新型コロナウイルスによる、緊急事態宣言が出されるかどうかが注目を集めています。本稿では「緊急事態宣言とはなにか」「宣言されたらどうなるのか?」「ロックダウンや非常事態宣言との違いは?」などの疑問を解説します。
緊急事態宣言とは一体なにか?
緊急事態宣言とは3月中旬に改正された、新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく宣言です。緊急事態宣言を出せば、外出やイベントの自粛要請など様々なことに行政が要請、指示を出すことが可能になります。
厚生労働省の資料によれば、以下の9つの措置が可能になるとのことです。
- 外出自粛要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示
- 住民に対する予防接種の実施
- 医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)
- 緊急物資の運送の要請・指示
- 政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用
- 埋葬・火葬の特例
- 生活関連物資等の価格の安定
- 行政上の申請期限の延長等
- 政府関係金融機関等による融資
端的にまとめると、新型コロナウイルスのような感染症の拡大で脅かされる、国民の生命や経済への影響を最小限にするための措置を目的とした宣言です。
ポイントは要請や指示はできても、罰則がないということです。後述する緊急事態宣言への解釈について、重要なポイントになります。
また緊急事態宣言を出すに当たって、専門家による諮問委員会に諮り、国会への事前報告が求められます。
緊急事態宣言を出したらどうなる?異なる二つの見方
緊急事態宣言を政府が出すと、一体どのようになるのでしょうか? 今となにが変わるのでしょうか?
緊急事態宣言についての見方は、二つあります。一つは、現在とあまり変わらないのではないか? という見方。もう一つは、政府によって大きく様々なものが制限されて大変危険だという見方。
現在とあまり変わらないのではないか、という見方の根拠は以下です。
- すでに政府は学校の休校やイベント、外出の自粛要請を出している
- コロナ特措法で緊急事態宣言が出されても、現在の状況とさして変わらない
- なぜなら緊急事態宣言には、罰則がないからだ
参照 特措法改正で注目される「緊急事態宣言」とは(坂東太郎) – 個人 – Yahoo!ニュース
逆に緊急事態宣言を警戒する見方は、以下のような根拠に基づいています。
- 現在のところ緊急事態宣言をするエビデンス(根拠や証拠)に欠けている
- 緊急事態宣言の特徴は、曖昧で強力なこと。判断基準が曖昧なまま緊急事態宣言で私権を制限するのは危うい
- 緊急事態宣言には強制力がないイメージだが、実際には伴うはずだ
参照 緊急事態宣言がむしろ社会の崩壊を招く。宣言発動をしてはいけない5つの理由、新型コロナ特措法の光と影。(山田健太)
緊急事態宣言の強制力や権限に対して、その見方が二つあるわけです。新型コロナ特措法は3月中旬に改正されたばかりで、緊急事態宣言の強制力についてどれほどか? はコンセンサスがはっきりしていません。
しかし筆者は現時点では「緊急事態宣言が出されても、現状と大して変わらないのではないか」との見方を強めています。
ロックダウンと緊急事態宣言の違い
ロックダウンも最近、報道などで見かけるようになった言葉です。新型コロナに伴うロックダウンの使用用途は、もっぱら都市封鎖という意味です。中国は武漢を封鎖して、新型コロナを封じ込めようとしました。現在、世界中で都市封鎖が新型コロナの対策として、実行されています。
ロックダウンは対策や手段であり、緊急事態宣言は法的根拠を与えるものです。
日本でロックダウンは「要請や指示」はできても、罰則付きで実施することはできません。なぜなら緊急事態宣言にも、新型コロナ特措法にもそのような項目がないからです。
ただし行政の要請や指示に、従わなければいけない空気でロックダウンになってしまうことはあり得ます。
緊急事態宣言と非常事態宣言の違い
緊急事態宣言と、非常事態宣言の違いはなんでしょうか。違いを解説するためには、二つの段階が必要です。
- 日本国内における緊急事態宣言と、非常事態宣言は同じものという解説
- 日本の緊急事態宣言は、外国の非常事態宣言と全く異なるものという解説
日本国内で緊急事態宣言と非常事態宣言は同じもの
日本国内における緊急事態宣言と、非常事態宣言は同じものです。言葉が異なるだけです。
1954年の警察法改正で、非常事態から緊急事態に呼称を改正したのです。日本で非常事態宣言は、法的にできません。
緊急事態も非常事態も、英訳すればEmergency(エマージェンシー)です。なんとなく「外国の怖い非常事態宣言と違うんですよ~。やさしめの緊急事態宣言ですよ~」というイメージを、緊急事態宣言という呼称は含んでいる気がします。
敗戦を終戦、撤退を転進、占領軍を進駐軍と言い換えたことに、非常に似ているのは気のせいでしょうか。
海外の非常事態宣言と日本の緊急事態宣言の違い
外国の非常事態宣言は、国家の非常事態に対して政府が特別法を発動する宣言です。対象はテロや戦争、大規模災害、今回のような感染症の拡大などです。
非常事態宣言と特別法の実施は、自由権を著しく制限するケースが多いです。
日本では警察法、ないし新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を、総理大臣が発することが可能です。しかし今回の新型コロナ特措法の緊急事態宣言には罰則がなく、したがって法的拘束力が乏しいと思われます。海外の非常事態宣言とかなり異なります。
また日本の地方自治体が緊急(非常)事態宣言を出すことがありますが、法的拘束力が全くない注意喚起や要請にとどまります。
緊急事態宣言が発動される可能性は極めて高い
新型コロナの感染拡大で、1日100人以上が感染との報道が相次いでいます。海外が感染拡大するなかで、日本の感染者はあまり増えませんでした。一説によれば検査が海外に比べて少なく、数字としての感染者が増えてなかっただけとの見方もあります。
しかし日本も、これから感染が拡大する可能性が非常に高い。
現在のところ、安倍政権は緊急事態宣言は必要ないとの姿勢です。しかしこの先、おそらく数ヶ月後までには緊急事態宣言が発動される予測します。
今後の予測がつかず、予断が許されない状況です。現在のところはどうなるのか? 注視するしかありません。