戦後レジームの正体とは?ネトウヨに不都合な日米安保の現実

 安倍政権になってから、幾度「戦後レジームからの脱却」という空疎なスローガンを聞いたことでしょう。
 なぜ空疎か? 戦後レジームという言葉の定義すら、満足にできずに「脱却」などできるわけがありません。
 戦後レジームの定義、ご存知ですか? 知らない人がほとんどであろうと思います。

 本日は戦後レジームを解説し、その根源にまで迫ります。

 その過程で、恐るべきアメリカの対日戦略も明らかになります。そして日本人にとって、非常に不都合な現実を突きつけることとなるでしょう。
 その現実を咀嚼するか、吐き出すか? はあなた次第です。

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戦後レジームの定義とはなにか?

 日本では戦後レジームという言葉が、「なんとなく」使われてきました。「戦後レジームからの脱却!」というと、あたかも自分が愛国保守っぽく思えます。
 当時は、ネトウヨからもよく聞かれたスローガンです。

 レジーム(Regime)とは、日本語で「体制」という意味です。戦後レジーム=戦後体制です。

 戦争とは、1国ではできません。内乱は別ですが。
 戦後とは当然、第二次世界大戦後という意味です。

 第二次世界大戦後の「体制」とはなにか? 「戦勝国による、世界秩序」です。戦勝国の最たるところはどこか? アメリカです。
 言葉の定義的には、戦後レジームからの脱却とは「アメリカ(やその他戦勝国)の築いた、世界秩序からの脱却」を意味します。

  1. 日米安保からの脱却
  2. 軍隊を持っていない、という体裁からの脱却
  3. 独立して主権を回復し、属国からの脱却

 具体的には、上記のような政策が「戦後レジームからの脱却」です。
 ちなみに――2.は「憲法改正」だから「安倍政権は戦後レジームからの脱却を目指していた」などという与太話は、おかしいです。

 安倍総理が示したのは「自衛隊を9条3項に明記する」のであって、それが「軍隊となる」わけではないのですから、1ミリたりとも「脱却の方向性」ではありません。

 また安倍政権はしきりに「日米同盟の深化」といいつつ、アメリカのご機嫌伺いをしてきました。むしろ対米従属の強化をしてきた、といえます。
 戦後レジームの強化を、安倍政権はしてきたのです。

伊藤貫が指摘する米中密約や二重の封じ込め理論

伊藤貫画像

 表現者クライテリオンの執筆陣に、伊藤貫さんという方がいます。国際情勢や国際政治では、秀逸な分析をされる人です。

 伊藤貫さんは表現者クライテリオン5月号で、「囚人国家の『護憲ごっこ』『親米ごっこ』『国粋ごっこ』」という、非常に刺激的な記事を書いてます。
 この記事の、いくつかの要旨を抜粋してみます。

  1. 1941年当時、すでにアメリカは「戦後の日本を骨抜きにする」と決めていた
  2. ダブル・コンテインメント(二重封じ込め政策)
  3. 1972年から現在まで、米中では「日本の核保持阻止」「自主防衛能力を持たせない」という密約が存在する
  4. イギリスの駐日大使は日米を「昔のイギリスの、エジプト統治と同じやり方」と評した
  5. ハンティントンの「アメリカの凋落予言」は当たるだろう
  6. 「このままでは日本も、亡国だ」という「現実の議論すら始められない」三流国民が日本国民

 かなり過激に思える記事ですが、大枠で私も全く同感です。

 すべて解説するには文字が足りませんので、重要部分のみ解説します。

ダブル・コンテインメント(二重封じ込め政策)とは

 端的に表現すれば「日本を属国化して防衛能力を失わせる(1つの封じ込め)。その日本に駐留して、中国やロシアを封じ込める(2つの封じ込め)」という政策です。

 アメリカが日本に武器を売ります。一般的には「アメリカの金儲け」と思われています。しかし自衛隊はもはや、アメリカがいないと「軍として不完全」なほど統合されています。
 ダブル・コンテインメントの一環(防衛能力を失わせる)と見てよいでしょう。

 日米安保でよく「日本は盾、アメリカは矛」といわれます。この比喩は現実逃避で、実際は「日本は盾しか持っていない。アメリカは盾も矛も持っている」です。
 これは「アメリカがいないと、防衛すらできない」ことを意味します。

