる影響が大きいそうです。
上記の著書が、戦後の大阪の文化や歴史に非常に詳しいです。
余談ですが1980年代まで、料理の修業先と言えば京都より大阪。割烹というスタイルも、大阪の発信です。
閑話休題。
大阪都構想は大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する構想です。「廃止してもダメやったら、元に戻せばええやん」はできません。なぜならそもそも、元に戻す法律などないからです。
大阪市を一度廃止すれば、二度と大阪市は戻りません。大阪都構想の大阪市廃止は、不可逆です。
なぜ大阪都構想が反対されるのか? その理由の一つは、大阪都構想の不可逆性です。
理由②維新が主張する財政効果が存在しないから
二つ目の理由は、維新が主張する財政効果が疑わしいからです。
2015年以前、大阪都構想は年間で4000億円の財政効果が主張されていました。10年間で4兆円もの財政効果があるとされ、橋下徹氏は「財政効果が大阪都構想のすべて」と断言しています。
これらの財政効果は、二重行政の解消によって生み出されると言われていました。
ところが検証されるにつれ、二重行政を解消しても大きな財政効果はないとわかりました。維新以外の党や学者が試算すると、どうも二重行政解消による財政効果は高く見積もって150億円、低いと1億円程度でした。
二重行政解消による財政効果は、こうして否定されました。
現在、維新が「10年間で1.1兆円」と掲げている財政効果は、二重行政解消によるものではありません。
基礎自治体の人口が増えるほど、1人あたりのコストは低くなる。しかし特定の人口を超えると非効率化し、逆にコストが高くなる現象が起きる。もっとも1人あたりのコストが低くなるのが50万人だ、とする仮説があります。
上記がその仮説のグラフです。
この仮説と試算を出したのは、嘉悦大学です。
なお当たり前ですが、総ツッコミされています。
〈第1回〉「大阪都構想の経済効果」への重大な疑問 – 大阪府保険医協会では、大都市のコストが高くなるのは「大都市ならではのサービスが必要だから」だと主張します。
少なくとも、人口に伴うコスト増加の原因が非効率性とは言いがたいのは確かです。
整理しましょう。
維新は最初、二重行政による財政効果を主張していました。しかし二重行政による財政効果は、否定されました。
次に維新は、嘉悦大学の試算を取り上げて財政効果を主張しました。U字カーブによって、大都市は非効率化する。分割することで財政効果が生まれる! とする仮説です。
二重行政が否定されたので、別の理屈で財政効果がある! と主張する行為は一般的に屁理屈をこく、と申します。
大阪都構想になぜ反対するのか? 財政効果が屁理屈だから、が二つ目の理由です。
理由③政令指定都市を特別区に降格させるから
三つ目の理由は、政令指定都市を特別区に降格させるからです。
政令指定都市とは、都道府県と同様の権限を持った都市です。
特別区とは、行政学者に言わせれば「半人前の自治体」です。特別区の権限は、町村より下です。
大阪市という政令指定都市を廃止し、4つの特別区に再編するのが大阪都構想です。政令指定都市の高度な権限を、手放すことになります。
手放した権限と予算は、大阪府に移行されます。
これによって広域行政が一元化され、効率化するのだそうです。
ではなぜ他の政令指定都市を持つ都道府県は、都構想を目指さないのでしょうか? 理由は簡単で、政令指定都市の権限を捨て去るなんてバカバカしいからです。
なお大阪市に、財政問題はありません。大阪市の財政は、とても健全な状態です。一方で大阪府の財政は、起債許可団体にまで転落しています。
維新の会は全く、大阪府の財政を立て直せていません。
大阪都構想では、大阪市を廃止して大阪市の権限と「予算」が大阪府に移行されます。素直に見れば「財政が健全な大阪市の予算を、大阪府の財政穴埋めに使うため」と見えます。
でないと政令指定都市を解体し、廃止するという「バカバカしいこと」をする意味がないからです。
当たり前ですが権限、予算が少なくなるのに、住民サービスが向上するはずもありません。こういったことも、理由の一つでしょう。
大阪都構想2015はなぜ否決されたのか
大阪都構想2015は、2015年5月17日の住民投票で否決されました。なぜ否決されたのか? 二重行政解消による財政効果がなかったこと、維新の嘘がバレたこと、大阪都構想の中身が空っぽだったことなど、さまざまな理由があります。
しかしもっとも大きな要因は、大阪都構想反対運動が盛り上がったことでしょう。
維新以外の政党が一致して、大阪都構想への反対を貫きました。またその一致を、多くの市民が応援していました。世論の盛り上がりこそが、大阪都構想が否決された理由だと思います。
大阪都構想2020の可否はどうなるか?
大阪都構想2020の可否はどうなるか? 端的に申し上げれば、可決される見込みです。
大阪都構想「賛成」上回る 本社調査「投票行く」9割:日本経済新聞は、6月30日の記事です。この世論調査によると賛成49%、反対35%だそうです。
2020年11月に、大阪都構想の住民投票が予定されています。吉村知事に大きなスキャンダルでもない限り、大阪都構想はこのまま可決される可能性が高いでしょう。
大阪都構想反対運動も、いまいち盛り上がりを見せていません。音頭を取る団体や人物がいないからです。
10年後に大阪都構想を「なんでこんなものを可決したんだ?」と、冷静に評価することになるかもしれません。そのとき、現在とは逆に「大阪都構想 なぜ」の検索意図が「大阪都構想をなぜ可決したのか」「大阪都構想になぜ賛成したのか」になっているかもしれませんね。
まとめ
Twitterなどを見ていると、大阪都構想反対派のツイートが散見されます。筆者も大阪都構想に反対です。しかし大きなうねりとなることなく、散発的かつ惰性的に「ただ反対しているだけ」「反対姿勢を表明している」に過ぎないものが多い。
大阪都構想はおそらく、可決されるでしょう。可決されるもっとも大きな原因は、大阪都構想推進派と比較して、反対派の情熱が持続しなかったことにあるのかもしれない。
ふと自分自身も含めて、そう考えます。なぜ情熱が持続しなかったのか? 考えてみるのも一興です。