佐藤健志さん「平和主義は貧困への道」の「爽快」とはどんな意味?

 平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路は、佐藤健志さんの著作です。端的にいえば、日本の戦後の矛盾をあぶり出す、必読の書となっています。
 レビューは平和主義は貧困への道、または対米従属の爽快な末路(著:佐藤健志)レビューと感想 から。

 私もときどき、本書に影響されて「爽快」という言葉を使用します。
 先日、下記のようなコメントを頂きました。

(前略)
ところで近頃の記事で

>きっとこの慣れは、最後には爽快になることでしょう。
>これらの現実を見据えない日本は、もっと爽快になることでしょう。

などと”爽快”なる言葉がよく出てきますが、あえて反語的な使い方をしているのは、もう諦めしかないということでしょうか?爽快の対義語は”憂鬱”ですが、自分から言わせれば、事態はそんな生易しいレベルではなく、それこそ、”悲嘆と絶望の淵に沈む”としか形容のしようがありません。

 返信はしたのですが、佐藤健志さんのいう「爽快」の意味を、解説してみたいと思います。

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日本の政治の現実は憂鬱。ならば現実逃避はどうなるか?

 最初に結論をいきましょう。

 上記のコメントでも指摘されていますが、日本の政治やエリートの知的劣化、経済の状況は「まさに憂鬱」です。
 現実を受け止めれば、受け止めるほどに「なんだこりゃ……」という憂鬱さ。

 現実を直視すれば、憂鬱以外の何ものでもありません。まったくコメントに大賛成です。

 さて、憂鬱の対義語は爽快です。
 とすると、現実を否認して現実逃避することは? 爽快に違いないのです。

感覚的には、平和主義は貧困への道の「爽快」はどんな感じか

 仕事をサボることは、あまり褒められたことではありません。
 しかし、仕事から逃げ出したいこともあるはず。特にきついときは。
※私は、しょっちゅうあります。

 仕事がきついと、ストレスが貯まります。さて質問。
 無断欠勤したときの、あの開放感。爽快じゃありませんか?

 無断欠勤は、なんの解決にもなりません。単なる現実逃避でしょう。だからこそ、無断欠勤したときは「爽快」なのです。

 当然ながら現実逃避は、現実逃避。どれだけ爽快であろうと、その後に現実が追いかけてきます。
 仕事でいえば、次の日に上司に怒られるとかですね。

 では「次の日に怒られる」という現実から、逃避したとしたらどうなるでしょう。
 スマホの電源を切り、ひたすらに無視。ま、クビになりますね。

 ところが! ……現実が憂鬱な場合、クビになったというのは「もう怒られなくて済む」ので、またもや「爽快」になるわけです。
 こんなことを続けたら、最終的には野垂れ死ぬか、借金漬けか。良くてニートや、ヒモでしょう。

 こういう「現実逃避の成れの果て」のヒモが、何を女性にいうか知ってますか?
「おれは、やれば出来るんだ」

 こういうのを、爽快な(現実逃避の末の)結末と申します。

日本の戦後は、本当に爽快すぎて困ってしまう

 日本の戦後に話を移しましょう。戦後レジームというやつです。

 通常は敗戦という現実を受け止めれば、「次こそは勝つ!」と模索するものです。属国になれば、「いつか独立してやる!」となるでしょう。

 ところが日本は、そうはなりませんでした。マッカーサーに子種がほしいと手紙を贈り、新聞などはマッカーサーを褒めそやしたそうです。
 何をどう考えても、300万人も戦死した戦争の、しかも占領軍の大将に……反発こそすれ、お追従をいうのは意味がわかりません。

 占領軍は「進駐軍」、敗戦は「終戦」と言い換えて「現実逃避」が始まったのでした。ついでに敗戦した日を、終戦記念日にまでしたのです。
※厳密には、1951年のサンフランシスコ講和条約が終戦。講和を結ぶまで、通常は戦争継続中とみなされます。

ラッキーが転がり込んだ高度成長期と東西冷戦

 敗戦したのを現実逃避してますと、ラッキーがー転がり込んできました。東西冷戦です。

 ”たまたま”位置的に日本が、東西冷戦の最前線でした。よってアメリカは日本に対して、寛容な外交(というか統治)を実行したのです。
 なにせ、東西冷戦前のアメリカの方針は「貧国弱兵」で「二度と日本を、歯向かわせない」だったのです。

 日本の高度成長期は「富国弱兵」へと、”ラッキー”で転がりました。高度成長期の要因だって、東西冷戦の一要素である、朝鮮戦争特需がきっかけです。

 本来は現実を見据えれば「富国弱兵路線は、単なるラッキーの産物」をみなさなければなりませんでした。それが現実だからです。
 しかし困ったことに、日本は敗戦から現実逃避中。

