報道では秋元司衆院議員が、カジノ法案(IR法案)関連で中国企業から賄賂をもらったとして、収賄罪容疑で逮捕されました。2016年に成立した統合型リゾート(IR)整備推進法案(カジノ法案)に対して、再度注目が集まりそうです。
この機会に、カジノ法案とはなにか? どのようなメリットやデメリットがあるのか? を、まとめておきたいと思います。
カジノ法案(IR法案)とはなにか
カジノ法案とは正式名称を「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」といいます。統合型リゾート整備推進法案、IR法案、カジノ法案と一般的に呼ばれます。
IR(Integrated Resort)とは統合型リゾートの略称です。
カジノ法案とは「カジノを中心とした、統合型リゾートの建設を推進する法案」です。
カジノ法案が目的は「外国人観光客を呼び込んで、地域経済の活性化により財政難を改善する」および「統合型リゾートを適切に、運営管理すること」です。
建前上はカジノの解禁ではなく、統合型リゾートの建設による経済活性化です。カジノはあくまで「統合型リゾートの一部」とされています。
また統合型リゾート(以下、IRと表記)の建設は、3つまでと制限されています。
カジノ法案(IR法案)の現状
カジノ法案は2016年に成立しました。現在のカジノ建設候補地……もとい統合型リゾート(IR)建設候補地は以下になります。
- 東京
- 神奈川
- 千葉
- 愛知(名古屋・常滑)
- 大阪
- 和歌山
- 長崎
沖縄はかつてIR誘致に積極的だったものの、玉城デニー知事になってから音沙汰なしです。2019年11月に沖縄と同じくIRに積極的だった北海道は、誘致を見送ると発表しました。
現在有力な候補地は大阪と、神奈川の横浜とされています。正式な決定は2022年になる予定です。
統合型リゾートの建設に向けて、外資企業も積極的に活動しているようです。アメリカ、マカオ、マレーシアなどが報道では有力な外資だそうです。
カジノ法案(IR法案)のメリット
カジノ法案のメリットは、非常に端的です。
- IR建設と運営による経済効果
- 建設地域における雇用の創出
- 観光産業の活性化
IRがどのような施設か? イメージが沸かない人も多いでしょう。
上記は横浜のIR構想です。横浜市のIR構想は「国際展示場」「ホテル」「カジノ」でリゾートを構成するようです。どう見てもカジノが中心ですね(笑)
ディズニーランドの遊園地がカジノになっていると想像すれば、大体あっているでしょう。カジノリゾート建設によって外国人観光客を呼び込み、地域経済を活性化し、雇用創出できるのが「カジノ法案とIR建設のメリット」と喧伝されています。
カジノ法案(IR法案)のデメリット
喧伝されているメリットを見れば、良いことずくめのようです。本当でしょうか? いくつかの問題点とデメリットがあります。
- 既存のアジアのカジノ(マカオ、韓国、シンガポール、フィリピン、カンボジア)のシェアを奪えるのか?
- 既存のカジノで問題になっている中国のマネーロンダリング対策は?
- 日本人入場者や地域住民の利用者が多くなるのでは?
- ギャンブル依存症を増加させる
- 本当に経済効果があるのか?
デメリット1 アジアのカジノからシェアを奪えるか?
アジアのカジノのVIP客のほとんどは、中国人です。よって呼び込む外国人観光客とは、おおよそ中国人を指します。
地理的に日本が優位ということはありません。中国人の旅行先で、タイと並んで日本はトップクラスです。しかしイコールでIRも人気が出るかどうか? はわかりません。というのも中国人観光客の日本旅行の動機は、ほぼ買い物です。
2018年のデータによれば、中国人観光客の消費金額の50%は買い物代でした。買い物に来た中国人が、カジノで遊ぶでしょうか?
デメリット2 既存のカジノで問題になっている中国のマネーロンダリング対策は?
アジアのカジノでは、マネーロンダリングが問題になっています。カジノ建設においてマネーロンダリング対策は、避けて通れません。
しかし日本のマネーロンダリング対策は甘いといわれており、マネーロンダリングが日本に集中する可能性があります。
またマネーロンダリングが横行すれば、IR建設地において治安が悪化する可能性もあります。
日本人入場者や地域住民の利用者が多くなるのでは?
誘致している地方自治体によれば、カジノ利用客の8割以上は日本人客になる予定です。そのためカジノ法案では、日本人客の入場規制を設定しています。週に3回まで、28日間で10回までというものです。
ギャンブル依存症を増加させる
日本人客が8割以上ですので、ギャンブル依存症を増加させるのでは? と危惧されています。指摘を受けてカジノ法案では入場規制を設けましたが「週に3回も通えば、立派なギャンブル依存症だ!」という指摘もあります。ごもっとも。
IRには本当に経済効果があるのか?
IRが建設される段階では、経済効果は疑いようがありません。しかし運営段階に入って、本当に経済効果はあるのか? と疑問視する声もあります。
カジノ経済効果が6兆円? 見せかけの試算に物申す 年間1兆円が国外流出し、国同士の「賭け」に日本は大負け(1/6) | JBpress(Japan Business Press)
上記の記事が、非常に詳しいです。
- Aさんは20万円の給料があります
- 10万円が生活費で、残り10万円でスナックに通っていました
- カジノができて生活費10万円、カジノで10万円を使うようになりました
上記のケースでは経済効果はゼロです。そして「カジノとスナックの、消費の奪い合い」という構図もあります。このケースを想定すれば「カジノ建設で年間2兆円の経済効果」という試算は怪しいのではないか? との指摘です。
インバウンド(外国人観光客)での消費が4兆円です。カジノを建設するだけで、本当に2兆円もの経済効果が毎年発生するのか? 非常に怪しいのではないでしょうか。
2019年秋元司衆院議員のカジノ関連収賄容疑
秋元議員に逮捕状 IRめぐり収賄容疑―中国企業から現金・東京地検:時事ドットコムという報道が2019年のクリスマスに流れました。
IR施設の運営は、外資が参入する予定です。なぜならカジノの運営ノウハウは、日本企業には存在しないからです。よって現在、様々な外資企業がカジノ参入に向けて活動しています。
当然その中には、中国企業も存在します。
秋元司衆院議員(自民党)はカジノ法案に積極的で、副大臣まで務めました。その国会議員の収賄容疑は、かなりの衝撃を与えるニュースです。
「右の売国 左の亡国」とはよく言ったものです。
インバウンドやカジノ法案の愚かさ
筆者は外国人観光客に来てほしくない! とは思っていません。また賭け事は大好きです。麻雀、パチンコ、スロットetc……。
ですのでカジノが建設されたら、おそらく遊びに行くと思います。
しかしインバウンドやカジノを、国策として推し進めるのは「愚か」としか言いようがありません。
- プライマリーバランス絶対主義で緊縮財政
- よって政府支出による経済活性化ができない
- 貿易ないし、外国人が日本にお金を落とす、ウルトラCな政策しか選択できない
- したがってインバウンドやカジノという発想になる
上記の結果は、外国への経済依存度の増加です。緊縮財政さえやめれば、カジノ法案もインバウンドも必要ありません。
出だし(プライマリーバランスの厳守)が間違っているから、結論も間違える典型例です。