1972年の米中密約

 米中密約はキッシンジャー、ニクソン、周恩来の3人が結んだ密約で、現在も有効だといわれています。
 この密約は中国側、アメリカ側ともに記録と資料が残っています。

 内容は「日本の核武装阻止。米軍の駐留によって、日本に自主防衛能力を持たせない」です。

 1990年の沖縄駐留・米海兵隊総司令官のヘンリー・スタックポール少将は「日米同盟は、日本を封じ込めておくための、ビンの蓋だ」という発言をしています。
 奇しくも安倍総理のいっていた「日米同盟の深化」とは「日本封じ込めに、日本自身が協力すること」だったのです!

伊藤貫が指摘したこと以外にも、まだまだある不都合な現実

 日米地位協定6条によりますと、在日米軍基地の建設に日本の許可は「必要ない」ことになっています。
 その証左に、北方領土問題でロシアの外相から「北方領土を返還したとして、そこに米軍基地ができる可能性はあるか?」と聞かれ、外務大臣は「それは保証できない」と答えたそうです。

横田空域

 また横田空域という問題もあります。端的にいえば、横田基地周辺の空は「日本側が、アメリカ軍に許可を取らないと通れない」のです。
 日本は「他国に、自国の首都の領空権を取られている」のです。

属国であることを喜ぶ自称保守とネトウヨたち

 様々な「不都合な現実」を見てきました。不都合な現実のしめすところは1つです。日本はアメリカの属国である、ということです。

 米中密約では、日本に再び自主防衛能力を与えないとされ、日米安保で「ビンの蓋」のように日本を封じ込めたのです。
 また、アメリカが要求すれば、合理的な理由がない限り日本は、在日米軍基地建設を断れません。

 「日本が、在日米軍基地建設を許可するかどうか?」という権限すらないのが、現状なのです。
 常識的に考えれば、国家として屈辱的な現状です。

 ……なんで日本の自称保守やネトウヨは「日米安保は重要! 深化! アメリカは友人!」などと戯言をいえるのか? 私には理解できません。が、いくつか考えられる理由はあります。

  1. 敗戦のショックで、自尊心も独立心も失った
  2. 不都合な現実はスルーする、認知不協和
  3. 「じつは得していたのだ!」とする、現実逃避

 簡単にいえば、パシらされてるのに「えへへ、僕たち友人ですよね」と卑屈になっているような感じです。
 もしくはやはり、平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路(著:佐藤健志さん)の「日本はアメリカの現地妻」でしょうか。

 その証拠に、自称保守からもネトウヨからも「日米安保破棄! 自主独立!」という声は、聞こえてきません。
 対米依存、対米従属こそが「戦後レジーム」の最たるものです。

 ネトウヨからは「アメリカは日本に雇われた用心棒論」もたまに聞きます。まさに負け惜しみです。
 カツアゲをされて「あ、あれは恵んでやったんだ!」みたいな話です。

戦後レジームからの脱却は、現実の直視からしか始められない

 当記事を見たネトウヨは、きっと拒否反応を起こすでしょう。対米従属という結論に向けて、理屈を考えようとするはずです。
 佐藤健志さんのいうところの「爽快」になってしまうはずです。

 日本が属国ではなく独立国家になるために、まず何が必要でしょう? 憲法改正? 日米安保の破棄?
 私は「現実を直視すること」だと思います。

 独立不羈(どくりつふき)の精神も必要でしょう。しかしそれは「現実を直視してから」の話です。

 日本は大きな認知不協和の中にいます。緊縮財政・全体主義やグローバリズム・新自由主義。属国であることを直視できないetc……。
 現実を直視せず、逃避することは「子供」のすることです。

 かつてマッカーサーは日本人を「12歳の子供」と評したようですが、あながち間違っていません。
 戦後70年以上を経ながら、いまだに「現実を直視できない」のですから。

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3 Comments
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阿吽
5 年 前

>1941年当時、すでにアメリカは「戦後の日本を骨抜きにする」と決めていた
>ダブル・コンテインメント(二重封じ込め政策)
>1972年から現在まで、米中では「日本の核保持阻止」「自主防衛能力を持たせない」という密約が存在する