 ラッキーを「自分の実力」と勘違いしたのでした。泡沫の夢、というやつです。

1991年のバブル崩壊で、富国弱兵路線が消滅

 1991年、日本のバブル崩壊です。ジャパン・アズ・ナンバーワン! とまでいわれた日本経済は、一瞬にして自信喪失に陥ったのです。
 奇しくも1991年は、ソビエト崩壊。東西冷戦の完全終結です。

 これは偶然か? 必然か? 偶然と思うほうが、どうにかしてます。

 当然、アメリカの「寛容な外交」もこの頃からなくなります。

 ラッキーに浮かれていたら、はしごを外されたというわけ。本来は「富国と弱兵が成り立つ」なんて「ありえない」のです。
 「富国といえば、強兵が必須」であり「弱兵といえば、本来は貧国」なのです。

さらに爽快になった、失われた20年

 1991年にバブル崩壊。しかし1996年までは、なんとか戦前世代が踏ん張ります。が……1997年には消費税増税。
 2000年代初頭には、完全に新自由主義にかじを切ったのでした。

 そこには戦略も、目標も存在しません。もてはやされていた、日本式経営をあっさりと投げ出し、グローバルスタンダードとやらを採用したのです。
 理由は簡単。

 もともと現実逃避=爽快だったわけで、現実を直視して自信を深めてきたわけではなかったからではないか。

 そしてこの「現実逃避=爽快」の図式の根底には、平和”主義”というお花畑が広がっている、というのが平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路の指摘するところでもあります。

 日本はますます「爽快」になろうとしています。
 いい加減に現実逃避をやめ、「憂鬱な現実」に向き合わねばなりません。

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Muse
5 年 前

現実逃避の末が”爽快”だとは断じて思えませんが、それはともかく、

>マッカーサーに子種がほしいと手紙を贈り、新聞などはマッカーサーを褒めそやしたそうです。

といったエピソードを含む、想像を絶するような進駐軍というよりマッカーサー礼賛の様子が描写されているのが、佐藤健志さんの「僕たちは戦後史を知らない」ですね。

それにしても、この思考停止と現実逃避は、戦後日本(GHQによる占領期、高度成長期、そして失われた20年)の国民に一貫した心理的傾向ですが、果たしてこれは日本人の国民性そのものなのか?もし、そうだとしたら、いわば宿命のようなものであって、そうやすやすとは変えることはできないですね。残念ながら。

それから、この(思考停止と現実逃避という)国民性はいつどのようにして形成されたのか?例えば、明治維新以降の近代化の過程においてか?あるいは260年以上続いた太平の徳川時代か?さらに、それ以前の戦国時代か、もっと前なのか?

さっぱりわかりませんが、気になるところですね。

阿吽
5 年 前

一般的に保守と言われてる側は・・、自分(日本)がジャイアン(アメリカ)に媚びへつらってるスネオ状態だという認識を持てませんし・・、(しかも最近は、「友達料を値上げしないと友達やめちゃおっかなあ~(笑)」・・なんていうのを実質言われてる状態でもある)(もしくは・・、「〝身辺警護(笑)〟をしてほしけりゃあ、『みかじめ料』をもっと寄越しな(ニヤニヤ)」・・みたいなことまで実質言われてるようななさけない状態でもある)

さらには一般的にリベラルと呼ばれてる側は・・、もはや領土欲を隠そうともしない人権・言論弾圧の独裁国家(中国)と話し合いさえ重ねれば、仲良しのお友達になれるという頭ウルトラハッピー状態から抜け出そうともしません。

保守側も、リベラル側も、相手の問題点はよく理解してるんですけど、自分の問題点はとんと理解できないんですよね。

,
それでも、米日韓の3か国による東アジアの防衛体制(東アジアにおける戦後レジーム)が成立していたころには、まだそれでも均衡が保たれていましたが・・、昨今の情勢を鑑みますに、アメリカはもう東アジアに対する関心が以前よりうすれています。

その結果、東アジアの米日韓による軍事バランス(つまりは戦後レジーム)が我々が望む望まないにかかわらずとも壊れていこうとしていて・・、その中で結果として、我が国が生き残っていくための方策としては、もはや富国強兵というものが、もはや喫緊の課題とも言えるものなのですが・・、なんと我らが安倍ちゃん総理大臣がやっていることと言えば、富国どころか我が国の『貧国化政策』ですからねえ・・・・。

一兵卒
5 年 前

とにかく、我々がやるべきは国際政治に対峙することに尽きることです。その基本は安全保障を万全に構築するべきです。ならば、与党の存在は全く必要ありませんから、決別するべきになる訳です。なので、もういい加減経済ボケ即ち平和ボケからの脱却をなし得なければなりません。ところで皆さん国力とは経済ありきと思われますが、実ところは国民の歴史でありそれによる気概と情熱になります。