とりあえずは、上記のようなものが戦後レジームかと思いますが・・、

上記のような戦後レジームは崩れ始めたと思います。

・・ほんとうに極端に言えば、自然現象のような感じで・・。

上記の戦後レジームは、オバマ時代まではかろうじて維持しようという動きが強かったかと思います。日本というよりも、アメリカの方に・・。

その最たる例が、日韓慰安婦合意です。

これはアメリカが戦後レジームを守ろうとした結果でもあります。(同時に、安倍総理がこのアメリカの動きを見て、結果としては戦後レジームを『守ろう』とした動きでもあります)

具体的に言えば・・、日本に駐在するアメリカ空軍・海軍、韓国に駐在するアメリカ陸軍、そして日韓現地部隊の3つによる、朝鮮戦争終結後から今日に続く、アメリカによる東アジアの軍事体制・防衛体制・・、つまりは東アジアの戦後レジームです。

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しかし、トランプ時代になり、その流れが変わりました。

その結果が、日本による韓国へのホワイト国の除外措置です。

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この措置、おそらく、オバマ時代までのアメリカなら、日本に対し実行の許可をアメリカはしなかったと思います。おそらくまあ、ほぼ絶対。

なぜこのようなことをアメリカが許可(おそらくは水面下での黙認)したかと言いますと・・、推測しますに、アメリカの東アジアでの防衛体制の変更という思惑が、それが形になって如実にはっきりと、それがアメリカ自身に暗に表れ始めてしまった結果だからではないかと思います。

アメリカの東アジアでの防衛体制の縮小です。

(アメリカが、今すぐMMTを政策に採用した場合、この防衛体制縮小の動きに今後もなるかは予想はできませんが、あくまで現在の、MMT採用前のアメリカ政府の動きということになります)

アメリカの思惑は、おそらく、日本や台湾に、多くの武器を売却し冨を得、さらには現地(東アジア)の防衛体制のアメリカの比重を小さくし、アメリカの軍事的支出の抑制をする・・さらには、その縮小した部分を日本に売りつけた武器とともに日本に押し付けさせることです。

ようはアメリカの都合による、アメリカの東アジアでの防衛体制の更新、刷新措置です。(すべてはアメリカの都合です)

日韓慰安婦合意までして戦後レジームの維持につとめた安倍総理としては皮肉な結果ですが、結果として、アメリカの財布(予算縮小)の都合で現地妻(日本)はアメリカから疎遠にされるのです。

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極端な言い方をすれば、アメリカから半分捨てられるようなものです。(全捨てはないとは個人的には思いますが・・、太平洋を中国に確実に取らせないためには日本の港を抑えておくのが有利だと、個人的には思いますのです・・)

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ただし・・、半捨てでも、アメリカの影響力が弱まることは自明です。

ここで日本は富国強兵ができなければ、個人的には我が国は、将来的にはアメリカと中国のダブル属国になる可能性が、これは将来的には、高いのではないかと思います。

Mori Soba
4 年 前

残念ながら日本がアメリカのいいなりなのは事実です。 日本は4分野でアメリカに依存しています。 ①軍事・防衛 ②食料 ③天然資源・石油 ④金融  これは、日本が戦争に負けた報い」であり「日本はアメリカの属国」と揶揄されるゆえんです。
金融に関しては、日本は米英の国際金融資本に間接支配されており、例えば日本銀行は、BIS(国際決済銀行)の支配下にあると言っても過言ではありませんし、大蔵省が日本政府よりもウォール街やシティを向いて金融政策を行っているのはよく知られていることです。
経済に関しても、80年代以降に日本の半導体産業が潰され、日米経済摩擦で日本の工場が海外移転し、バブル崩壊とデフレ不況で国内産業が空洞化したのも、一部はアメリカの戦略の影響によるものです。
日本外交がアメリカ追随なのも、アメリカの報復を受けないためと考えられます。 日本はアメリカにとっての金づるであるとともに、絶対に敵に回してはいけない国なのです。 だからこそ、憲法第9条と日米同盟・日米安保条約で日本を縛り付けている。 日本が戦争に巻き込まれた場合に、自衛隊が自由に軍事作戦を遂行できるなど有り得ないです。

日本が独立国としてやらなければならないのは、憲法第9条の改正だけではありません。 食料、天然資源・石油の海外依存を下げなければなりませんし、金融面の自立化(日銀の国有化)もあります。